関西の激渋銭湯
チープに極楽。生きててよかった!
【愛媛県】の激渋銭湯
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道後温泉本館 (松山市)★
祇園湯 (松山市)★
だるま湯 (松山市)★
あまのや温泉 (松山市)

五色浜温泉 (伊予市)
(廃業)
大黒湯 (今治市)
敷島湯 (今治市)△
神の木湯 (今治市)△
(廃業)
鯉池温泉 (今治市)
鉱泉湯 (今治市)△


よしの湯 (大洲市)★
大正湯 (八幡浜市)★

道後温泉本館 
松山市道後湯之町5−6 →地図
TEL:089-921-5141
【営業時間】6:00〜23:00
       (22:30札止)
【定休日】無休
【入浴料金】大人400円(神の湯)

 
2F休憩室利用は800円


 まあ俺が今さらこんな超有名温泉をレポートしたって仕方ないような気もするけど、「偉大なる銭湯」に敬意を表して。なんせ国の重要文化財です。

 路面電車の道後温泉駅から商店街を抜けて真正面、あたかも横綱土俵入りのごとき威厳と迫力でこの建物が現われる。
 真夏の平日、夜10時すぎだが、前には浴衣姿の老若男女がたむろしていて、まさしく温泉観光地だ。

 
どっちから見ても貫禄の日本建築

 一般的な神の湯のほかに、1ランク上の霊の湯というのがあって、料金が違う(くわしくはこちら)。俺は道後に来るのは3度目だが、毎度神の湯ばっかりで霊の湯には未だ入ったことない。

 で、今日も神の湯。入口で券を買って中で渡す。
 脱衣所は広いが、エアコンがないので夏はけっこう蒸している。天井でいくつか扇風機がまわっており、その下に腰掛けた外国人が裸のままうつむいてじっとしている。

 浴室は、ほぼ同じデザインのが二つある。ロッカーに近い西浴室へ。
 木の引き戸を開けて浴室に入ると、ガイドブックやパンフレットでおなじみの風景が現われる。すべて御影石で造られたゴージャスな空間。しかも時間が遅いため他客は1人か2人しかおらず、広々ノンビリだよ万歳!
 湯舟の中央には円筒形の巨大壺のようなものがあり、漢詩が書かれてある。そこから無色透明な湯が出ていて、湯船のヘリからあふれている。贅沢な光景だ。

 道後の湯は去年、塩素投入で話題になった。衛生管理のために塩素投入を決めた当局と、伝統ある名湯に塩素投入などケシカランとする温泉マニアの論争だ。

 入ってみると塩素臭は感じられず、温泉ならではのなんともいい香りがする。43度弱くらい、湯は透き通るように澄んでいて、肌触りもいたって上品。さすがは名高い温泉じゃのう。
 奥の壁には素晴らしいタイル絵、たぶんオオナムチとスクナヒコナだな。一般的なタイル絵よりもぐっと抑えられた色合いと繊細なタッチが高級感を醸し出す。
 それに、すいてたのもさらによし。「坊っちゃん泳ぐべからず」という札がかけてあるが、俺以外に入ってる人がいないんだから泳いでやった。ははは、あ〜気持ちエエ。
 塩素投入の必要性については俺にはよくわからんが、これなら塩素が入ってても十分許せる。★つけときましょう。

 俺は、温泉の効能はほとんど気にしていない。だって別に病気を治そうと思って温泉へ行くわけじゃないからね、今のところ。湯治を考えるなら、こんな観光地よりもっとふさわしいところがたくさんある。
 温泉で重視するのは、香りと浴感。あとは銭湯と同じく建物や空間の雰囲気・風情だ。それとバカみたいに混んでるのも嫌だな。

