| チープ&ディープな男の旅路・県庁所在地シリーズ 大津 ---湖都の街道をゆく--- (2004.3.19〜20) ![]() |
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今回は仕事のついでだ。だいたい大津なんて何度も来てる。神戸からも電車1本、1時間ちょいだ。 |
| 江戸へ向けて/石山ボンソワール/謎の秘宿/京へ向けて |
江戸へ向けて---旧東海道 昼過ぎまで神戸で仕事して、JR新快速で一路東へ。 JR大津駅は京都駅からたったの2駅、190円。これほど県庁所在地どうしがくっついているところは他になかろうて。 しかも、県庁所在地の中心駅でありながら、これほどさみしい駅も他にないのではないか。喫茶店はおろか立ち食いうどんすらないよ。 まずは駅前から無料シャトルバスで湖岸の大津プリンスホテルへ行き、翌日の仕事の荷物をクロークに預ける。もちろんここに泊まるわけではない。単に荷物預けだけ。 大津プリンスホテルさてと。この時点ですでに夕方4時前か。 とりあえず湖岸道路へ出るが、車がガンガン走っていてうるさいので、わき道に入る。 と、観光用の街路図があり、「旧東海道」と書いてある。 そうか。この道がその昔、商人や大名などが東へ西へと行き交った、いにしえ日本のメインロードなのだな。言われてみれば古い街並みだ。 じゃ、とりあえずこれを江戸のほうへ向かって歩いてみるか。 これが旧東海道しばらく歩くとだんだん商店が増え、膳所のまちになる。 おや? 見覚えのある整骨院だなと思ったら、学生時代にいっしょにバンドをやってたやつの家だった。20年前に一度遊びに来たことがある。声をかけていこうかとも思ったが、平日の昼間だし、べつに用もないのでやめといた。 その近くには膳所城跡がある。琵琶湖にポコッとポリープのように飛び出したこじんまりとした湖城跡で、今は公園になっている。ここもかつてその友人と来たことがある。懐かしい。 ![]() (左)膳所城跡公園 (右)公園から見た琵琶湖と近江大橋 旧東海道に戻ってさらに江戸を目指す。 膳所を抜けると田舎の風情がだんだん濃くなり、古い建物のオンパレード。街道の脇には細い路地がたくさん残っていて、寄り道も楽しい。 ![]() (左)セブンイレブン・イン・トラッド (右)瀬田の唐橋 やがて石山駅付近で今の国道1号線と交わる。それを横切ってさらに南へ歩くと、瀬田の唐橋に出る。唐橋を制する者は天下を制するとかなんとか言われた橋だな。歩き始めて1時間ちょっと。 |
石山ボンソワール---ふろめしさけふろ 唐橋近くの狭い路地に侵入すると「唐橋湯」がある。いまだに薪で湯を沸かしている渋〜い銭湯だ。 ここで江戸へ向かう旅はとりあえず打ち切って、ひとっ風呂。貸切の湯船で贅沢に堪能し、番台のオヤジと語らって上がる。「名銭湯・滋賀編」にアゲといたのでくわしくはそちらをご覧あれ。 ディープなお風呂石山駅方面へ向かう地味な住宅街に、「魚貴味」という店があった。琵琶湖のほとりで「いわし料理」の看板かよ。といいつつ入ると、思ったより明るく広い店内。カウンターの中では50代のオヤジが一人でせっせと料理を作っている。 ビール飲みつつ、いわし天・酢ガキ・蛸キムチなどを食べたが、どれも一工夫されていてうまかった。店もこぎれいで、お値段も手ごろ。客もそこそこ入っている。 なかなかよろすいある程度腹がふくれたところで、石山駅周辺の飲み屋街を30分ほど探索。駅の東側に小料理屋やスナックなどがそこそこ集まっており、フーゾク店も2軒ほどある。 「BENIYA」というキッチン・バーに入る。 カウンター席にハンサムな30才くらいの白人男が座っており、その横が空いていたので腰掛ける。白人男は、カウンター内の目のクリッとした日本人の若い女性店員と、フランス語のような言語で会話している。驚いたことにその女性店員はフランス語がペラペラだ。 