メ シ つ き 文 化 遺 産 | ||
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和歌山県の渋~い大衆食堂 | ||
うを伊食堂 《閉店》
JR和歌山駅から徒歩10分ほど、和歌山ラーメンで有名な井出商店の前を素通りして信号を渡ってすぐのところに、年季を感じさせる食堂がある。 「わかやまジビエ」の幟と「いのしし料理」の提灯が、並みの食堂との違いを主張している。 ![]() ![]() (左)いのしし料理がウリ (右)夜の風景、筆書きの看板がカッコイイ 間口は広いが店内はわりと狭く、テーブル3つと小上がり2卓のみ。内装も若干傷みが目立つ。ご夫婦で切り盛りされているようだ。 麺類や丼物が400~500円台、おかずケースもある安手の大衆食堂だが、ここの特徴は何といっても天然のイノシシ料理を出す点だ。 ![]() ![]() (左)小上がり2卓 (右)テーブル3つ、正面におかずケース 手ごろなところでは、しし丼600円。大盤振る舞いなら、しし鍋2500円。 とりあえずおかずケースから小芋の炊いたんを取ってビール飲みつつ、しし串としし塩焼きを注文した。 ![]() ![]() (左)しし串1本300円 (右)しし塩焼き1000円 しし肉は全然硬くなく、それでいて野性味を感じさせられる。ビールに合いまんなぁ。 しし肉を焼く網は台所内のカウンター近くにあるが、煙を吸い上げるような設備がない。小型の扇風機を回して台所奥の換気扇に向けて煙を飛ばしているが、それでもしばらく店内は煙で真っ白になる。 だが扇風機からの煙の直撃を受けながらしし肉を焼いているおかみさんの姿を見ると、文句を言う気にもならない。 ま、気になる人はあまり上等の服を着て行かないほうがええかもね。 ![]() ![]() (左)塩焼きで白煙モクモク (右)仕上げに玉吸150円 いずれにせよ変り種の大衆食堂、こんな値段で天然イノシシ肉をチョイチョイっと食べられる店はそうないだろう。 (2015年3月) |
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ねぼけ食堂
飲みすぎた翌朝。和歌山駅の東口すぐのところに、「紀州茶がゆの店」と大きな看板を掲げた小さな食堂あり。飲みすぎに茶がゆとは嬉しいやん。 ![]() 道路に面した壁4面にそれぞれ宣伝看板が賑やかに取り付けられている。 が、それだけに飽き足らず、メニューを書いた紙が壁と言わずドアと言わず、ところ狭しと貼られている。定食から麺類・丼物など多種多様なメニューが500~600円と全部安い。 中でも泣けるのがこのあたり。 ![]() メニュー短冊に「紀の国国体」の宣伝から、「じいさん(70才)とばあさん(64才)手料理のお店です」と自分らの年齢まで張り出している。 ちょっと変わってるけど、悪い人間でないことはよくわかる。 中に入るとカウンターだけの狭い店。内部にも外と同様、メニュー短冊がびっしりだ。 ![]() ![]() (左)カウンターとメニュー短冊 (右)これにまだ玉子焼きを焼いてくれて800円 さっそく茶がゆを注文した。茶がゆは冷たいままでも、ぬるめでも、アツアツでも、好きなようにしてくれる。 800円とは高いなと思ったけど、ミソ・塩こぶ・梅干しの3種皿と漬物たっぷり、さらに玉子焼きを作ってくれてタクアンもついてくる。 茶がゆとは、元々は残った冷飯を粥にしたものらしいが、ここではお米から炊いてるそうだ。 話好きのおやじさんに聞くと、店を始めて34年、実家は有田でミカン農家。相棒の64才のばあさんが見当たらないなと思ったら、「いま山中温泉に行ってるから一人で店番」とのことだった。 茶がゆは冷たいままで半分食ってから、少し温めてもらって残りを食った。こういうの久しぶりやわー、しゅるしゅる食えて朝からウマウマ。また行こっと。 (2015年3月) |
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福井食堂
