メ シ つ き 文 化 遺 産
激渋食堂メモ
栃木県の渋~い大衆食堂
小暮食堂 (佐野市 佐野駅)
富士屋 (足利市、足利駅)
2016.1.11
ホクシンケン食堂 ★(足利市 足利駅)
 
小暮食堂

栃木県佐野市若松町356
→地図

電話/0283-22-0618

【営業時間】 9:00~20:00
【定休日】 日曜日


 日も暮れたうえに雨で、どうしようもない。佐野駅を出て左のほうに、古い食堂っぽい明かりが見えるので、這うようにそこへ向かう。
 通りに面した部分は魚屋さんで、その横っちょの奥まったところに小さな暖簾がかかっている。中からにぎやかな声がする。

 
(左)左のテント部分が魚屋、その右側面の奥に食堂暖簾   (右)ほろよいセット1000円で2杯つき

 入ると、チープな感じの店内で、右手の大きなテーブルを囲んで常連客らしきオヤジどもの宴会が繰り広げられていた。かなりうるさい。
 そことは衝立で区切られた左のほうに、いくつか小さなテーブルがある。そこに座った。

 
(左)衝立の向こうは宴会的   (右)刺身300円から

 丁寧なおやじさんがにこやかに注文を聞きく来てくれる。とりあえず、壁に貼ってある「ほろよいセット」を注文。選べる刺身(タコ、イカ、マグロ)と茹で菜、小カレイ煮付けに飲み物で1000円。寒いので焼酎のお湯割りにした。
 あとで単品マグロ刺身300円も追加した。海のない県ではあるが、魚屋直営の食堂だけあって安くてよいではないか。

 
(左)ほろよいセット、イカ刺したっぷり   (右)マグロ刺身追加

 にぎやかな常連客らは、おっさん4~5人におばはん1人で、すっかり酔っぱらって楽しげにテレビを見ながら盛り上がっている。その彼らの、「~だべ」と語尾につく方言が加藤茶のコントみたいでいちいちオモロすぎる。
 おやじさんとおかみさんは、ディープな店の割にはスポーツ新聞を持ってきてくれるなど気づかいが温かく、うるさい店内に一人でもそれなりに心地よく過ごせた。近所にあれば通うな。
(2015年4月)
このページの頭激渋食堂メモのトップさいろ社ホーム 

富士屋
栃木県足利市通1-2701
→地図

電話/0284-41-2590

【営業時間】 10:00~18:30
【定休日】 水曜日


 大通りに面して「自慢焼き」というのぼりが立っている。何かと思って近寄ると、いわゆる回転焼きだった。100円。
 それが判明すると同時に、そこは「甘味と食事」という看板を出している古めかしい喫茶店ぽい店で、販売ブースはその店の店頭のごく一部であることがわかった。

 入口は奥まっていて、手前に大きなショーケースがある。甘味の店って、店頭で何かを焼いて売り、食堂部分の入口はこんなふうに奥まっている店が多い。
 だがここは一般的な喫茶店に比べて、食べ物に力を入れるあまり食堂化している様子がうかがえる。全然腹は減っていなかったが、時代がかったムードが気になって入店した。

 
(左)縦長の付き出し看板には「食事と喫茶」とある  (右)おすすめの定食などが白板に


奥まった入口へ歩みを進める右手のショーケース。品数豊富

 内部はちょっとびっくりするくらい広く、窓がなくて照明も控えめなため洞窟っぽくもある。内装はきわめてクラシカルで、一昔前の喫茶店まんま。
 メニューは多く、オムライス600円やスパゲティ類600円~、ハンバーグ定食800円など洋食系を中心に、かつ丼700円やラーメン500円もある。もちろんパフェやあんみつなどのデザート類も充実。甘味処の発展系食堂としては本格派だ。

 しかも前金制で、「チケット売り場」があるぞ!
 昔のデパートの最上階食堂の流れを汲んでいるのかもしれない。広さやメニューからして、今のファミレスの走り的な存在感だ。

