・・・★  勝村久司  ★・・・

第10回 イリジウムに覆われた星

 携帯電話・PHSの普及がめざましく、国内では4200万台を超えたといいます。
 僕はこの夏、携帯の2回目の機種替えをしましたが、実はその際「家族で持てば基本料金・通話料共に半額」という宣伝に乗せられて、妻もおばあちゃんも同じ機種を購入し、普及に大きく貢献しました。

 この機種はM電器の新製品だったのですが、当時、他社よりも軽量でかつ電池持続時間が長かったためか、電話会社の別なく、同じ機種を持っている人を相当見かけました。
 その機種には呼び出し音にいくつかメロディーが登録されていて、我が家では、3台の電話機の呼び出しを区別するために、子どもと相談の結果、僕が「ドラエモン」、妻が「太陽に吠えろ」、おばあちゃんが「となりのトトロ」のテーマソングに設定していました。
 ところが、最近女子高生にも大人気というドラエモンが失敗でした。
 ある飲み会では、8人中3人がドラエモンだったし、卒業生らの同窓会での隣の席も、家族でファミレスにいったときの横のボックスのお父さんも、みんな全く同じドラエモンの呼び出し音で、そのつど慌ててしまいました。
 そんなわけで他のメロディを探していたら、僕の好きだった懐かしいアニメ「宇宙戦艦ヤマト」があって、今はこれにしています。

 ヤマトを描いた同じ松本零士の作品に「銀河鉄道999」があります。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をモチーフにした感じですが、4年前の夏、これのパロディのような事件が起こりました。

 シューメーカー夫妻とレビー氏がほぼ同時に発見した9個目の彗星なので「シューメーカー・レビー第9彗星」と名付けられ、略して「SL9」と呼ばれていた彗星の話です。

 これがある時、木星に近づき過ぎたためにその潮汐力によって粉々に破壊され、破片がまるで汽車(SL)のように一列に並んで飛び続けました。銀河鉄道999みたいになったSL9は、木星を何周か回った後、ついに、先頭から順に木星表面に衝突していったのです。

 地球でも少なくとも約6500万年前に、同じような彗星(または小惑星)の衝突事件が起こったとされています。当時の地層を調べると、地球上にはあまり存在しない「イリジウム」を多量に含んだ層が世界中を覆っているからです。
 この衝突で、恐竜やアンモナイトなど当時栄えていた様々な生物が滅亡し、中生代が終わりました。

 今年11月から、ヒマラヤでも使えるという衛星携帯電話サービスが始まりました。その名前がイリジウム。イリジウムは原子番号77の元素名で、当初77個の衛星を使う予定(実際は66個)だったからそう名付けられたということですが、「地球を覆う」の洒落もあるでしょう。人工衛星(ロケットの破片等も含む)も、今や1万個近くが地球の周りを覆うように回っています。

 最近夕方の南天に一際明るく輝いているのが、太陽系最大のガス惑星「木星」です。4年前のSL9の大きな衝突痕は望遠鏡でももうほとんど見えません。


(月刊いのちジャーナル1999.1月号より)
「星のいのちの詩」目次Webいのジャホーム