和歌山の中心商店街、とはいえすっかり寂れてる「ぶらくり丁」。その脇の風俗店エリアに1軒の大衆食堂がある。 ![]() ![]() (左)「女子寮」の向かい (右)エエ感じの入口 中に入ると、なかなかの広さ。床に敷き詰められたタイル模様がユニークだ。 壁メニューは和洋中なんでもござれ。「ぶた水煮」「とり水煮」などの鍋物も気になるなあ。ビール大瓶700円はチト高いけど、貝汁100円など普通より安いものもある。 奥にはおかずケースがあって、焼き魚などいろいろ並んでいる。おでんもあって、とにかく選択肢が豊富だ。 ![]() ![]() (左)汁に「玉子スープ200円」もある (右)いつしか満席に しかし和歌山に来たら和歌山ラーメン(地元では「中華そば」と呼ばれる)食いたいよね~。 一般的に大衆食堂の中華そばはトリガラスープのあっさり風味と相場が決まっているが、さすが和歌山、ここは違うね~。 ![]() ![]() (左)豚骨醤油の本格派600円! (右)さらにオカズケースからカマ焼きとってチンしてもらう うまいわ! ここの中華そばマジうまい。大衆食堂のレベルとちゃいまっせ。 さびれゆく和歌山の中心街にしっかり残る、すぐれた人気店だ。 (2015年3月) |
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エリヤ食堂
線路の堤防に濃い~食堂があるっちゅーので、六十谷駅で下車。 駅から南へ徒歩3分くらいで、まごうことなきその店が見えてきた。店の前も横も未舗装で、雑草に包まれた和歌山の大自然。風にはためく暖簾を見ていると、清々しささえ感じさせられる。 ![]() ![]() (左)ベニヤ手作り看板 (右)雑然とした店と、じっと座っているおばあさん 中へ入ると、すぐ左におばあさんが座っていて、その息子さんとおぼしき店主とテレビで「暴れん坊将軍」を見ておられる。 テーブルが4つ5つ並んでいるが、うち2つ半ほどは何かとモノが置かれている。奥にはおかずケースがあって魚料理や惣菜が入っており、その周囲には黄色いメニュー短冊がたくさん下がっている。 麺類300~400円台、丼物も400円台、味噌汁60円やとぅ? やっすぅ~。 ![]() ![]() (左)おかずケースとメニュー短冊 (右)奥のテーブル 「エリヤ黄そば220円」も気になったけど、表に書かれてて気になった「揚げたてカツカレー650円」を注文。すると息子の店主が奥の台所に立って料理をし始めた。 そのとき、テレビを見ていたおばあさんがゆっくりと立ち上がり、おぼつかない足取りでテーブルを伝いながら俺のほうへ近寄ってきた。どうやらポットのお茶を入れてくれようとしているらしい。 即座に俺は「自分でやりますっ」と言って速攻でお茶を入れ、おばあさんに席へ戻っていただいた。 ![]() ![]() (左)カツ3個も乗ってるカツカレー650円 (右)大量の白菜漬物100円と焼酎380円 揚げたてのカツが3つも乗ったカツカレー、もちろんウマイ。 食い終わってからももう少しこの独特のムードを味わうべく、焼酎お湯割り380円を頼み、おかずケースから漬物をとる。テーブル上に梅干しのタッパーがあって焼酎に入れ放題だ。 テレビを見ていたおばあさんは、そのままの姿でいつしか眠っていた。 焼酎も飲み干してフト見たら、今度は手元の紙に花の絵を描いておられた。 自然に包まれた古い食堂で、こうして静かに時を過ごす年老いた母と息子。 ディープな店ではあるが、どこかほのぼのとした思いが胸に残った。また行きたい。 (2015年3月) |
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大衆食堂 一福
