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春は瀬戸内の海が最高よね〜。だら〜っと小豆島にでも行こうかな。 そう思って何気なくネットで調べてたら、なんか目が釘付けになるような山が出てきたぞ。ジャングルに覆われた裾野からズドンと突き抜けた岩塔がカッケー! 緑のセーフティネットをせせら笑う、この山の危険で確信的な意志を感じる。カッケすぎる! 名前は千畳ヶ岳だとう・・・こんなん全然知らんかった。国土地理院の地図にも載ってないし。でもどうやら素手で登れそうな感じだぞ。 さっそくダッシュで姫路港から小豆島・福田行きのフェリーに飛び乗った。 赤丸がその山のあたり 姫路港から海を渡って2時間弱で福田到着。小さな集落だ。上の地図でいうと島の北東、赤丸のすぐ右下のお船マークのところ。 で目指す山は赤丸のところだから福田からすぐね。港近くのバス停から北回り土庄港行きバスに乗り、5分の「吉田」で下車した。 吉田はこっぽりとした湾の奥にある。湾に小さな川が流れ込んで小平野を形成し、そこに小さな吉田集落がある。 川の上流には巨大なダムがあり、その右手にいかつい山々がさっそくお出迎えだ。 (左)吉田バス停からの眺め。左端にダムサイトが見える (右)吉田庵 川に沿って歩いていくと、数分でお遍路の霊場「吉田庵」に着く。ここまで来ると背後に居並ぶ山々がバッチリだ。 川の対岸に荒魂神社があり、ここからの眺めもなかなか絵になる。この峩々たる山々を見ると、まさしく荒魂やなぁと納得だ。 千畳ヶ岳とダムの間には岩だらけの山塊があり、ここは「吉田の岩場」としてロッククライマーたちには有名なところらしい。 (左)荒魂神社から。左が千畳ヶ岳、右は吉田富士 (右)左は「吉田の岩場」、右が千畳ヶ岳、手前は「ふれあいの湯」 吉田庵の背後に広いグランドがあり、その奥に「オートビレッジ吉田」というオートキャンプ場と、その中心施設「吉田温泉ふれあいの湯」という立派な建物がある。ここまでは調べ通り。山の麓に温泉とはありがたいな〜。 この施設で山へ登るルートを教えてもらおうと思っていたのだが、近づくと「午後3時〜」と書いてある。まだ正午だよ。玄関は鍵がかかっており、オートキャンプ場ともどもだーれもおらん。 とりあえず腹が減ってきたので立ったままパンを食っていると、1台の車が温泉施設に現れ、おじさんが出てきた。ここの管理人のようだ。 登山ルートを聞いてみたら、この建物の左手から登っていけるという。 山の左側は「吉田の岩場」と向き合う谷だ。俺は、ゆるやかなほうの右側から登るものとばかり思っていた。この人が来るのがあと5分遅ければ、俺は右側のヤブに突っ込んでいただろう。 「40分くらいで登れますよ」って? もしかして登山道が整備されているのか? 建物の左側には、上水施設へ続く林道がある。その途中の左側に、山へ入る目印のテープがあると教えられた。でもなかなか見つからない。進んでは戻り、キョロキョロ探して・・・。 (左)じつはこの左端が登山口(林道入り口から20mほど) (右)目印のテープは? (左)こ、これですか・・・ (右)そのあとも随所にボロいビニールひもあり 谷沿いに照葉樹林の中を進む。目印のビニールひもがあちこちにあってわかりやすい。堰堤を越えるところで対岸に渡り、そこから山腹の斜面を登っていくかたちになる。 (左)堰堤上を左から右へ渡る (右)岩場が現れた かなりの急斜面だが、やはりテープがうまいこと導いてくれる。効率的にグイグイ高度を稼ぐと露岩が現れるが、ロープが下げられていて迷うこともない。 やがて教えられたとおり、頂上岩塔部の根っこの部分に行き当たった。ここで左へ行けと教えられた。 (左)岩とヤマモモの株立ち (右)岩塔基部に行き当たる (左)赤い矢印も「←」を指す (右)岩塔部を左へ迂回してゆく 時計回りにまきながら岩塔を登ってゆく。このあたりになるともはや緑のセーフティネットは機能せず、こいつのクールなスキンヘッドと危険思想に歩調を合わせてゆくほかない。 