メ シ つ き 文 化 遺 産 | ||
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愛知県の渋~い大衆食堂 | ||
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互楽亭
駅出口から30秒。大須観音の表参道との合流点の三角敷地にある。 ぱっと見、しゃれた感じもするが、外壁に取り付けられた大きな電照看板と、入口横に置かれた箱型電照看板が大衆食堂の渋い味わいを醸している。 表にすべてのメニューが貼り出されている。品数豊富。麺類や丼物は微妙に高めのものもあるが、洋食メニューの充実が目を引く。一品ものも数多い。 しかし何と言ってもこの店はこれだ。 ![]() この近くに大須スケートリンクがあり、中学校卒業までそこへ練習に通っていた浅田真央ちゃんが、この店のチャーハンをいたく気に入っていたということだ。 当時すでに天才少女としてフィギュア界では有名だったらしい。 中に入ると、三角形の敷地に合わせて、底辺部分に厨房、先の部分に客席が配置されている。 客席はテーブル7つくらいとカウンター4席ほど。なかなかエエ感じに年季の入った空間だ。 ![]() 60歳くらいのおやじさんと、その娘っぽいおねえさんとでやっているようだ。 おねえさんが注文を聞きに来る。名古屋らしく味噌カツ定食にしとこ。それとビール。 ![]() うん、カツにこの甘い八丁味噌ダレをかけたらこの味よね、の味だ。 食いながらおやじさんに聞くと、真央ちゃんは小4から中学を出るまで週に2~3回ここへ通っていたらしい。 はじめはお母さんと姉と3人で来て、そのうち一人でチャーハンを食べに来るようになったそうだ。 でも姉の舞ちゃんは一人で来たことはないという。 渋い食堂で一人チャーハンを食べる真央ちゃんは、なんとなく想像できる。彼女はきっとそういう子だろう。 しかしそのとき、一緒にスケートをしていたはずの姉はどこで何を食べていたのだろうか。 そんなことを考えながら焼酎を追加する俺、ほんまどーでもええオッサン。 たまたまだろうけど、この日やって来た数人の客は、スケートリンクに立たせたら氷が割れそうな巨体のおじさんが多かった。 ちなみに、ここから東に5分ほど離れた門前町通りにも「互楽亭」がある。名前が同じということは経営も同じなのかもしれないが、そちらは見た目もっと垢ぬけた感じで、真央ちゃんの互楽亭よりも値段が高い。(2016年7月) |
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三河屋 ★
栄生駅から徒歩5~6分。角地にスックと立っているうえ、「きしめん」の文字の踊り具合が味わい深く、絵になる外観だ。 暖簾をくぐって中に入るや、鈴虫のいい音色に迎えられる。お客さんが持ってきたらしい。 ![]() ![]() (左)見ただけでうまいと確信 (右)落ち着いた風情 テーブル3つ4つに狭い小上がり1卓の、こぢんまりとした店。昭和8年ころの創業だそうだ。 テーブルメニューを見ると、麺類はうどん・きしめん450円~、丼物600円~、その他季節もの。腹が減ってもうどれも異様にうまそうに感じる。 丼物も麺類も捨て難く、壁に貼ってある「みそかつ丼セット、ミニうどんまたはきしめんつき700円」を注文する。 ![]() ![]() (左)全部食いたい (右)みそかつ丼セット700円 奥で息子らしき人が調理していて、おだやかなおばあちゃんが運んでくる。 うまい! みそかつもきしめんも。たまらん。あーガツガツ、ズルズル、ガツガツ。あっという間に食うてもーたわい。 小さくて、非常に落ち着く店だった。文句なしによい。 (2015年8月) |
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山田屋 ★
市役所駅から市役所前を通り過ぎ、右へ曲がってちょっと行くと、ウナギ屋さんの手前にめっちゃエエ感じの食堂がある。看板の「んどう」の文字が美味しそう。 店先におやじさんがいて、小さな梯子に干してあるひやむぎを取り込んでいる。こんなふうに麺を干しているのは珍しいな。 中に入ると、外観以上にエエ感じやないのーっ。チープなテーブル7つ8つに赤い椅子。これよこれ。 ![]() ![]() (左)年季の入り倒した食器棚が素晴らしい (右)奥に座敷もある さっきのおやじさんの息子さんと思しき40歳くらいの男性は腰低く感じよし。聞けば創業昭和5年。空襲で焼けて26年に再建して、そのままの姿だと言う。 メニューを見ると、麺類は種類が多いが、うどん・そば・きし、それぞれ小盛りからある。うどん小盛り310円、一人前460円。きしめん、そばは20~30円ずつ高い。松月(のりの上に生卵を乗せたうどん)560円など、初めて目にするものもある。 冷たい麺類のメニューも充実している。冷たいのを名古屋では「ころ」と言う。やさしい息子さんに聞くと、「香露かけ」から来ていると教えてくださった。ころ類も、温かいのとほぼ同じ値段。 つけ麺メニューは650円以上とやや高くなる。中華そば480円。丼物は500~800円台。 息子さんによると、うどん・きしめん・ひやむぎ・中華めんは自家製で、夜はなくなることも多い。この日もうどんときしめんはすでになかった。 カレー中華630円が気になったのでそれを注文した。 中華めんはややごわっとして弛く波打ち、素朴な風合いでカレーによく合っていて、じつにウマイ。なんか新しいものと出会ったような喜びを感じる。 ![]() メニューを順番に制覇していきたい!という気持ちにさせられる店にときどき出会うが、ここはまさにそれ。しばらく名古屋に滞在して通いたいなぁ~。 (2015年8月) |
