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大和三山を歩く



(奈良県橿原市)
(2004年4月10日)

耳成山へ

 こう見えても僕は10代後半のころ山歩きが趣味だった。もちろん当時は若者らしく高い山を目指しており、大和三山なんか馬鹿にして登ろうとも思わなかった。ところがジジイになって体力が低下するとともに山の標高も低下し、最近はすっかり低山マニアになりつつある。
 それも街のすぐそばの低山専門。下山して即ビールと銭湯が待っているからな。

 今回は「JRおでかけパス」を利用した。近畿2府4県の県庁所在地を結ぶ路線&その周辺路線を1日乗り放題で2000円というオトクな切符だ。
 朝8時前に出発し、奈良を経由して10時前に畝傍駅(橿原市)到着。風情満点の木造無人駅。
 駅を出るといきなり「奈良やのぉ〜」とためいきが出るようなじじむさい街並みだ。このあたりは奈良町のように観光地化されていないが、イニシエ度では負けていない。

   橿原市八木町の街並み

 路地を30分ほど歩いて耳成山(みみなしやま、139.7m)のふもとに到着。登山道を5分も登ると八合目の山口神社に着く。あまりのぽかぽか陽気に汗が流れて一休み。手を合わせて「うまいビールが飲めますように」と願をかけていると、
 「にいちゃん、よう拝んどいてや」とそこにいた地元の婆さんが声をかけてくる。
 「これ、なんの神さん?」と聞くと、
 「そらあんた、日本で最初の神さんや」とのこと。立て札によるとタカミムスビノカミのようだ。
 「ここ、自殺がようおまんのや。8年ほど前にもそこの木で首吊りがおましたんや。大阪でようけ借金つくってたらしいですけどな。そやけどこんなとこまで来て死なれたら、地元のもんはかなんねや」
 婆さんがだんだん調子に乗って止まらなくなりそうだったので適当に打ち切り、そこから1分ほどの頂上へ。木立に囲まれて展望なし。

  
 (左)耳成山登山道  (右)「日本で最初の神さん」を祭る耳成山口神社

  南面の古池から見た耳成山バーガー

天香久山へ

 下山して南へ。ひなびた田舎集落と田んぼのあぜ道を歩き、醍醐池のほとりを通って藤原宮跡へ。持統天皇が作った日本で最初の長安型の都で、南北1kmの範囲に内裏・大極殿・朱雀門などを備えたが、わずか16年後に平城京に取って代わられた。今はなんもない、ただの原っぱ。
 ここは大和三山に囲まれた1辺約4kmの三角形のちょうど中心点にあたり、三山がよく見える。
 それにしても、のどかじゃわい。

  
 (左)遮断機・警報機なき踏み切り。懐かしい  (右)藤原京大極殿跡

  天香久山を望む。「奈良〜」な風景

 田んぼを横切って東へ。レンゲ・タンポポ・キンポウゲ・スミレなどが満開。ヒバリをはじめ、あまり見たことのない鳥がそこらじゅうでさかんにさえずっている。むぉ〜んと春の匂いが満ち溢れているよおっかさん。
 またもや細い路地のひしめく渋い集落を抜け、テキトーに畑の畦道をウネウネ歩いてたら、耳成山から小1時間で天香久山(あまのかぐやま)登山口の天香山神社に到着。百人一首のおかげで三山のうちでは最も有名だが、最も山容のはっきりしない、ぼんやりした山だ。

   
 (左)香久山に向かう途中、高殿町の街並み  (中)天香山神社  (右)香久山登山道

 10分たらずの登りで山頂着。152.4m。祠があり、これから向かうこんもりした畝傍山(うねびやま)が西に見える。
 下りは南側へ。かわいらしい天岩戸神社を過ぎると、田んぼの中にぽつんと食堂あり。ちょうど昼か。さっそくビールを飲み、ブタキムチチャーハンを食う。クィ〜、汗かいて歩いたあとのビールはしみるのぉ。

  
 (左)天岩戸神社。かぐや姫でも出てきそう  (右)天香久山を振り返る。南西からはこんな形

  本薬師寺跡の幻想的な桜吹雪

畝傍山へ

 おっと、つい飲んでしまったが、もう1つ登るんだった。
 腹もふくれて、昼下がりの大和路をのんびり西へ。本薬師寺跡を過ぎ、畝傍御陵前駅をくぐって橿原公苑へ。橿原神宮や神武天皇陵などが広大な森の中にあり、畝傍山もこの中に含まれる。
 大和三山のうち畝傍山だけが火山だ。そのため登山道も溶岩のゴツゴツで、ほかの2つとは異なってけっこう険しい。いちばん高いし(といっても199.2m)。
 20分ほど汗をかいて山頂着。木立の合間から、西と北が見える。

   
 (左)トロイデ型(鐘状)火山の畝傍山  (中)登山道は岩だらけ  (右)山頂から望む葛城山と金剛山

 さてと。三山は制覇した。しかし3つ合わせても491.3m、やっと六甲山の半分だなワハハ〜。
 橿原公苑入口に戻り、北へ歩いて今井町を通る。ここは江戸時代の環濠集落がそのまま残る古い町だが、2度ほど来たことがあるので今回はパスし、出発地点の畝傍駅へ戻る。
 もう足もくたびれたしそろそろ風呂でじゅわ〜っと行きたいねぇ。でもまだ2時半か。近鉄の駅近くに畝傍温泉という激渋銭湯があったが、開店は4時半と書いてある。

  開店前の畝傍温泉。は、はいりたいよ〜!

 「JRおでかけパス」では奈良で一番遠くへ行けるのは五條となっているので、このさいJR和歌山線に乗って行ってみた。そしたらなんとまあアンタ、激感動のすばらしい銭湯に出会うことができたのよ。

  (五條のあとさらに歩いた大和高田編はこちら

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