船戸駅の正面(北側)からだと大きく回り込んで10分近くかかるけど、裏口から抜けると3分くらい。 しかし14:20か……また中途半端な食いっぱぐれタイムになってもーた。でも暖簾が出てるぞラッキー。 入ると中はわりと広くて、6人がけ大テーブル2と小テーブル2つほど。 壁に一般的な食堂メニューが書かれている。めし大150中130小110、味噌汁80豚汁120って安いな。 ![]() おかずケースもあるやんか。目玉、ウインナー、マカロニサラダなどが入っている。 ゴーヤのおひたしみたいなんを取ってつまみつつ、中華そば450円を注文した。 ![]() ![]() (左)ゴーヤおひたし、値段忘れた (右)中華そば450円 しばらくして運ばれて来た中華そば……おっと、こいつは本格的な和歌山ラーメンだ。やや塩気が強めだが、ええ味出しとるやんけ。450円でこれは安い。 先客1名40代女性がスパゲティみたいなんを食っている。厨房のおかみさんはざっくばらん系で、その女性とデカイ声でしゃべっている。 でもじつは気ぃつかいーのおかみさん、食後に無料でコーヒーを入れてくれた。 ![]() 田舎のよさを感じさせられる食堂だ。どことなく沖縄っぽいかも。 (2015年9月) |
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おまめ
海南駅から10分ちょっと歩く。周囲の商店街と飲食店がほぼ滅び去ったエリアに、こっそり隠れるように小さな食堂が残っている。 ![]() ![]() (左)外壁改装でグレーの箱状建物、右の路地に玄関あり (右)正面は昔ながらの風情 左上写真では、手前は国道、奥にかつての商店街が並行して左右に走っている。その両者をつなぐ狭い路地に玄関が面しているのだが、両横が更地になっているため、わざわざ玄関を隠しているかのような具合になっている。 海南には駅近くに「おまめ寿司部」という大きな店があるが、そことは親戚ではあるがまったく別の店らしい。 ![]() 窓がなく洞窟的な店内は、テーブル5つほどのこぢんまり空間。昭和中期から時が止まっている。年配のパンチパーマのおかみさんが一人でやっているようだ。 もともとは、和歌山名産のなれ寿司の店だったのだろう。それが麺類・丼物などを400~600円台で提供するようになって大衆食堂化したと思われる。 ![]() ![]() (左)店内は昭和30年代 (右)壁のタイルが郷愁を誘う まずは、なれ寿司やな。 おっと、これは想像したものよりずいぶんオッキイぞ。おしぼりくらいのが2つで280円。 笹をはがすと、ぎゅうぎゅうに押された鯖寿司が出てきた。すごい密度。こんなにしっかり押してあるのは食ったことがない。 でも本来はこういうものだったのかもね。野良仕事の弁当には持ってこいだ。 中華そばも頼んだ。これはいわゆる和歌山ラーメンぽくない一般的な食堂系。麺が太くてやさしい味で、チャーシューのかわりに豚肉とハムが入っている。 ![]() ![]() (左)なれ寿司280円、うまいです! (右)中華そば500円 おばちゃんは「商店街もなくなったし、海南はもうアカンわ」とおっしゃる。だとすればなおのこと、この「おまめ」が残っているのは奇跡的だ。 (2015年3月) |
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まるまん食堂
箕島駅を出て正面へ1分歩くと、「マルキ食堂」「まるまん食堂」と3階建てが2軒並んでいる。マルキが閉まっていたので、「小鯛寿し」の看板が出ているまるまん食堂へ。 もとは1階食堂と階上(座敷か宴会場?)の入口が別々だったのだろう。それを改装して、階上入口側にまとめた様子がうかがえる。 ![]() 店内はテーブルが6つか7つ。奥の厨房とは別に、表の道路に面して調理用の小さな一室がある。そこに「名物 此の海でとれる小鯛雀寿し」と書かれた紙が貼られている。 せっかくやから名物いっとこか。んで酒や。午前中やけど。 小鯛寿し(1450円)を注文すると、はたしておばちゃんがこの小部屋でにぎり始めた。 ![]() ![]() (左)小鯛寿しの小部屋 (右)作っています! おばちゃん手際よく、5分かそこらで来ましたよ小鯛寿し。どれ、ひとつ……おぉ、鯛のシメ加減絶妙、そして寿司めしがモチモチと柔らかくて、もち米みたい。でも聞くと、もち米ではないという。 いやーウマイなコレ。小鯛寿しつまみながらお酒チビチビいくうちに、なにやら極楽浄土にいってもーたような気分になってきたぞ。 