・・・★  勝村久司  ★・・・

第12回 太陽系の果て

 昨年の高校の文化祭で、天文同好会が「500億分の1の太陽系を歩いてみませんか」という展示をしました。
 高校の4階廊下は東西にまっすぐ約120mもの長さがあります。太陽と冥王星の平均距離である59億kmは、500億分の1にすると118mになるのです。

 まず、スタート地点の廊下の端っこに書いた太陽の大きさですが、500億分の1にすると、たったの2.78cmです。500円玉程度の大きさの星が100m以上の彼方まで引力をおよぼしているなんて、不思議な感じです。
 そこから歩き始めて、約3mでたった4分の1mmの地球があり、約15m進んだところに2.9mmの太陽系最大の惑星、木星があります。土星までは約30m、海王星までは約90mになります。
 ほとんど詐欺のような展示で、長ーい廊下の所々に小さな点が打ってあるだけ。もちろん、ポイント毎に簡単な解説はありますが、歩いてみた人にとっては、とても退屈なほとんど何もない長い廊下なのでした。

 太陽に最も近い恒星はケンタウルス座α星で、太陽から約4.3光年の距離にあります。これを500億分の1にしたら、約800km。次に500円玉級の星に出会うには、廊下の先を大阪から名古屋・東京を越えて、もっともっと東北まで延ばしていかないと、この展示には収まりません。
 100mちょっとの冥王星から、桁違いの800km先の次の太陽までの間の宇宙って、どうなってるんでしょう。半分の400kmまでが、太陽系なのでしょうか。
 この間には、「オールトの雲」と呼ばれる彗星の巣がある、等といわれていますがよくわかっていません。

 さて、平均距離では最も遠くになる冥王星ですが、軌道がかなり楕円であるために、近年は、海王星の軌道より内側に入り込み、実際は海王星よりも太陽に近づいている、というのは有名な話でした。太陽から45億kmのところをほぼ円軌道でまわる海王星に対して、きつい楕円軌道でまわる冥王星は、44億4000万km(近日点)から77億9000万km(遠日点)まで、距離が変化します。
 近日点に来たのが1989年。その前後の1979年2月8日から1999年2月9日までの20年間は、冥王星が海王星よりも内側に来ていました。しかし、それも今月で終わり、これからは名実共に冥王星が最果ての惑星になります。

 太陽のまわりを248年かけて一周する冥王星は、1930年に発見されてからまだ3分の1もまわっていません。大望遠鏡でも見つけるのが難しく、宇宙に浮かぶハッブル望遠鏡でさえ表面の様子をつかめないという、月よりも小さな冥王星。
 たまたま近日点付近に来ていたから発見されたものの、これからはいよいよ見えなくなっていくでしょう。

 しかし、新たな天体が発見されるかも知れません。どうやらそのあたりには「カイパーベルト」と呼ばれる小惑星帯のようなものがあって、冥王星もその一つじゃないかと言われ始めています。

 「500億分の1の太陽系を歩いてみませんか」は、文化祭の中でやはり人気がありませんでした。都会はごった返していますが、太陽系にはほとんど何もないんです。


(月刊いのちジャーナル1999年3月号より)
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