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ははは。ついに来たよ世界遺産の洋上アルプス、屋久島へ。 登山基地でもある安房港から山を眺めると、イキナリこんなのが見える。 てっぺんのアレなんじゃ?個性的な山の多い屋久島だが、この山のふしぎな姿はとにかく気になる。なにしろ反りくり返った岩塔がまるでトゲみたいに、山頂にモロに突き刺さっている。近ごろじゃ、親指を立てた「グッジョブ」の山とか言われたりもしているらしい。 いずれにせよ、あいつを抜いてやらんことには気持ちが落ち着かない。よしよし、今行くから待ってろよ。 安房から車で山に向かって1時間弱でヤクスギランドに到着。ここがこの山の登山口になる。 観光バスで乗り付けたご高齢の団体客らがこの山を見上げ、口々に「おぉー、ものすごい岩やなあ!」などと声を上げている。 ![]() (左)ヤクスギランドから。右側が太忠岳。左側の花折岳山頂にも気になる岩塔あり (右)抜くのは無理かも・・・ 「天柱石」と名づけられたあの岩は、なんと50メートルくらいあるらしい。うひゃうひゃ。 数日前に寒波が訪れて雪が積もっているみたいだが、んなもんに構っちゃおれん。 ヤクスギランドの入口で運営協力費300円を支払って森に入る。ランド内は木道がきれいに整備されている。しかし荒川の吊り橋を渡ると木道はなくなり、斜面を入り乱れる木の根から木の根へ、鬱蒼とした森の中を登っていく。雪も徐々に増えてくる。 そこらじゅうを覆い尽くす苔がすごい。そして複雑怪奇に入り乱れる多種多様な樹木。聞きしに勝る大自然パワーだ。 7歳の女の子が命名したという「ひげ長老」などの屋久杉の前を通り、ヤクスギランド入口から40分ほどで蛇紋杉の東屋に着く。それにしてもこの屋久杉っちゅうやつ、デカすぎてこっちのスケール感が狂ってくる。 ![]() (左)いきなりヤクシカがお出迎え (右)荒川の橋を渡ると木道が途切れる ![]() (左)ひげ長老、バカでかい (右)ゆく手に雪が増えてくる ![]() (左)なんかもう木のカタマリ (右)蛇紋杉は10年前の台風で倒れ、裏返って根が天を仰いでいる 蛇紋杉でヤクスギランドから離れ、太忠岳登山道に入る。坂はきつくなり雪も増えてくるが、今朝から何人か登っているらしく、真新しい足跡がついていてルートを見失うことはない。 尾根かと思うと水場が現われたりする微妙な地形の斜面を登ってゆく。そこらじゅうに湧く豊富な水は屋久島の象徴だ。 このあたりは天文年間に伐採されたのち再生した一帯で、「天文の森」と名づけられている。積雪期だというのに力強い緑の魔境。苔むした巨大な伐り株と、そこから更新した杉たちが複雑な風景を形成し、荘厳な美しさがある。 ![]() (左)木と木がもたれ合ってトンネルになっている (右)倒木をくぐってゆく ![]() (左)行く手に立ち塞がる木の壁とmyリュック (右)途中にベンチがあったが、この状態 天文の森をすぎるとあたりはアセビなど風衝性の低木が増えてくる。そして斜面はますます急に、雪はいよいよ深くなる。 皮と化繊の軽登山靴にスパッツもつけていない俺の足は、2枚重ねの靴下ともども、もうグショグショだ。しかも出発前に雪用手袋を買う時間がなかったので、軍手しかないのよね〜。木の根をつかんで登るようなところもあり、当然のことながら軍手もグショ濡れ。 しかもガスってきたぞ。なんかやばい感じだが、雪のせいで足場が定まらず、ペースは上がらない。 ハァハァ言いながら巨大な岩の影にたどり着く。そこからは頂上とは逆方向に、尾根下の斜面をトラバースしてゆく。 前方から、ゴアテックスの上下にWストックを持った完全装備の若者が一人下りて来た。 「こんにちは。この先はどんな感じですか?」と聞くと、泣きそうな顔でこう言う。 「いやー雪でたいへんですね。頂上の大岩を回り込んだところにいいビュースポットがあるんですが、雪で危ないし一人なので、戻ってきちゃいました。足跡はありましたけども・・・」 話してるうちに冷たいガスがさーっと流れてきた。うむー、手も足もびしょ濡れで不安を感じるが、とにかく行けるところまで急ごう。 やがて広場のようなところを通って尾根に出た。「石塚分かれ」と呼ばれるところだ。ここからは東に向きを変え、太忠岳の頂上目指して尾根づたいに歩く。 ![]() (左)「石塚分かれ」手前の広場 (右)太忠岳への尾根道 尾根はさすがにキツイ風が吹きつける。いったん急坂を下りて、また登る。ロープが設置されている岩場も何ヵ所かあるが、難しくはない。 草木に積もった雪に隠された落とし穴を踏み抜かないよう、慎重に進む。 やがてついに、これまでまったく見えなかった天柱石の背中がドーンと姿を現した。 で、でかい・・・でかすぎる! ![]() 一瞬だけ雲が切れて青空が覗いた。ちなみに木はだいぶ手前にあるので大きさを比べないように 蛇紋杉から1時間半ほど。この場所がいちおう頂上ということになっているようだ。 本当の頂上は天柱石のてっぺんなのだが、登るのはとうてい無理。過去にはボルト打ちまくって人工登攀した人もいるらしいが。 ちなみに上の写真は、北東に向かって鎌のように尖って湾曲している天柱石を、南西の背中から見たかたち。 東側に回り込めば、その恐るべき全貌を見上げることができるという。しかし回り込むルートは雪の吹き溜まりになっていて、すべての足跡はそこへ行くのを断念して引き返している。 だが、ここでさらに踏み出すのが探検家というものだ。 俺は足跡のない真っ白な空間へ踏み出した。とたんにズボッと膝まで雪に埋まる。3歩目には、俺は雪の急斜面にへばりつく自殺志願者状態になっていた。 ここを進むには、最低でも防水パンツにロングスパッツが必要であることを悟らざるを得なかった。 ![]() (左)撤退ポイントからは安房の港が見えた (右)そこから見上げた天柱石、目のくらむような迫力 寒くて休憩もできず、キャラメルをいくつかまとめて口に放り込んで、ガスに急かされるように元の道を戻る。濡れた軍手がチベタイよ〜。 天文の森あたりまで下りると心に余裕もできて、「もののけ姫」の世界そっくりな・・・いや違う、「もののけ姫」がこの屋久島の世界にそっくりなんだが、そんな凛として気高い森を黙々と下ってゆく。 というわけで冬の屋久島、南国とはいえ、ナメてはいけないというお話じゃ。 (05.12.8) ![]() (左)木霊でも出そうな聖なる泉 (右)奇怪な姿になっても生きる |
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