 
(左)チケット売り場が!  (右)昔センスな証明もよし

 豊富なメニューが気になりつつも、腹が減っていないのでコーヒー380円を注文。
 三角巾をした60代くらいの店のおばさんが持ってきてくれた。遠くの席では若いカップルが食事している。奥の厨房ではおじさんが料理を作っている。

 おばさんに聞くと、昭和30年からやってるそうだ。その当時からスタイルを変えていないのだろう。「ゆっくりしたい人が来られます」とのこと。

 
コーヒーなかなかうまい

 隅の本棚に、週刊誌やマンガが多数置かれている。週刊ポストは去年のまでが揃っていて、どれが最新号かわからない。
 奥まったアジトでメシ食ったりコーヒー飲んだり、とにかく世間から離れてゆっくり過ごすにはちょうどエエかも。
(2015年4月)
このページの頭激渋食堂メモのトップさいろ社ホーム 

ホクシンケン食堂 
栃木県足利市通4-3505
→地図

電話/0284-21-2864

【営業時間】 11:30~20:00
【定休日】 水曜日


 足利駅から渡良瀬川沿いにぶらぶら歩いていると「歌碑→」との案内板あり。それに従って堤防に上がってみたら、すぐそこに見えている橋が森高千里の歌った「渡良瀬橋」なんやと。
 べつにファンではないがいちおう行ってみたら、その橋から下がったところに食堂発見。

 
古そう

 中途半端な時間のため全然腹は減っていなかったが、暖簾がかかっているし、激渋を予感させるオーラに導かれて入ってみた。そしたらば!

 
(左)この床このテーブルこの椅子・・・  (右)わー何コレ、感激!!!

 タイムがスリップすんりすり。どっから見ても白黒映画のセット状態だ。
 窓側には、夜行列車の食堂車を彷彿とさせる壁付の細長テーブルと、これまた豪華列車を思わせる木製のベンチ椅子がある。ややふくらんだ座面のくすんだえんじ色、黒光りする背もたれ・・・たまらん。ここに座ろう。

 メニューは定食類600円、ラーメン450円、洋食ライスものや丼物もすべて500~600円。安いな。
 おだやかなおやじさんが注文を聞きに来るが、さして腹が減ってないから、ビール大瓶550円とワンタン450円を注文した。

 
(左)メニューの張り紙も渋い!  (右)ワンタン450円

 うむー、老舗のあっさり味、安心の味やわ。
 中途半端な時間ゆえ他客のいない中、チビチビ、チュルチュルすすりながら午後のゆるやかなひとときが過ぎてゆく。通し営業はほんとに有難い。
 アテにマカロニサラダを出してくださった。
 よい。じつによい。なんもしてへんのに充実感いっぱいや。

 それにしてもちょっと変わった屋号だ。
 聞けば、初代は明治期から屋台をひき始め、屋号はそのときの屋台の名前「北清軒」から来ている。屋台ラーメンを教えてくれたのが中国人だったという。
 やがて現在地より駅寄りに店を出したが、その後、渡良瀬橋の対岸に競馬場ができたため、昭和8年にここへ移転した。椅子などはそのときに持ってきたものだ。ご主人はそのときから数えて3代目にあたる。

 ラーメン屋台から始まったわりには洋食メニューが充実していて、気になるメニューが多い。近所なら順に食べていきたいところだ。
 競馬場はすでにない。だが、以前の店のとき15歳で通い始めて現在106歳になる客もいるという。「ここのラーメン60年ぶりに食った」という人が来たりもするらしい。

 ビールとワンタンで1000円。居心地の良さにけっこう長居した。
 文化財的なホクシンケン食堂、このままの姿でずっとこの橋のたもとに残っていてほしい。
(2015年4月)
このページの頭激渋食堂メモのトップさいろ社ホーム