・・・★  勝村久司  ★・・・

第5回 梅雨の候

  「子どもの頃、初めて地球儀を買ってもらった時に、地球が少し傾いているのを見て、『地球さん、どうして頬杖をつくように首をかしげているの? 何か悩み事があるのなら私に話してごらんなさい』なんて、おませなことを言ってた人はいませんか。
 また、地球儀の軸が斜めになっているのを見て、壊れてるんじゃないかと思い、強引に真っすぐに直そうとした人はいませんか」

 高校の授業でそう言って、太陽に見立てた教卓の周りを少し首をかしげながら一周します。

 「地球はこんなふうに、『僕ってなんか同じ所ばっかりくるくる回っているんじゃないのかな』『こんなことばかりしていていいのかなあ。僕の人生って、いったい何なんだろう』なんて考えながら、少し首をかしげて太陽の周りを回っているんです」

 地球が太陽を周る公転面に対して、地球の自転軸は直角ではなく少し傾いています。そのために地球を人間の頭に例えると、頭のてっぺんのほうが太陽のほうに向いて強く照らされるときと、顎(あご)のほうが太陽のほうに向くときがあります。
 前者の場合は北半球が夏、南半球が冬。後者は北半球が冬、南半球が夏になります。地球の傾きが、北半球と南半球に日照時間と太陽高度の差をもたらし、四季の変化をつくっています。

 今年は6月21日が、北半球が太陽にほうに最も傾く夏至の日です。東京での日の出は4時25分、日の入りは19時00分。昼が14時間35分、夜は9時間25分しかありません。
 逆に半年後の12月22日の冬至の日は、日の出が6時47分、日の入りが16時32分。昼が9時間45分、夜は14時間15分もあります。

 日没後も、すぐに空が暗くなるわけではないですから、6月は天体観測にはあまり適さないと言えるでしょう。まして梅雨の頃ですから、お天気もよくありません。
 暖かい気団と冷たい気団が日本上空でしのぎを削り、境目の前線で雲ができる梅雨。北半球は夏至の頃に太陽放射を最も多く受けますが、それらの熱が蓄えられた暖かい気団が日本を覆って実際に夏が来るのは、夏至の日から梅雨を経た1ヶ月ほど後になります。

 6月はいつも、星のかわりにホタルを見に行きます。ちょっと田舎の小さな川沿いに行けば、まだまだホタルは健在です。私の故郷の三重県名張市でも、数年前に農薬を使う量が減ってから、多くのホタルが田んぼの土手で復活し、点滅するようになりました。
 私はいつもホタルの光の舞いに、毎年最も多く流れ星が出現する8月のペルセウス座流星群に思いを巡らせたりもしています。

 少し首をかしげ色々と思い巡らせながらメリーゴーランドのように、地球は私たちに四季と風物詩をプレゼントしてくれています。陽気になったりじめじめしたり、活動的になったりおセンチになったり。
 そんな一見頼りなげな地球ですが、決してバランスを崩してしまうことなく勤勉に旅を繰り返す姿に、私は理想の父親像を感じちゃったりもしているのです。


(月刊いのちジャーナル1998年7月号より)
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