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江戸っ子食堂 ★
地下鉄高岳駅から徒歩5~6分にある、イニシエのオーラ全開な素敵食堂だ。 中はテーブル4つほどと奥のカウンター数席の、こぢんまりサイズ。年季が入って古びてはいるが、俺的にはごっつー落ち着けるエエ具合の古び方。 ![]() ![]() (左)厨房手前におかずケース (右)小さなお店 午前10時頃に訪れたら、朝7時~10時半は5種類の「朝定食」各500円がある。嬉しいねぇ~。 ![]() ![]() (左)この5種類から選びたまへ (右)納豆定食を選んだ おかずケースもある、俺がいちばん好きなパターンやわ~。みな安いし。 定食や日替わり弁当は700円均一だが、大衆食堂には珍しく、10枚6000円のお得なチケットもあるぞ! さすがは名古屋、喫茶店文化の影響を受けているのだろうか。 朝定食には豚汁がついてくるけど、これが名古屋には珍しく白味噌だ。聞けば、白味噌の汁物をほしがる人が多いのだとおっしゃる。 明るく感じのいい60代の夫婦は2代目で、創業50年になるそうだ。 「ご主人は江戸っ子なんですか?」 「いいや全然」 屋号は先代のバーサマがつけたそうだが、なぜその名かは「バーサマがチヌ前に聞くの忘れてまったでよ」とのこと。もともとバーサマはかつて八戸で同名の店をやってたらしい。 中途半端な時間だったせいで他客もなく、ええ感じでのんびり朝メシを食えてハッピーな一日が始まったのであった。近所にあれば通う。 ![]() |
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多古八 <閉店>
覚王山の駅から日泰寺に向かう参道には、いろんな店が並んでいる。その中でひときわ客の出入りが多く繁盛している古そうな食堂がある。 もう13時を過ぎているんだが…。 腹は減ってないけど、気になったので店の前をウロウロしてたら、ふいに背後から「松本さん!」と声をかけられた。なんと関西の風呂仲間ではないか。 なんちゅー偶然、これぞ店に入れとの神の思し召しに相違ない。 ![]() ![]() (左)これ気になる! (右)串かつカレーかけ、ビールのおともによろしいわー 狭い店内は客でいっぱい。テーブル5つにカウンター5~6席くらいだが、幸い奥のテーブルが一つ空いていた。 まずはビール500円。「どて」400円は売り切れだというので、串かつ1皿400円にした。すると「何をかけますか」と聞かれる。 「何がありますのん?」 「ソース、味噌、カレーの3種類です」 ソースは普通やし、味噌は名古屋の激あんまいやつだろう。串カツにカレーをかけたことないのでそれにした。 壁メニューを見ると、串かつやどて煮だけでなく、定食ものから各種単品(焼き魚350円、焼きそば500円、カレーライス500円、玉子焼き350円、野菜炒め350円、めし大中小200~300円)など意外に多い。 客席は2~3人の女性でまわしているが、「今日はすごく忙しいんです」とおっしゃる。ということはふだんはさほど混み合うわけではないのだろう。 が、たしかにこの日は客の出入りがひっきりなしだった。人気の老舗食堂なのね。今度はお客もお腹もすいてるときに、ゆっくりメシを食ってみたい。 ![]() |
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ゑび寿
最近、名古屋で宿がとれないことが多く、郊外の岩倉というところに泊まった。 宿から駅とは反対側に10分ほど歩いたところにやや古びた団地があり、そのショッピングセンターのミニアーケード下に数軒の飲食店が並んでいる。 そのうちの1軒。蒸し暑かったので、ざるきしでも食べようと思ったが、表に貼り出してある写真の五目中華そば650円のビジュアルにやられた。 ![]() ![]() (左)ひなびた飲食モール、向かいは地元スーパー (右)メニューわかりやすい 午前中で開店直後なのか他客おらず。昭和レトロムードに包まれた店内で、おやじさんがひまそうにテレビを見ている。 俺が座ると、表の戸を閉めて冷房のスイッチを入れてくれた。 テーブル5つ直列、右の壁側は棚ベンチ式になって座布団が並んでいるという珍しいパターン。テーブルにはビニールクロスがかかっている。 左側に厨房があり、その窓口の上や横にメニューが貼られている。 ![]() ![]() (左)壁側1列 (右)厨房方面 壁のメニュー短冊は品数多い。うどん・そば類400~600円、丼物や洋食ライス物600~700円台。八宝菜550円など中華メニューも少しある。定食ものは焼肉970円などやや値が張る。 