ちぎれそうなところ
安乗(あのり)(三重県志摩市) 2009.3.18 
ここ数年、2〜3月には志摩でひと足早い春を味わうことにしている。
今年はどこをまわろうか、フグで有名な安乗埼灯台へでも行ってみようかな。
そう思って地図を眺めていたら・・・おや?

この形は・・・
安乗って、トンボロなんちゃう!?

 
安乗漁港とトンボロ手前の丘
 安乗は的矢湾の湾口に位置し、志摩市の中心・鵜方からバスで20分ちょっとの距離にある。
 地図を見ると、安乗埼灯台のある先端部分から神社マークのところまでが島っぽくて、その左(西)部分がトンボロ砂州のようなウエストラインのくびれを見せている。

 しかし今回のトンボロ観察の難点は、志摩地方特有の低い丘陵地だ。これは海成台地(隆起波食棚)と呼ばれる地形だが、ようするにトンボロ砂州を見下ろせるような山がないんよね。

 安乗の中心部はくびれ部分よりも西、弁天崎から2手に切れ込んだ漁港とその周辺だ。バス停や郵便局、学校などはそこにある。
 その中心部分とくびれ部分の間には標高15mくらいの丘があって、両者を隔てている。丘の上にも民家が密集しているようだ。

 今回もさんざん行きつ戻りつ歩き回ったので、そのまま書いたのではワケわからんようになる。そこで、まずはこの手前の中心部分から順に見ていくかたちでまとめることにする。

 
(左)フグを水揚げしまくっている安乗漁港   (右)そこらじゅうでヒジキが干されている

 
(左)港の近くにあった渋い建物   (右)周囲の丘はこれくらいの高さ。10mちょっとかな

 志摩の漁港はどこも明るく活気があるが、安乗は熊野灘から遠州灘一帯のトラフグが最も多く水揚げされている港で、機能的に入り込んだコンパクトな湾内はフグ漁船の出撃基地といった趣だ。
 漁港の東には急傾斜というかほとんど屏風のような角度で高台になっている。この丘が港とトンボロ砂州を隔てている。

 丘に登って港を見下ろす

 斜面につけられた狭い階段を登って丘の上に登ると、湾内が一望できた。だが丘は高さはないがけっこう複雑な起伏があって、トンボロ方面は見えない。

 下の図は、漁港(ケイ線が延びている赤丸)に立ててあった津波の避難に関する告知板の一部拡大写真だ。南北がさかさまになっている。



 色分けは標高を表している。ピンクは3m以下、オレンジは3〜5m、黄色は5〜7m、緑は7m以上。
 くびれ部分は予想通りの低地だ。トンボロ砂州と考えて間違いないだろう。
 赤丸のB付近からAへ歩いたが、まだ砂州は見えない。いったん下のオレンジ部分へ下りた。

 
(左)丘の上にはわりと立派な家が多い   (右)丘の形状は複雑だ。いったん下りる
安乗寺からの眺め
 オレンジ部分に降りるや、とたんに下町風情に包まれた。

 
(左)丘の下は濃厚な下町風情   (右)ていうか廃屋が多い

 ツタからみまくりの廃屋

 散髪屋のナナメ向かいに安乗寺の山門があり、Uターンするようなかたちで高台へ参道が続いている。さっきの地図でいうと、赤丸Aのすぐ左にある緑部分にこの寺の本堂がある。

 
(左)安乗寺の山門を入って振り返る   (右)本堂を見上げる。コンクリ造りだ

 ここで一気に東のトンボロ側の視界が開けた。地形を楽しむには高さは足りないが、手前の砂州部分にできた「トンボロの町」と、その向こうにかつて島だった部分が一望できる。
 安乗寺の端はズバーンと標高3m以下の砂州地域までのガケになっていて、この寺が本来の志摩半島の先端であったことは明白だ。


本堂横から見たトンボロ方面。中央の丘がかつて島だったと思われる部分で、神社や灯台がある

 
(左)寺の下はトンボロ砂州に向けてかなりの断崖になっている   (右)トンボロ砂州内部には畑も見える
北の浜と砂州内部
 安乗寺の参道下は、的矢湾に面する北側の浜辺のすぐ近くだ。堤防に上がって眺めてみた。