急な箇所には必ず丁寧にロープが設置されている。だが岩はしっかりしていてホールドも多く、ロープに頼らずとも登ってゆける。ただし高所恐怖症の人にはキツイかも。 (左)ロープが3本くらい下がっている (右)冒険漫画に出てきそうな横ばい道 (左)たのしー! (右)巨岩の隙間を抜けてゆく 登るにつれて樹木が矮小化し、岩山特有の箱庭的景観となる。もはや気分は仙人だ。いやー楽しいなあ。 「ふれあいの湯」の人が言うには、「見えている頂上の奥にもう一つある」ということだが。 (左)この上が頂上か? (右)浮石にはご丁寧にペケ印まである (左)回り込むと「奥の頂上」が見えた (右)いよいよ頂上へ! 教えの通り、ほぼ40分で頂上に着いた。そこは名前のように千畳・・・とまではいかないが、6畳間くらいの広さがあった。天空の広間だ。 (左)岩の6畳間 (右)岩の端に座って吉田を見下ろす 高さはウチの近所の風吹岩の半分にも満たないが、切り立った岩塔の上からの360度展望と瀬戸内海の景観で、すばらしい高度感だ。 眼下に見える吉田の海辺からここまで1時間かからないとはね。ははっ、足ってスゲーわ。 天国的パノラミック・ビュー180度。遠くに家島諸島が霞んでいる (左)北尾根、ビシャ岳の岩塔から吉田富士へと続く (右)少し下にロッククライマーたちの完了ポイント 春の風の中、ここで海を眺めながら本を読んだり昼寝したりしてやるもんねー。 ところがおにぎりを食っている間に、体ごと飛ばされそうな勢いの風が吹き始めた。うひゃー、これは本を読むどころじゃないぞ。しかも空が暗くなってきた。 岩陰に隠れるや、風は雨粒混じりとなり、やがて完全に雨となる。そんなぁ〜雨の予報じゃなかったよ。カッパも持ってないし。 仕方ないので、雨の中を濡れながら下山する。 吉田富士方面への周回ルートがないか少し探ったが、かなりのヤブ漕ぎになりそう。雨の岩山で雨具もなしにヤブこぎするのは阿呆でしかないので、登りと同じルートを戻った。 雨中の岩場の下りでは、随所に設置されたロープに大いに助けられた。照葉樹林帯でしばし雨宿りしながら、一瞬の小降りを突いて「ふれあいの湯」まで戻った。 でもまだ2時か・・・開館まで1時間もあるがな。 でもスタッフの人がもう一人来ていて、中に入れてくださった。しかも「もう風呂が沸いてますから入ってくださっていいですよ」だって・・・感激! びっしょり濡れた服を脱ぎ、大浴場ひとりじめだ。山の頂上もよかったけど、これもまたよいのぉ。オホホ。 ふれあいの湯のロビーには、こんな絵図が貼ってあった。なんでも「大阪の人」が何日もかけて岩場を徹底探索して作ったものらしい。すべての岩に名前が付けられている。名付けにハマったクライマーなのだな。 どうやら今日登った千畳ヶ岳のルートもその人が開拓・整備したものらしい。 あれだけのルートを拓いてロープなどを設置するのは大変なご苦労があったことだろう。どこのどなたかは存じませんが、おかげさまで手軽に楽しませていただきました。感謝いたします。 というわけで、バス停から近く、麓からの見栄えよく、短時間で登れて、適度にスリルも味わえて、最高の展望を得られて、下りたら温泉が待っているという、非常によくできたふしぎ山だ。温泉がかなり塩素くさいことなんてこのさい目をつぶろうではないか。 今のところロッククライマー以外の一般ハイカーにはほとんど知られていないようだ。でも今後はポピュラーな山になっていくことだろう。小豆島おそるべし! (登山日:2013.1.2) 赤線がおよそのルート ※姫路〜福田のフェリーは1日7便。姫路駅〜姫路港の路線バスは1時間に2〜3本ある。 ※福田港からの島内バスは、フェリー降りて道路を右へ、赤い橋を渡ったところが北回り線のバス停。 ※オートビレッジ吉田ふれあいの湯に食堂はない。生ビールはあったりなかったりのようす(この日はなかった)。牛乳はあった。 |
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