ついでに、だし巻き600円も頼んだれ。おっと、こいつは皿からあふれるほどや。ふわふわや。ははは、お酒もひとついっとこ。 ![]() ![]() (左)小鯛寿し、うまし! (右)だし巻きもエエど~ いやはやなんとも、朝っぱらからナンチュー幸せなのでせう。 とニヤニヤチビチビやってるうち、12時を過ぎると同時に勤労者のみなさんがドッと来て満席になった。 本日のおすすめは、とんかつ定食770円。満席の客のほぼ全員がそれを頼んでいる。 みなさんは午後からの仕事も頑張るべくカロリーと栄養補給をなさるわけで、酒を飲む人などもちろんいない。 いやぁ~みなさん、スマンのう! フホホ。 ![]() (2015年3月) |
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はたよ食堂
醤油で有名な湯浅は、小さいながらも多様な顔を持つディープな町だ。その駅から徒歩5~6分のところに、このディープな店がある。 キーワードは「夢の味」だ。「夢の味、しらす天丼」とか「夢の味、おでん」とか書いた紙が表にペタペタ貼ってあるし、駐車場の看板にも「夢の味」と大書きしてあるし、暖簾も「夢の味 はたよ食堂」と染め抜かれている。 そして演歌が店外に流れている。 ![]() ![]() (左)夢の味ってどんな味? (右)店内カウンター部分 中に入っても、やはり演歌が流れていた。 オープンキッチンをL字カウンターが囲む。年季が染みついてディープな様相。横に小上がりが2~3卓あり、その奥の席で4人組の常連中高年らが楽しそうに飲んでいる。 メニューの書かれた短冊が壁にズラリと貼られているが、その種類数がハンパない。しかも値段はみな安い。じゃがいも天ぷら180円、イカたれ焼200円、オムライス530円、とか。 パソコンで作ったポップもいろいろ貼られている。 そしてこの店を一人でやっていると思しきおやじさんが、独特の飄々とした名調子で「どて焼うまいよっ」などとすすめてくる。 カウンター内を覗くと、長年煮続けた感じの煮汁に浸かったどて焼と、おでん鍋とがある。これがこの店の名物のようだ。焼酎のアテにもろとこか。 ![]() ![]() (左)なかなかに見た目イカツイどて焼 (右)1本100円やったかな? おやじさんが「かぐや姫うまいよ~」というので、それをもらったら、タケノコのことだった。 おでんも一つ100円。夢の味、と書いてあるけど普通のおでん。 ところで湯浅はご当地のB級グルメとして「しらす丼」を売り出しているようだが、この店には唯一、「しらす天丼」がある。もちろん「夢の味」だ。 でも、どんぶり飯を食うほど空腹ではなかったので、上の「しらす天」だけを作ってもらった。 ![]() うーむ・・・シラスには味がないことがよくわかったぞ。かき揚げにすると、大きな天カスを食っているようにも感じられる。 でもおやじは自分の料理に自信があり、多種多様な料理を機嫌よく飄々と作る。それがこの食堂の好ましい雰囲気となっている。 それにしても、パソコンのPOPは誰が作ってんねやろ。 (2015年3月) |
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寿食堂
紀州鉄道の西御坊駅から20分ほど歩く。日高川の河口近くにかかる橋を渡った先、ローソンの隣にある旅館併設の大衆食堂だ。 入り口は前と横にある。店内は広々してテーブルが10ほど。そして大きなおかずケースが2つ、嬉しいねぇ~。おでんコーナーもあり。 ![]() ![]() (左)奥におかずケースがデーン! (右)おかずケースから漬物と刺身、そしてビール 麺類や丼物はだいたい400~600円。おかず類もリーズナブル。アルコール類もいろいろ、関西には珍しくホッピーもあるぞ。 ふと柱を見ると、こんな張り紙があった。 「寿の中華そば 素朴な御坊の味、これが本当の懐かしい中華そば ☆内容☆昔ながらの鶏ガラ醤油だし、昭和の味を守ってます。定価450円」 えらく念入りに書いてあるので、それも注文や。 ![]() おっ、意外にしっかりした味だが、しつこくなくて、ウマイやん! 泊り客の男たちが4~5人で食べに来た。 テーブルに早春の夕陽が差し込み、郷愁を誘う店内の情景であった。 (2015年3月) |