 
(左)寺のガケ下の路地   (右)北側の浜、安乗埼方面の眺め

 
(左)北岸の堤防上からみた砂州の町。中央やや上部の高台の三角屋根が安乗寺   (右)北の浜、漁港方面の眺め

 
(左)北の浜から的矢湾口を見る。黒いのはヒジキ干し   (右)津波注意の看板とヒジキ干し

 そして砂州内部の町を歩いた。
 宇久井トンボロのような集落としての美しさがあるとはいえない。家々には生垣もなく、ボロボロの廃業旅館もあったりして、ややうらぶれたムードが漂う。
 でもワカメやヒジキが洗濯物と一緒に干してあったりして、脱力系の生活感が俺には心地よい。

 
(左)砂州内には空き地もある   (右)ちょっとおもしろい建物、そしてヒジキ干し

 
(左)ワカメ干し   (右)高台の住宅地に比べてやや殺風景

 はるかぜそよそよ

 
(左)安乗埼の旧島部分に近づいてきた   (右)旧島の手前端には安乗神社がある

 トンボロ砂州が町としてのまとまりを持っている串本や宇久井と違い、安乗ではあくまで志摩半島部分に位置する漁港周辺および高台が町の中心であって、砂州部分はどちらかというと町外れ的な印象だ。

 地形のおだやかな志摩では、紀伊半島のように険しい山が海際まで迫っているわけでなし、わざわざ危険な砂州に町の中心を置く必要がないのだね。
 でも、そんなふうにツレなくされているトンボロの町もまた変態の俺にはかわいく思える。グヒヒ。
安乗神社からの眺めと、南の浜
 安乗神社には文楽(人形芝居)が伝わっていて、国の重要無形文化財に指定されている。
 だが神社そのものは旧島部分のいちばん端っこギリギリにあって、こじんまりとしている。さっきの地図では赤丸@の場所。

 この階段は表参道ではなく、拝殿の脇にある別社の稲荷社にたどりつく。

 
(左)階段の途中から見下ろす   (右)階段拡大、ここもヒジキ干し場になっている

 稲荷のがけっぷちは、このトンボロがもっともよく見渡せる場所だろう。


中央やや左上の肌色三角屋根が安乗寺。そこから向こうが本来の志摩半島だ

 砂州の幅は200mあるかないかといったところだ。
 的矢湾に面した北の浜(写真右側)よりも、太平洋に面した南の浜(写真左側)のほうが堤防が高くガッチリとしているのがよくわかる。どちらの浜にも船の着く場所はない。

 
(左)こちらは安乗神社の正面参道   (右)子持ちの狛犬

 上右写真の狛犬は足元に子どもがいる。神戸の垂水にある海(わたつみ)神社の狛犬も同じように子どもを連れている。子持ちの狛犬は海の信仰と何か関連があるのかもしれない。

 安乗神社の表参道は、トンボロ砂州南岸沿いの道路が旧島へ登っていくところにある。こちらからは南の浜がよく見える。

 
(左)南の浜が旧島と合体する部分   (右)合体部分から志摩半島側を見る

 北の浜よりも高く頑丈な堤防が築かれ、外側には波消しテトラが積まれている。これぞ太平洋だ。
 安乗神社の文楽はこちら側の浜辺で奉納芝居が演じられるらしい。
安乗埼灯台
 安乗神社の参道前から旧島へ入ると、旅館がたくさん現れる。どの宿もフグ料理の看板を出している。
 そのまま道なりに500mあまり進むと、安乗埼灯台へとたどり着く。手前は広い芝生公園になっていて、「日本の灯台50選」に選ばれているらしい。最近はなんでもそれだな。

 
(左)四角い灯台   (右)灯台の上から志摩半島方面を見る。トンボロは森の向こうで全然見えない

 遠州灘方面

 灯台は150円で上まで登ることができる。もちろん眺めはよろしい。

 灯台の内部に、志摩市在住の松本高正さんという人がパラグライダーに乗って撮影した安乗崎の空中写真が何枚も飾られている。それを見ると安乗がトンボロであることがますますよくわかる。
 帰って調べたらウェブでも公開されていた。これこれ。俺も羽がほしいよ〜。

 おしまい。(記:2009.4.9)
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