・・・★  森樹 絹  ★・・・

第1回 包茎まみれの日々

 性の電話相談員を始めて5年。
 相談者の8割は男性ということもあり、くる日もくる日も「包茎」の説明に明け暮れている。今では寝てるときに包茎手術のことを聞かれても、すらすら答えられるのが自慢だ(がこんなこと誰も羨ましがってはくれない)。

 いちおう、思春期対象の看板を上げているが、10代から60代まで幅広い年齢層からかかってくる。年を聞いたところで本当かどうか確かめる術もないし、最近は年を聞く必要性すら感じなくなったりして。
 というのも男性の相談内容は15歳でも35歳でも「包茎、ペニスのサイズ、マスターベーション、どうやれば女をいかせられるか」なんだから。

 さて、今日のトップバッターは「思春期じゃないんですけど、いいですか」と、すごく緊張した声で話し出した20歳代の男性。
 電話の向こうから荒い鼻息が聞こえてくることはよくあるが、彼のように心臓の音まで聞こえてきそうな感じで「他に相談できる人がいないんです」などとすがられたら、思春期以外ダメなんて言えない。

「じ、実は包茎なんです。子どものものみたいで恥ずかしくて。手術したほうがいいですかね」

 私、答えていわく、
 (1)勃起時や自分で剥いたときに亀頭が出たら問題ない。
 (2)包皮に覆われているので垢がたまって不潔にならないよう、剥いて洗うことを心掛ける。
 (3)日本人男性は包茎の人が多く、その人たちの大半は手術しなくても大丈夫。
 (4)でも、どうしても手術したければ、美容外科より泌尿器科の専門医に相談するのがよろし。


「女性は包茎が嫌い」伝説


 しかし、彼の不安は晴れない。
「でもね、包茎だと彼女ができないでしょ」
 は? なんで包茎だと彼女ができないの?
「だって女性は包茎が嫌いだから」

 彼は20数年間、恋人がいないそうだ。
 包茎だから女性に好きになってもらえるはずがない、というのがその理由らしい。
 おいおい、恋人ができない責任を包茎ペニスにおっかぶせるつもり?

 だいたい、男性が「ぜったい、巨乳!」とのたまってるのはよく耳にするけど、「包茎の人は、パス」なんて言う女性を私は知らない。
 にも関わらず相談者たちは、女性が彼氏を選ぶときペニスで決めると思い込んでいて、それはもう被害妄想的なほど。
 「女が包茎を嫌うから悪いんだ!」なんて、女性を悪者に仕立て上げている。

 やれやれ。
 こんなとき私は、飲み屋で隣り合わせたお姉ちゃん状態で説教しそうになる。
 「ちんちんの格好で女が男を選ぶなんて、女に対して失礼や。そんなやつがモテてたまるか!」

『いのちジャーナルessence』No.3(2000年4-5月号)より
「性のヨロコビ・カナシミ」目次「Webいのジャ」トップホーム