・・・★  勝村久司  ★・・・

第14回 宵の明星

 真夜中には絶対見ることのできない星が3つあります。
 1つは太陽、そしてあとの2つは、水星と金星です。

 この2つは地球よりも内側(太陽側)を回っている惑星ですから、地球から見ると、常に太陽のそばにあり、太陽と行動を共にしているのです。

 それでも、惑星は動いていますので、太陽の右へ左へと少しずつ位置を変えています。ですから、太陽が沈んだ直後(夕方)や、太陽が昇る直前(夜明け前)に少しの間だけ見ることができます。
 ただし水星は、太陽からほとんど離れず、地球から遠く、なおかつ小さいので肉眼で見つけるのはやや難しいです。それに比べ金星のほうは、太陽からずれる幅も大きく、地球に近く、太陽光を反射する割合も大きいので、見えている間はとても明るく輝いています。
 そんなわけで、金星が夕方に見えるときは「宵の明星」、夜明け前に見える時は「明けの明星」と親しまれているのです。

 さすが「明星」「ヴィーナス」などと呼ばれるだけあって、それはそれは明るいのです。最も明るく見える頃はマイナス4等級を超えます。
 俗に明るい星とされる1等星よりも5等級以上明るいことになり、「5等級違えば明るさ100倍」という法則がありますので、まさに一等星の100倍以上明るいことになります。
 あまりに明るいので星ではないと思う。だけど、動かないので飛行機でもない。とするとUFOか。
 なんて具合で、宵の明星の頃にはかつて新聞に大きく「UFO騒動!市役所や新聞社などに問い合わせ多数…実は金星です」と見出しが載ったこともあります。

 金星が見えるのは日没直後の西天や夜明け前の東天、即ちトワイライトの頃なので背景が真っ暗ではないのですが、びくともせずに光り輝いています。宵の明星の頃には、ほぼ間違いなく夕日に近いこの星が一番星です。
 時々、子供会などに呼ばれ、望遠鏡を使って天体観測会をすることがありますが、それが宵の明星が出ている時期なら、準備をしながら一番星探し大会をします。
 「一番星を見つけよう。僕は大人だから、まだ夕焼けが残る西の空半分から一番星を探してみるよ。みんなは子供だから、ずぶん暗くなってきている東側の空半分から探してごらん。それで、どちらが先に一番星を見つけるか勝負だ」
 なんて言って始めて「あっ、見つけた」なんて叫ぶのです。
 「どれ、どれ」「あれ、あれ」ということになって、
 「じゃあ、あの星を望遠鏡で見てみよう」
 「うわっ、三日月形だ」
 と展開していくうちに日が暮れていくのです。

 金星は、見えない期間、夕方に見える期間、見えない期間、夜明け前に見える期間、というのを1年半ほどの周期で繰り返しています。
 今年3月頃から目立ち始めた宵の明星は、7月初め頃まで夕方の西の空に輝いています。
 また、今回は同じ時期に東の空で赤い惑星「火星」も目立っています。
 どちらも、簡単に見つけられます。
 地球は、この2つの惑星の軌道の間を回っています。

 そう思って見上げれば、地球もまた惑星であることを改めて実感できるかもしれません。


(月刊いのちジャーナル1999年5月号より)
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