
・・・★ 勝村久司 ★・・・
| 第11回 ウルトラマンの故郷 |
朝、あわてていると、 「ウルトラマン80(エイティ)の『やまと先生』みたいになるで」 と5才の息子に言われます。 ウルトラマン80は、普段は学校の先生をしている主人公がウルトラマンになるのですが、忙しいので、いつも遅刻して生徒に笑われているという設定なのです。 3年前の夏頃から、再び(か何度目なのかよくわかりませんが)ウルトラマンブームです。 息子は、その頃始まったテレビ番組『ウルトラマン「ティガ」』に魅せられて以来、その後の新作「ダイナ」「ガイア」はもちろんのこと、ビデオ屋さんにも通い、過去の数あるウルトラマンシリーズもほぼ全て見てしまいました。 ところで、ウルトラ戦士たちの故郷は「M78星雲」と設定されています。 「M」は「メシエカタログ」の略です。メシエは、新彗星の発見に没頭していた18世紀の天文学者です。 彗星はボヤーっと光りながらゆっくり動いていますが、彗星以外にも星雲や星団、遠くの銀河などのボヤーっと光る天体があります。彼と助手は、彗星と紛らわしいこれらの動かない天体110個を星図の上に書き、カタログにしました。 その78番がM78星雲です。 「星雲のように見えても、実は遠くの銀河で、そこには地球のような星があるかも知れない」 と考えられるものも実際ありますが、残念ながらこのM78星雲は、星間ガスが近くの明るい星に照らされて光っているだけの、まさにただの雲です。 ウルトラマンの故郷には、別の番号のメシエ天体を選ぶべきだったんですね。 今、ベストセラーになっている「空想科学大戦」や「空想非科学大全」の著者は私と同じ年です。 ウルトラセブンは相手が小さいときは自分も小さくなって戦う、等、ヒーローの法則を語るぐらいならいいのですが、超音速で飛ぶヒーローは衝撃波で首がちぎれてしまうはずだ、とか、巨大な怪獣は自らの体重でつぶれてしまうはず、と、夢を壊すようなことを書いてうけているようです。 私が「M78星雲には星がない」と言うと、息子は立腹します。 科学による未知なるものの解明が、ときに、夢を壊していく行為のように感じるのかも知れません。 そこで、「メシエカタログに記された110個の天体のうち、5個が現在、確認できない」というエピソードを紹介します。 メシエが、彗星観測の邪魔だと思って記した天体が、実はゆっくり動いていた彗星そのものだったのではないか、というわけです。 「自分が探し求めていた人は、実は目の前にいる人だった」 なんていうのは、恋の話なんかでもよくあるパターンですよね。未知なるものの限界を知って、初めて本当の夢を見つけられるのかも知れません。 M78星雲は、寒い冬の夜空に堂々と立つ勇者オリオンのベルト(三ツ星)の左上あたりにあります。 息子が、ウルトラマンでテレビ画面ばかりを見過ぎないように、 「M78星雲を教えてあげよう」 と誘い出し、少し寒さに肩をすぼめながら、まずはオリオン座を教えている今日この頃です。 (月刊いのちジャーナル1999年2月号より) |
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