「フランス語?」と聞くと、「そうです」と言う。 僕は自慢じゃないがフランス語は5つほど単語を知っている。で、そのうちの1つ「ボンソワール」を白人男に向けて放つと、男は嬉しそうな顔をして、 「ボンソワール・ムッシュー、ナンタラカンタラ、ブゴシャボノワップリュクフェドゥ・・・(フランス語イメージ)」 と言う。 「オーウ、フランス語ワカリマセーン」 とベタな日本語を返し、そのあとは英語でコミュニケーション。学生時代にアメリカを旅して以来約20年ぶりだよ。当たり前の単語がまったく出てこない。 彼はリュック・アラス、パリ在住の写真家だがそれだけではメシが食えず、ふだんはインタビュー・ライターなどをして生活している。数日前から京都・北山のギャラリーで写真展を開いていて、日本での写真展はこれで4度目だそうだ。 こんな写真を撮っている。 写真展案内の絵ハガキをもらった「この風景のどこがおもしろいのか?」と失礼な質問をすると、 「前の広いスペース、塀の向こうの四角いアパート・・・」と律儀に説明してくれた。真面目な青年だ。東アジアや日本の風物が僕には異質でおもしろい、と言う。 ところでフランス語ペラペラのカウンター嬢も興味深い。「リュックの友だちの友だち」だそうだ。 29歳の彼女は元銀行員。フランスへ旅行して「とてもフレンドリーだが節度をわきまえたフランス人の温かさ」に感激し、以来4度のフランス旅行のすえに銀行を退職し、先月まで数年間、パリに語学留学していた。カネがなくなったのでいったん帰国してこの店でバイトしており、6月にはまた行くのだという。 さてはフランスに男でも・・・(←早く死んだほうがいいオッサンの発想) 「ボンニュイ・ムッシュー」と言ってリュックは先に帰った。 「彼、かっこいいね」とカウンター嬢に言うと、 「そうですか? 私はなんとも思わないですけど」と言う。 いや、かなりのイケメンであることは間違いないんだが、この程度はフランスでは並なのか? フーム。だとしたら彼女がフランス熱にとりつかれたのもわからんでもない。 彼女にコルシカ島(じつは僕が中学時代から密かに憧れている島)の話などを聞いてから、店を出る。 今夜は『全国安い宿情報』という本で見つけた石山の「上杉」という宿に泊まることにしているのだが、予約電話を入れたとき、「用事で夜9時まで京都に行ってるのでそれ以降でよかったら・・・」とのことだった。しかも、看板も何もないので石山駅まで迎えに行くと言う。「1泊3000円」「客室は2室のみ、最大6名」という、なんかちょっと妙な宿だ。 でもまだ9時前か。すでに腹もふくれてるしビールや焼酎もたいがい飲んだしな・・・というわけで、もうひとっ風呂いくとするか。 石山駅から徒歩数分、銭湯ファンの間では大津で一番有名な「容輝湯」へ。ここには1年ほど前にも来たことがあるが、最近改装されたようで、番台がフロント式に変わっていた。くわしくはこれも「名銭湯・滋賀編」をご覧あれ。 いやーしかし、なんべん入っても風呂は気持ちいいねぇ〜。 容輝湯。見よ、この巨大な唐破風(夕方撮影) |
| 謎の秘宿---上杉 風呂から出てまたもやポッカポカ。宿「上杉」に電話する。「はいー」とおばさんの声。 「今、石山駅の南にあるローソンにいるんですが」 と言うと、すぐ迎えに行くと言う。 3分後、やたらと腰の低い50代後半のおばさんが現れた。 「すぐそこ」と言うおばさんのあとをついて路地に入ると、ローソンから1分の場所にあるモルタル2階建ての真新しい小さな建物に案内された。外付け階段を上がって戸を開けると、中は1DKのウィークリーマンションのような部屋だった。6畳の居間、4畳半DK、トイレ、風呂。ガスレンジや冷蔵庫・食器も揃っている。居間には清潔なベッドとテレビ。 ふーん、駅から3分、ローソン1分、そしてこの部屋で1泊3000円(税込)か・・・安いじゃないの! それにしても珍しいパターンだな。