俺は初志貫徹で、表のメニュー写真のビジュアルにやられた五目中華そば650円を注文した。写真の何にやられたのかというと、上から落とされた生卵のつやつやにやられたのだ。タマゴ様をあなどってはいかんことをこのお店はよくわかってらっしゃる。 ちなみに普通の中華そばは450円。 おやじさんは厨房の中に向かって「五目中華~」とコール。気づかなかったが、中におかみさんがいた。 中でおかみさんが作っているあいだじゅう、おやじさんは窓口に立って料理が出来るのを待っている。やや珍しい光景だ。 やがてできた五目中華そばをおやじさんが持ってくる。といっても振り返って二歩くらい。 やってきたよ、生卵つやつや。写真に偽りなし! ![]() 味はあっさり。豚肉と白菜の炒め物がのっていて、タマゴ様とともに食物繊維も摂取できた。 冷房が弱めのため、食ってるうちに汗だくになった。 途中で親戚みたいなのが3人くらいきて、ピーチクパーチク喋って何も食わずに帰っていった。親戚なのか常連客なのかはわからんが。 あとから入ってきた別の親戚みたいなおっちゃんは、北海道に行ってきたという。サブちゃん記念館に行ってどうだったとか言っている。 「そら日本一の歌手やからなあ」 そうか、日本一の歌手はサブちゃんだったのか。うん、それでいいと思います。 そんな話を聞きながらの朝昼兼用であった。(2016年7月) |
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やまに食堂
豊橋駅から5分も歩かないところに、昔ながらのレトロな食堂が2軒並んでいる。 手前の平和食堂がちょうど閉店時間になって暖簾を下ろされてしまったので、その横のやまに食堂へ。 パッと見、やや高級な和食処っぽくて一抹の不安が胸をよぎるが、上のほうに「とよはし名代 とん汁 めし」と大書きしてある。とん汁とめしが名物なら、そんなに高くもないだろう・・・。 ![]() ![]() (左)やまに、ってこのマーク (右)店内 入ると客でいっぱい! テーブル5つと小上がり2卓、オマケ席として壁向きに二人席ひとつ。 リニューアルされたようで小奇麗だが、昔ながらのエエ雰囲気は損なわれていない。 奥壁に設置された大きな薄型テレビにやや違和感があるが、これも毎日の常連が多い食堂では致し方ないのかも。 混み合う中、70歳くらいの店のおばちゃんがテキパキがんばって対応している。 メニューを見ると、最初に「豚汁めし500円」が書かれているから、これがやはり看板なのね。ほか定食は600円台~900円台、丼物と洋食は500~600円台、その他単品がいろいろ。餃子カツってどんなんや。 味噌カツの単品は書かれてなかったけど、してくれるとのこと。ビールを頼んだら、おばちゃんが「カツが揚がるまでつまんでて」と、のりの酢の物をサービスで出してくれた。 忙しくても客への気配りを忘れない、食堂のおばちゃん。日本の宝やね。 それにしても、のりの酢の物って初めて食ったかも。 ![]() ![]() (左)ビール大瓶500円+のりサービス (右)味噌カツ650円 味噌カツ、激ウマ。愛知だから当然甘いんだが、甘すぎない。これなら関西人にもいける。 さらに看板メニューの豚汁(単品300円)も注文した。これまためっちゃウマイ! 八丁味噌、豚、ネギが絶妙のハーモニーを奏でとるがな。 ![]() いやーコレ、繁盛すんの当然やわ。〆て1450円の幸福な晩飯であった。 (2015年4月) |
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金屋食堂 ★
豊川駅から豊川稲荷前を通り過ぎて、15分ほど歩いたあたり。交通量の多い幹線道路に面して、なにやら時代がかった食堂のシルエットが浮かび上がる。しっぶ~! ![]() ![]() (左)激渋です (右)こぢんまりスペシャル空間 中に入ると、テーブル四つだけの小さな店。古びてはいるが清潔に整えられ、使い込まれた内装が心の琴線をハジくハジく。正面の柱には「白銀連山」と、おそらくは孫の習字と思われるものが貼られている。真ん中の薄型テレビだけちょっとよけいな印象だ。 そして柔らかく感じのいい老夫婦が迎えてくれる。この時点で、まだ何も食ってないのにココロがじわ~っと満たされてゆくのがわかる。 奥壁のメニュー短冊もエエ味を出しとるで。定食は焼魚定食・トンカツ定食650円から、かなや定食1500円までいろいろ。 横の白板には「本日の焼魚はサワラ焼です」と書かれ、さらにいろんな定食が追加で書かれている。一品ものもあるようだ。 サワラの焼魚定食にした。めしは小で頼んだが、たっぷりあった。 ![]() 焼魚には玉子焼きとレンコン酢の物と大根おろしが添えられている。 あぁ、うまいねぇ。まずいわけないねぇ。赤だしもいいねぇ。 はじめおじさん客一人、あとから夫婦。 静かにめしを食っている。なんとも居心地よく、落ち着く空間だ。 会計時、おじさんは「ごはん小盛りだから」と、650円を630円にしてくれた。 腹がふくれて店を出る。なんかすごく幸せな気分。 金屋食堂で晩飯を食う生活、いいなー。 ![]() (2015年4月) |
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