・・・★  勝村久司  ★・・・

第4回 三つ子の魂

 もう何年も前のことですが、ある日、姉から電話がかかってきました。
「今日、家に帰る途中、昌宏が突然『お母さん、なんでお月さんの形は毎日変わるの?』って聞いてんよ。すごいやろ、まだ3才やで」

 昌宏というのは、私の甥です。私の姉は、幼い我が子が時々月を見てはいろいろなことを考えていた、ということに気づいて感動している様子です。ところが姉は、次のように続けました。
「それでな、なんで月の形って毎日変わるんやったっけ?」
 我が子がとてもよい質問をした、ということはわかっても、その答えがわからなかったのでした。

 当然のことですが、太陽系では太陽だけが光を放っています。ですから、もし太陽に電源スイッチがあって、それをオフにしちゃうと、もうこの辺りの宇宙は完全に真っ暗闇です。
 唯一、光を放つ太陽を中心にして、光と影の世界が広がっている。それが太陽系の姿です。つまり、太陽系にある全ての丸い天体は、太陽のほうを向いている半分だけが照らされ、裏側が真っ暗なのです。
 だから地球も常に、半分が照らされ半分が暗い、半月状態です。それぞれが昼側と夜側になります。

 同じように月も常に半月状態です。だけど、月は地球の周りを回っているので、地球からは半月状態の月をいろいろな角度から見ることになるわけです。

「ゴムまりかボールを半分だけマジックで真っ黒に塗って、いろんな方向から見せてあげて」
 と私は姉に言いました。半分だけ光っているボールも正面から見れば全部光って見えるし(満月)、裏側から見れば何にも見えない(新月)。そして、ある角度から見れば三日月のようにも見えるのです。

 こんなことがあって、私は自分の子ども時代を思い出しました。
 私は小学校低学年の頃、母親から「虹は必ず池から池にかかっている」と教えられ、虹が出たら必ず私は、池から虹が噴出している現場を見たくて自転車をこいだものでした。もちろん、いっこうに虹のたもとに近づけないまま、いつもそっと虹は消えてしまうのです。
 他にも、「大熊座の北斗七星は夏になると小さくなって小熊座になる」とか、「毎月3日は三日月が出ている」とか「お盆の頃は流れ星が多い(これだけは正解でした)」とか。

 大人の言うことに間違いはない、と思っていた年頃だったので、不可思議なことを言われるほど神秘的に感じたのか、いまだに当時の母親の言葉をよく覚えているのです。
 三つ子の魂百まで、ということで、親は気をつけて話をしなければいけませんが、こんな母親に育てられた私が高校で天文学を教えているのですからあまり気にしなくてもいいのかも知れません。
 子供たちには、心に夢やメルヘンを持ったまま、科学的思考力を身につけ真実と出会っていってほしいと思います。

 それにしても、私の母親は、本気で虹の話を信じていました。母親が子供の頃、親からどんな絵本を読んでもらったのだろう、なんて考えると、とても愉快です。


(月刊いのちジャーナル1998年6月号より)
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