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| 夢のブライダル都市を歩く (兵庫県高砂市) (2003年9月30日) |
| 朝から雑務をせっせとこなし、午後2時、月末の各種取り立てから逃げるように出発。JRで明石、そこから山陽電車に乗り換えて20分ほどの「高砂」で下車した。 ここは、結婚式で謡われる「たかぁさごぉやぁ〜♪」の、その高砂なのである。ユーメーな街なのである。 その証拠がコレ。 本日はお日柄もよくお足元もよろしいようで・・・写真左下の黒っぽい四角のシケた建物が、高砂駅。つまりこれは駅前の光景だ。 このガラ〜ンとしょぼくれた駅前に、すっくと立つ「ブライダル都市・高砂」の誇らしげな看板。しかも青緑に黄文字、丸ゴチック体だ。 これが避けようもなく駅前中央に屹立している以上、高砂市民は電車を利用するたびにこの看板を見るよう義務付けられているに等しい。 これはキツい。 たとえば三宮かいわいの高級ブティックなんかに通勤していたとする。最先端ファッションを求めて集まってくる客との対応は真剣勝負、洗練されたセンスも要求されるだろう。そしてようやく仕事を終えて電車に乗り、駅を出た瞬間、疲れた彼(彼女)にこいつが襲いかかる。 「ブライダル都市・高砂」(青緑に黄文字、丸ゴチック体) この瞬間、彼の中で何かが崩壊するだろう。 その試練が月〜金まで繰り返される。とりわけ月曜日の朝はキツイに違いない。 さて、そんなブライダル都市・高砂市はいくつかの部分に街が分断されている。どこが中心なのか、よくわからない。市役所や警察署などの官庁は「荒井」という地域にあるようだ。 しかし昔ながらの高砂の町は、この高砂駅南側一帯の「高砂市高砂町」という地域らしいので、ここを歩くことにする。地形的には加古川の河口に突き出たデルタ地帯だが、今は河道も埋め立てられ、内陸と一体化している。海側も埋め立てられて、鐘淵化学などの大きな工場になっている。 城があるわけではないが、高砂町には「鍛冶屋町」「大工町」「材木町」などの古い城下町のような町名が細かくついている。戦災に遭わなかったのか、町のそこかしこに古い家並みや細い路地も残っていて、歩いて退屈しない。 道行く人は、老人と子どもが多いね、やっぱしこういうところは。 こんな民家がごろごろ ![]() (左)こんな路地多し (中)路地で白いヒガンバナ発見 (右)堀川がデルタ漁師町の名残をとどめる 駅から南へ500メートルほど歩くと、十輪寺という大きな寺がある。弘法大師が創建し、法然が復興したそうな。 ![]() (左)十輪寺。なかなか美しい (右)銀座商店街の入口ゲート が、それより興味を引かれたのは、例によって死んだような「銀座商店街」のアーケード入口だ。上の写真ではわかりにくいが、ゲート右側には縦に「マツバ煉炭」、左側には「マツバプロパン」と書かれ、ゲート上のひし形の中には煉炭のマークが描かれている。 見るからに、余力ゼロ。もはやこの商店街はこの「煉炭」ゲートと心中するしかないのか・・・。 だが夢のブライダル都市は、そんなことにはおかまいなしだ。 十輪寺から南東に500メートルほどのところに、かのユーメーな「たかぁさごぉやぁ〜♪」の発祥の地、高砂神社がある。松の木信仰のメッカだけあって、境内にはクロマツをはじめいろんな木が生えている。 ![]() (左)高砂神社正面 (中)枯れた3代目「相生の松」を建物内で保存 (右)現在の「5代目相生の松」 まあ早い話が、昔のエライお人がここを通りかかったときに1本の根から2本の幹が左右に伸びているのを見て「夫婦かくあるべし」とかなんとかおっしゃって以来、この霊松の前で結婚式を行なうようになり、それが「たかぁさごぉやぁ〜♪」の起源なんだそうだ。 写真右端の「5代目相生松」はアカマツとクロマツが寄り添って生えているのだが、これは明らかにわざとこのように植えたんだろう。ブライダル都市は意外とあざといまねをする。 さてと。けっこう歩き回ったので、銭湯だ。高砂町には4軒あり、歩き回るうちに全部の前を通った。古い街並みをめぐっていると必然的に銭湯めぐりも同時にできてしまうことが多い。 1軒は休みだったが、どれも典型的な地方の鄙びた銭湯。そのうち、どっしりしたレンガ煙突のある「梅ヶ枝湯」に入った。外観は殺風景だが、脱衣場は胸がキュンとなるような郷愁系だった。梅ヶ枝湯の詳細はこちら。 ![]() 梅ヶ枝湯の背面。重厚なレンガ煙突、マキ沸かし。そんなブライダル都市の今日この頃 浴槽では、イレズミオヤジが一人で鼻歌を歌っていた。「見馴れん顔やなあ」と言う彼に、高砂の昨今およびアスファルト廃材の処分業について教えてもらっていると、別のオヤジが入ってきた。そのオヤジは床に座り込むと、おもむろに自分の左足を取り外した。膝から下は義足なのだった。 ブライダル都市の銭湯は、客層もなかなか濃い。 湯上がりは、ススキの揺れる加古川の堤防でちょっと夕涼み。でも堤防上は道路で車が多かった。 (左)加古川の河口、対岸は加古川市そのあと近くの「船頭町」の地味な街角にある「文化屋飲食店」という飲み屋へ。店内の雰囲気も、メニューも、スタッフも、BGMも、全部若向きのちょっとおしゃれな店なのだが、客は近所の50代カップルや70代のハゲオヤジだったりする。まあこの場所じゃそうだろうな。 しかし、若者がこういう場所で店を開いて老人をもてなし、老人らの溜め込んだ貯金を回収し社会に還元させるというのは、経済合理性があるのではないか。少なくとも、「少ない若者が多くの老人を支えなければ・・・」なんていう年金のクラ〜イ話なんかよりは、高齢化社会に向けてよっぽど期待の持てる話のような気がする。 そのようなことを考えながら、若いカップルを一組たりとも見ないまま帰路に着いた夢のブライダル都市・高砂の旅であった。 おしまい。(久しぶりに万歩計を着けた。13174歩=約9.2km) 【ついでに】高砂市にある謎の古代遺跡・石の宝殿のレポートはこちら |
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