メ シ つ き 文 化 遺 産 | ||
青森県の渋~い大衆食堂 | ||
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南部屋食堂
八戸の中心街は駅から遠く、バス移動が中心になる。 いちばん賑やかな十三日町の交差点から一つ南の交差点近くに、そこだけ津軽海峡冬景色みたいな状態の食堂がある。 建物、暖簾、日よけテント……すべてがくすみ、色あせ、青ざめて、疲れ切ったような表情を見せている。 (左)少し勇気がいる (右)玄関左のスキマが厨房 ガラガラっと戸を開けて入ると、やや薄暗い部屋にテーブル三つだけ。予想通り店内はかなり古びていて、整理整頓とも言い難いが、不潔感はない。 おとなしくて線の細そうなおばちゃんが一人でやっている。 先客は意外にも40~50歳くらいの女性一人、オムライスを食っている。 (左)メニューは少ない (右)テーブルは清潔 定食400円、ヤッスー。とりあえずそれを注文した。 安いわりに、作るのにけっこう時間がかかっている。15分はゆうに待ったころ、皿が順次運ばれてきた。 メイン皿は、春巻きとイカリング揚げ、カボチャやトマトが一切れずつ。小鉢は二つ、小松菜とろろがけと、スナズリと小芋の味噌あえみたいなん。味噌汁はシジミ汁。 おかずの量はそれぞれ控えめだが、400円でこの品数は十分だ。小鉢も手の込んだものが丁寧に作られている。味もこの値段としては十分うまい。 さらに支那そば400円も注文。わざわざ支那そばと名乗るくらいだから中華そばとは違うとのことだろうか。魚介系スープのあっさりしょうゆ味で、麺は強く縮れている。これもなかなかよい。 (左)定食400円 (右)支那そば400円 帰るとき、「安いのに丁寧に作ってもろて、うまかったです」と言うと、おかみさんは線の細い声でゆっくりとこうおっしゃった。 「いえ……じょうずによう作られないんです……けど、体にいいものをと思って作らせていただいてます……」 なんちゅー謙虚なお方なのだ。こんなセリフ、関西の食堂のおばちゃんからは聞いたことないぞ! 雪深く厳しい冬を長年耐え抜いていると、こんなふうに奥ゆかしくなるのだろうか。ありがたや、もったいなや……。(2016年8月) |
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三ツ星食堂
夜も更けてから八戸に着いた。八戸はけっこう飲食店文化が栄えてて、夜だけやってる大衆食堂もあるらしいので行ってみよ。 繁華街の南東外れあたりの交差点近くにデジタル文字看板、あれやな。 古くて小さなビル? 暖簾をくぐるとコの字のカウンターのみ10数席。厨房が広々しており、永六輔みたいな大柄で白髪のおやじさんが一人でやってる。先客一人が何か麺類を食っている。 何時までですかって聞いたら、3時か4時か、やと。4時か5時って言ってたかな。でも3時に終わってそれからどうすんねん。 (左)カウンターから厨房方面 (右)この裏は麺類500~600円台。夜なのに安い! テーブルメニュー以外に、その日の一品ものもある。 ビールとともに、モツ鍋定食750円のご飯なしを注文。それと一品のシマホッケ。 (左)ホルモン鍋定食のご飯なし (右)シマホッケ、北海道からこればっか やがて、ぐつぐつ言いながらモツ鍋が来たぞ。うまーーい。ホルモンたっぷり。これは値打ちある。 キュウリとウリの間のような浅漬けが添えられている。これがたぶん名産の糠塚キュウリだな。 飲み食いしてるうちに食欲が増進してくるパターンで、最後にラーメン500円。あっさり魚介出汁系。海苔がエエやん。 ラーメン500円 おやじさんは黙々と料理を作っているのだが、ちょうど24時間テレビの感動ドラマをやってて、作りながらも時折じっと見ている。 注文が切れて暇になると、おやじさんは客に背を向けて本腰を入れて見始めた。 こんな八戸の地でおやじとドラマを見て感動を分かち合うとは、旅ってオモシロイネ。 そして深夜でも定食だのカツ丼だのが必要とされているんだな。(2016年8月) |
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宝来食堂 ★
八戸の宿でこのyoutubeレポートを見てしまった。行かぬわけにはいかぬわな~。 八戸中心街バスターミナルから徒歩5分ほど。本八戸駅からだと1.5km。 雨のそぼ降る中、12:40ごろたどり着いた。表のメニュー表の値段にまず驚愕だ。中華そば200円、カレーライス300円、親子丼350円……平成もクソもありゃしない。 (左)めっちゃ地味 (右)指名手配にあらず 値段の文字が薄いけど、この通り 中に入るとテーブル4つとカウンターに1~2人の狭い店。地元の常連客でどのテーブルも埋まってる。 食べ終わってるっぽいのに帰らない人もいる。みな知り合いだが、よそ者にもフレンドリーだ。 狭いけど活気がある 「うちは相席が基本だから」と客席に座っているおばちゃんの一人に言われて、おっちゃんと相席したが、このおばちゃんが店主かな? 客席で何か食ってるけど、エプロンしてるから、たぶんそうではないか。 厨房には少し若めの女性、この人は手伝いの女性のようだ。 カウンター上に大皿おかずが並んでおり、「定食」を注文するとそこから取ったものが運ばれてくる。 まず飯と味噌汁(大根葉と豆腐の赤だし)、そして天ぷら(イカとかき揚げ)、菜っ葉のおひたし……おぅおぅ、どれもオカーチャンの手の迫力を感じる郷愁系おかず、次に何が出てくるのか楽しみになってくる。 メインは巨大大根の輪切りとイカの炊いたんだった。イカの中に何か入っていると思ったらゲソだった。 さらに追い打ちをかけるように、相席の常連おやじが「漬物は勝手に取っていい」と言って、取ってくれた漬物キューリがデカイ! これだけで飯が食える。 これで350円。まじかいな…。 (左)定食350円 (右)漬物は食べ放題 メインの大根は、「夏の大根で今年は日照りが続いたから固くて味に癖がある」とおばちゃんが言う。イカの出汁がしみ込んで紫色になっている。 味噌汁の大根葉が泣かっしょるわい。 これはもう名物の中華そばも食わなアカンやろ。 200円というありえない値段だが、ミニサイズということもなく十分な大きさ。出汁はにぼし、昆布、鶏ガラでとっているそうだ。 中華そば200円 ふと見ると常連客は食べ終わった食器を流しに運んでいる。 あとからあとから客が来て、椅子も全部埋まったが……何かみんな、勝手なもの食べてるな。小さい茶碗にご飯よそったりとか。小さい茶碗なんてどこにあったんやろ。マイ茶碗かな。 家みたいな店だ。 帰りはおかみさんが表まで見送りに出てくれた。 ただものではない テレビに何度も出ている地元の有名店のようだが、変にスレた様子もまったくなく、常連客らに愛される名店と言わねばなるまいて。(2016年8月) |
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