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大衆食堂 たか松
看板には「大衆食堂 たか松」とあるけど、夜しかやってない。その看板の電気も半分切れてて、ややディープな面持ち。 でも店内は小奇麗に改装されている。木のカウンターと、後ろにテーブル2つほどの小スペースで、雰囲気やメニューはほぼ居酒屋だ。もと大衆食堂、といったほうがいいのかも。 ![]() 狭い店だが、ほぼ満席に近い賑わいだ。 「昼はやってないんですか」と聞くと、おかみさんは頷いて、「体もちません」とのこと。 でも後ろの壁に、うどん類と丼物のメニューが貼ってある。 「あれは?」 「うん。あれだけは残して今もやってますねん。日替わり定食はやめたけどな」 おかみさんはちょっと懐かしそうだった。彼女の作る玉子丼の味が忘れられず、作ってくれとのリクエストが絶えないのかもしれない。 正面の壁には、焼き鳥・砂ずりバター焼き・お造り・おでん・串かつ……などの居酒屋メニューが並ぶが、豚しょうが焼やエビフライなど大衆食堂ぽいのもある。 さらに白板には、本日のオススメ的な魚系の一品が書かれている。ひらめ造り、流れ子煮物……どれも非常にそそられる。 だが問題は・・・それらメニューには値段が一切書かれていない! いつも小めし120円+味噌汁80円+塩ジャケいくら……とアリンコみたいな計算ばかりしている俺は、たとえようもない不安に襲われた。 でも、おかみさんは大衆食堂をやってきた人だ。きっと良心的な値段やでそうに決まってる間違いない、と自分のミジンコハートに強く言い聞かせ、白板のオススメから下記を注文した。 ![]() ![]() (左)田辺に来たらコレ、ひとはめ酢の物 (右)とりニンニク炒め そして焼酎お湯割り。 奥の厨房に、息子さんと娘さんらしき人がいて、料理はおもにその人らが作っているようだ。 出てきた料理は、俺の娘ならきっと「クソうまい!」と言うだろう。以前、田辺のよその店でひとはめを頼んだらチョビットでがっかりしたことがあるけど、ここはたっぷりでニコニコだ。 焼酎を飲み干した俺は、角ハイボールを追加した。 うまい料理に、くつろげる雰囲気。繁盛するのもうなづける。 そして運命のお会計のときがやってきた。料理2品、焼酎、角ハイで2000円だった。 次に田辺に来たときも俺はこの店に寄ることを決めた。 (2015年3月) |
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さんばし食堂
白浜駅からバスで15分ほどの白浜桟橋で降りると、交差点の角にこの青いテントが見える。 ![]() ![]() (左)カメラを構える俺の後ろは海 (右)店内 テーブル3つ4つとカウンター席少々の狭い店で、小柄なおかみさんが迎えてくれる。 壁のメニューには、麺類300~500円台、丼物500~700円、定食類はほぼ700~800円で、すきやき定食1000円、造り定食1300円が突出している。ほか一品ものもあり。 「日替わり定食(800円)は何です?」 「今日はスキヤキやけど」 海辺へ来て午前中からスキヤキという気分でもなかったので、奮発して造り定食1300円にしよかと思ったら、造りだけまだでけへんと言う。 ほなら、まースキヤキでもええかと日替わりを頼んだ。すると…。 ![]() ![]() (左)日替り定食800円、左上がスキヤキ (右)魚あるやん! スキヤキだけかと思ったら、なんやタイみたいなんに酢味噌がかかったやつが10切れほどもついとるで。まったりとしてエライうまいがな。 「これ何の魚ですのん?」と聞くと、おばちゃんが自分で釣ってきたコロダイやという。なんと魚はいつも自分で釣ってくるらしい。 「こないだまで、そこのホテル川久の前でサヨリが釣れたよ」 ついに出てしまった自給自足のおばちゃん食堂、あまりにも素晴らしい。今日はおばちゃん何を釣ったのか、明日は何が釣れるのか。通いたい! しかも表のテントには、「お客様が釣った魚、大小とわず料理いたします」と書かれている。それもアリか! ちなみにこの食堂を出て右向かいには、なぎさビールの醸造直売所がある。左向かいはヨットの桟橋だ。その隣は温泉共同浴場「綱の湯」。 食後もいろいろと最高なのであります。ビバ白浜桟橋! ![]() |
