・・・★  勝村久司  ★・・・

第2回 みんな星の子ども

 「太陽のような恒星が1千億個集まって銀河系をつくり、宇宙にはそんな銀河がさらに1千億個あります。そして宇宙そのものが、私たちの知り得ない世界で無数にあると考えられています」

 授業で高校生にこんな話をすると、「実感できない」ならまだいいですが、下手に実感すると星の多さや宇宙の広さに「天文学はなんか気持ち悪い」と言われてしまいます。
 そんなとき「地球に60億の人間がいて、 1人の人間は60兆個の細胞でできていて、さらに 1つの細胞は無数の原子でできている、というのも相当なものでしょう」なんて言ってますます気持ち悪くさせてしまいます。

 実際、宇宙の果てや宇宙の始まり等の解明は、素粒子を研究する物理学者たちによってなされてきました。マクロの究極もミクロの究極も、宇宙の本質へ向かう同じ道のりのようです。

 さて、そんなわけで宇宙の中に存在する私たちの身体も、結局のところ、たった100種類あまりの原子だけでつくられています。
 これらの原子をどんなふうに並べて組み合わせるかというプログラムの情報、つまりソフトウエアが進化の歴史の中で伝えられてきた遺伝であり、ハードウエアである身体の材料は、そのときそばにあった原子を、それぞれの人間が生きている間ちょっと拝借しているだけです。
 「すいへーりーべ、ぼくのふね……」なんて覚えた原子たちが人間をつくっているのですが、もともと宇宙には、最もシンプルな原子、つまり1つの陽子の周りを1つの電子が回っているだけの、だからもちろん原子番号も1番の「水素原子」ぐらいしかなかったということです。
 それでは一体、どうやって炭素や酸素や窒素やカルシウムや鉄やなんやかんやができたのでしょう。

 答えは「核融合反応」です。
 核融合反応は、少なくとも1千万度を超えないとできません。宇宙の中でそんな場所があるでしょうか。
 あります。大きな星の中心部です。大きなおしくらまんじゅうでは真ん中の人は暑苦しいですよね。惑星で最も大きい木星でも中心部は1千万度に達しませんでしたが、より大きな太陽は1千万度を超えました。太陽の中心部では今、水素をヘリウムにする核融合反応がすすめられています。

 私たちの身体をつくる水素以外の原子は一体どの星がつくったのでしょう。
 唯一考えられるのは、この太陽系ができる前にこのあたりにあった大きな星ではないかということです。その星は中心部でどんどんいろんな原子をつくり、最後に爆発してそれらを宇宙空間にまき散らしました。そしてそのチリやガスが、長い年月の間に重力が重力を呼んで再び集まり、今の太陽系ができたのです。
 だから地球には最初からいろんな原子があり、人間の材料にもなってくれてるわけです。

 私たちの身体をつくる原子たちは、大昔、星の中心部にいました。だから「みーんな星の子ども」っていうわけです。


(月刊いのちジャーナル1998年3月号より)
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