・・・★  勝村久司  ★・・・

第7回 月のない夜には

 「めっちゃすごかったでー」というような、満点の星空を経験したことはありませんか。

 いろいろ聞いてみると、若い人もそれぞれ人生の中で最高の星空に出くわした思い出を一つ二つ持っているようです。また、年輩の方たちは「昔はこの辺りでも天の川がきれいに見えていたんだけど」と教えてくれます。

 「最高の星空」に出くわす条件は何でしょう。

 それは、邪魔する雲や光がないことです。
 雲や光にはそれぞれ人工的なものと自然のものがあります。

 人工的なものは、スモッグと都会の光です。これらが「昔はこの辺りでも…」と言わせるのです。特に、笠のない街灯やネオン、広告のためのサーチライトなど、地上ではなく空を照らす無駄な光が星空を消してしまっている責任は大きいようです。
 自然のものでは、雲と月明かりです。お天気が悪いと星空が見えないのは当たり前ですが、月明かりがその大きな要因になっていることは意外と気づかれていません。

 「よく船で旅行するけど、あの日だけは本当に満点の星空だった」
 「何度か山に登っているけど、あんなにすばらしい天の川は初めてだ」
 などの話をよく聞きますが、都会のスモッグや光害もなく空も晴れているのに、いったい何がいつもと違ったのでしょう。
 それは、たまたまその夜に「月がなかった」ということなのです。

 太陽が昼間、多くの星を消してしまうように、満月も淡い星々を消してしまいます。しかも、満月はほぼ一晩中出ていますが、新月(月がまったく見えない日)近くの月は、形が小さいうえ、出ている時間も短いので、星空の観測には大きな違いになります。

 さらに、思い出に残る星空には、「雨上がり」という要因もあるでしょう。雨は空気中のちりやほこりを一緒に流してくれますから、その後の「雲の切れ間」はとても澄んでいます。
 実際私が最高の星空と出会ったときは、いずれも、新月はもちろん、雨上がりの夜でした。

 保育園に通う息子は「土曜日」と聞くだけで「ウルトラマンダイナが放送される日」ということでわくわくしますが、私は今も「月がない」とか「雨上がり」などの言葉を聞くと、心の奥底がぴりっと興奮するのを感じます。
 でも、ふだんは都会の光害などで天の川などは見られません。そのかわり、旅行の日程を組む時にはできるだけ新月の頃を選んでいます。

 ライトアップされた建造物や花火大会もきれいですが、夏は、天の川が素晴らしい季節です。夏休みには、海や山へ出かけることが多いですし、都会の子はお盆で田舎に帰ったりもしますので、最高の星空に出会うチャンスです。
 だから1学期最後の授業では、星図に惑星を書き込んで、ハサミで切り取り、夏休みのあいだ持ち歩く用の簡易星座早見盤を作ります。

 次は8月22日が新月です。
 もし天の川くっきりの満天の星空に出会えたら、地球の表面にへばりつくように、ぜひ寝転がってください。
 きっと流れ星も横切り、この惑星が宇宙を旅してといることを実感できるはずです。


(月刊いのちジャーナル1998.9月号より)
「星のいのちの詩」目次Webいのジャホーム