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ことしお食堂 ★
周参見駅で下りて正面へまっすぐ進むと、ものの2分ほどで海に出る。その少し手前に1軒の古い食堂がある。 木造板張り、2階部分の白ペンキ、そして短い白暖簾に書かれた「ことしお」という不思議な屋号・・・すさみに来るたび、そのビジュアルのすべてに心の芯を鷲づかみにされる。 ![]() ![]() (左)左の坂の上は防波堤 (右)郷愁原風景 店内はテーブルが4つほどのシンプル空間。玄関の左にカウンターで仕切られた小ブースがある。かつてはそこで持ち帰り弁当か何かが販売されてたんやろか。 ![]() 真面目そうなご主人とおかみさんが迎えてくれた。 壁にはいくぶん遠慮がちにメニューが書かれている。麺類・丼物400~600円、各種定食600~700円、ラーメン500円、カレーライス600円、オムライス650円。 海のすぐ近くだが、地の魚などはとくにない。アルコール類も置いていない。 日替わり定食700円を注文し、心地よい調理音を聞きながらしばし待つ。 ![]() トンカツと焼サバの両頭立てで来たぞ。王道コンビ、安心のうまさ。これで700円はオトクやわ。ひじきのあえ物もうまし。 昼下がりの時間帯で他に客もいない。 食べながら、いちばん聞きたかった「ことしお」の意味を教えてもらった。 ご主人は山口県の祝島の出身だそうだ。その両親は、祝島と柳井港を結ぶ連絡船をやっていた。「ことしお」はその船の名前だという。(現在は町営となり「いわい」が就航中)。 ご主人は島から関西へ働きに来て白浜で料理人をしているとき、すさみ出身の今のおかみさんと知り合った。 そしてここで店を出すとき、「ことしお」の名を継いだ。40年前のことだ。 祝島は近年、反原発運動で名を知られるようになった。「祝(ほうり)の島」というドキュメンタリー映画(2010年)は俺も観に行った。 だが本来は瀬戸内海の幸に恵まれた静かな島だ。 ご主人は、祝島のパンフレットを見せてくださった。島の人たちが維持する伝統的な祭りの写真が魅力的だ。 ことしお食堂は、かつては大阪方面から夜汽車で来る磯釣り客で賑わったが、マイカー普及と磯釣りブームの沈静化にともなって潮はひいた。 いまは地域の静かな食堂としてささやかに営業を続けている。 「せっかく南紀へ来たんやから新鮮な地の魚を食いたい」という欲求を満たすには、下のすさみ食堂のほうがいいだろう。 ここには特別なものは何もない。 でもなんやろ…うまく説明できないが、時空的な意味で特別なひとときを過ごすことができる。 ことしおで飯を食って、すぐ裏の砂浜でビールを飲んで昼寝。 いつまでも心に残る、いい旅の時間だ。 ![]() ![]() (左)永遠にあり続けてほしい (右)すさみ海岸の東屋、ことしおから徒歩1分 (2015年3月) |
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すさみ食堂
ことしお食堂を右折して、さらに左に狭い路地に入ったあたりにある。駅から5~6分。小奇麗に改装されているが、白抜きの暖簾がいい感じ。 店内はカウンターが7~8席とテーブルひとつ、奥に小上がりもある。 カウンター前には魚の入った冷蔵ガラスケースがあって寿司屋っぽい。 ![]() ![]() (左)カウンター (右)魚がゴロゴロ 壁のメニューは多様で、寿司メニューから始まっているから、やはり寿司屋の発展型食堂のようだ。きゅうり巻き2本380円、バッテラ420円、にぎり1050円などなど。 食堂メニューとしては、うどんや丼物400~600円台、塩鯖や煮魚などの定食780円から。 そして、すさみ特産のイノブタを使ったイノブタ丼930円、イノブタラーメン700円もある。南紀名物めはり寿司もある。 俺はさんま寿司に狙いを定めて来たのよね~。 いやーウマイわ。サンマよう肥えとるし。醤油つけいでもウマイな。 ![]() 常連客もおやじさんもざっくばらんで、昼間っから魚食って酒呑んでご機嫌。営業時間も長いので、いろんなかたちで使いやすい良店だ。 (2013年10月) |