どう考えても宿屋のつもりで建てたとは思えないが・・・独身寮か何かの予定だったのか? おばさんに3000円を手渡すと、領収書と鍵を渡された。「明日の昼くらいまでに出てくれはったらいいですから」とのことだった。 ![]() (左)上杉の外観。上下1部屋ずつ (右)内部。DKから居間を望む。両側が窓で明るい ローソンでチューハイやらおやつやら翌日のパンやらを買い込み、テレビを見て本を読んでくつろいで寝た。 それにしても、まさしく秘宿。気づかいがいらないし自炊もできるので、家族連れなどにもいいかも。電話番号を書いておこう。077-537-7055 |
| 京へ向けて---再び旧東海道 翌朝は10時すぎまでゆっくりしてから出発した。 さてと。例によって高いところから大津の街を眺めようか。地図を見ると、膳所の南西に茶臼山という小高い丘があるので、そこへ向かう。 石山駅から京阪石坂線に乗って膳所本町で下車し、少し歩いてJRと国道1号線を渡ると、正面にこんもりした丘が見える。舗装道路を登ると、ものの15分ほどで頂上に出てしまう。 茶臼山へ登る道茶臼山の上は運動公園になっている。このページ冒頭の写真はその付近からの眺め。琵琶湖の向こうの比良山麓に雲が細く柔らかくたなびき、山頂部には雪が残っている。なんとも清々しい。 やっぱり琵琶湖はいいねぇ。 しばらくぼんやりして、来た道を戻る。 小ぬか雨が降りだした。傘はないのでそのまま歩く。 膳所本町の駅から北は、細い路地に古い家屋と古寺がぐねぐねとひしめく渋い一帯だ。気の向くままに曲がったり戻ったり。それにしてもなんで僕はこういうところを歩くのが好きなんだろう。自分でも不思議だ。 ![]() (左)きれいな地蔵さん (右)膳所本町駅付近。線路と道路と店と家が渾然一体だなこりゃ 朝鮮学校の前を通って少し行くと、昨日、最初に旧東海道に出くわした場所に出た。まだ少し時間があるので、今度はここから逆に京都へ向かって歩いてみる。 しばらく行くと、石坐(いわい)神社がある。海津見神を主神とし天智天皇などを祭る、檜皮葺きの古めかしい神社。 天智天皇といやあ蘇我入鹿をぶっ殺し、大化の改新を敢行し、朝鮮半島へ兵を送ってボコボコにされ、そしてここ大津に都を移したっちゅーカゲキな王だな。 石坐神社。本殿は鎌倉期建立だから築800年ほどさらに歩くと、こんどは義仲寺がある。木曽義仲と松尾芭蕉の墓が並んでいることで有名な寺だが、思ったよりこじんまり。 「木曽殿と背中あわせの寒さかな」という有名な句は芭蕉没後に弟子がここで詠んだものらしいが、墓はべつに「背中あわせ」になってるわけやないな。 ![]() (左)旧東海道 (右)義仲寺山門 (左)義仲の墓 (右)芭蕉の墓 ![]() (左)境内にある翁堂。芭蕉座像がある (右)なんだかわかる? 芭蕉の使った杖だとさ 旧東海道をさらに歩く。県庁などの官庁街が近づいても街道の表情は変わらない。 道はやがて大津駅の近くになる。もうそろそろ仕事の時間だ。江戸時代の旅はこれにて終了。 官庁街付近の旧東海道大津駅からまたプリンスホテルの無料シャトルバスに乗ってホテルの会場へ行き、夕方まで本売り。 無事に仕事を終えて、5時すぎの無料シャトルバスで大津駅に戻る。 せっかくだから最後にもうひと風呂浴びて帰るとするか。駅から徒歩2分のところにある「若松湯」へ。まったく、こんなすぐに激レトロ銭湯があるんだからまいっちゃうよ、大津ってやつぁあ。くわしくは「名銭湯・滋賀編」でどーぞ。 脱衣場はコレモンなワケで街並みも銭湯も、ほっこりと昔風にひたれる大津は、サイズ的にも歩くのにちょうどいい。琵琶湖があるおかげで風景も奈良より開放的なので、春のプチ・トリップにおすすめしときやしょう。 古寺の脇を琵琶湖へ下る小川べり桜ふくらむおしまい。 |
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