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ベール 《閉店》
新宮駅から徒歩10分ほど、速玉大社方面へ通じるアーケード商店街の中にある。 んで、なんやねんベールて。 「大衆食堂」とか「丼物 中華そば うどん」という看板が出ているが、それと「ベール」という店名が、えもいわれぬ不協和音を奏でている。頼むからスペルを教えてほしい。 気になって仕方がない、とはこの店のためにある言葉ではないか。 ![]() 中に入ると思ったより狭く、テーブル4つほどとカウンター3席、小上がり1席のみ。 古びてはいるが落ち着いて端正な空間だ。よく磨かれた柱やタイル、使い込まれたタタキ風の床、カラフルでかわいらしい椅子などがじつに好ましい。 厨房は客席からは見えずスタッフ人数は不明だが、出たり入ったりして客対応を受け持つのは中年女性が2人ほど。この2人だけかもしれないし、もしかしたら奥にコックさんがいるのかもしれない。 ![]() ![]() (左)奥に小上がり1卓。その裾まわりの玉石タイルが泣ける (右)かわいい椅子群 メニューは大衆食堂を謳うだけあって和洋中と揃っている。 和はうどん・そばが400~500円台。丼物は500~600円。中華は中華そば450~八宝菜600円。洋食がいちばん力が入っていて、トンカツ・ポークチャップ・エビフライなどは850円、ヤキメシやカレー、オムライスなどが550~600円などとなっている。 定食は玉子焼き定食800円から焼肉定食・エビフライ定食1400円と、かなりエエ値段だ。 洋食に力点が置かれているところをみると、おそらく元は洋食屋で、だから屋号も横文字なのだと思われる。 いちばん下のほうにある「オムライスセット」800円が気になる。「オムライスまたはオムカレー」と「中華そば(カレーうどんもOK)」のセットだという。あまりない組み合わせではないか。 オムカレーと中華そばの組み合わせで頼んでみた。 ![]() ![]() (左)オムカレー (右)中華そば 「セットはライス類が少し小さくなります」と書かれてあるが、十分な大きさだ。オムカレーうんま~。あっさりとした中華そばも悪くないぞ。 異質な組み合わせで2食分楽しめた感じで、腹いっぱい。このセットはお値打ちやわ。 正午を過ぎると客が次々に入って満席に近くなるが、その多くがオムライスかオムカレーを注文している。「ベールといえばオムライス」ということなのかもしれない。わが神戸市東灘区でいうと御影公会堂食堂みたいなポジションなのだろうか。 ちなみに玉子焼き定食800円は、玉子焼きにご飯、味噌汁、タクアン2枚、味付けのり。ご飯で腹はふくれるが、大衆食堂としてはどう考えても高い。 エビフライ定食1400円もこのパターンなのだろうか? エビフライ単品は850円だが…。 ![]() 昔ながらの食堂では、なぜだか突出して安いものや高いものがあったりする。そこに店の性格や来歴が表れるので、興味深いともいえる。 だがそれを知るには多少の授業料が必要だ。とくにこの店はその振れ幅が大きそうだ。 結局そういうことで、多くの客がオムライス600円に落ち着くのだろう。 そのことさえ知ってしまえば、600円でうまいオムライスが食えて、あと200円出せば中華そばも食えてしまうベールは、安くてうまい店ということになる。 しかも歴史を感じる落ち着いた食堂、新宮では貴重な存在だ。 (2015年3月) |
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