 ま、そんなわけで湯舟の湯に問題は感じなかったが、気になったのはカラン。自動調温シャワーつきの新しいものだが、こっちの水にはべとつくほどの塩素を感知した。ふだん神戸ウォーターの銭湯でもまれてる俺としては看過できないレベルだ。
 湯舟の湯で茹っては、カランの水をかぶって身体を冷やし、また浸かる。この繰り返しが温泉極楽道の真髄なわけだが、これだけ湯舟の湯とカランの水との落差が大きいと違和感を感じざるをえない。この施設の問題点はそこではないか。

 って、徹底的に水かぶりを繰り返して長湯した俺が言うてもな。 
(2006.8.1)
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祇園湯 

松山市祇園町9-23 →地図
TEL : 089-921-5878
【営業時間】 15:30〜22:00
【定休日】 日曜日


 伊予鉄の石手川駅から東へ7〜8分、しっとりと落ち着いたまちなみの住宅地に1軒の銭湯あり。
 外壁タイル、とくに男女暖簾を分ける中央の円柱型突出に目を奪われないわけにはいかない。ふと山陰の温泉津や有福温泉あたりを思い出してしまう。

 
(左)ほれぼれしちゃう   (右)夕日に映える玉石タイルと小窓。めっちゃカッコイー!

 しばし眺めてから暖簾をくぐる。横長の間口全部がタタキになっており、真ん中に番台が置かれていて、やさしそうなおかみさんが座っておられる。
 ってその番台を見た瞬間、またしても目を見張ったね俺は!

 
(左)タタキに番台   (右)番台!

 これまで銭湯クソオタクとして全国各地のいろんな番台を見てきた俺だが、この番台の美しさは特筆すべきものだろう。
 番台の背後は外面の円柱型突出になっており、戸を開けると円柱の玉石タイルと番台の玉石タイルとが見事に連続する。番台側面の一部は石鹸類のショーケースになっている。
 もうこの時点で「入浴料」は「拝観料(入浴つき)」へと脳内変化を遂げる。

 脱衣場は昭和中期的な造り。広々していて、浴室との隅に乾式サウナボックスが置かれている。別料金なし。
 服を脱ぎつつ浴室方面を眺むれば、ガラスの向こうに見えるは円形浴槽・・・ああ我が青春に悔いなし。

 脱衣場

 浴室は薄い緑の光に包まれていた。
 というのは、浴室の奥に小さな庭があって植物が繁茂している。それが日光を受けて浴室を薄緑に照らしているのだ。

 そして中央に銭湯ファン必泣の真ん丸湯船 by 細かいタイル張り。たっぷりなお湯が「さあどうぞ体をお伸ばし」とおっしゃっている。
 しかもラッキーなことにこの日は5月5日、菖蒲が浮いてるぞ!

 庭の横、奥左に小さな副浴槽が二つあり、手前は電気風呂、奥は竹炭風呂になっている。だが電気風呂は20cmほどしか湯がなかった。漏れてるのかな?
 竹炭風呂には熱水と水のカランがあって自由に温度調節できる。今どき珍しくも嬉しいではないか。

 さらに庭の手前に扇型の小さな水風呂がある。ここにも豪快な給水カランがあり、あえて満々にしてドップァ〜と溢れさせることが許される。最高。
 水は井戸水らしく、まろやかでじつに気色よろしい。

 カランは両サイドにたっぷり並んでいる。男女壁にはガラスブロックが使われており、女湯で動く人影がぼんやり見える。

 いやー、しかし陽の高い時間に入るこの浴室はたまらんな。なにやら極楽の様相を呈しとるぞ。マニア的にも随所の細かなタイル使いに時間を忘れそう。

 じゅうぶんに長湯してから上がっておかみさんに聞くと、昭和38年築。俺より1歳年下ね。昭和から平成へと歩んできた同志ぞなもし。
 電気風呂はやはりお湯が漏れているそうで、「底の栓が悪いのかなと思って今日新しいのに替えたんですけど、やっぱり漏れてますか!」とのこと。たぶん近いうちに修繕なさることだろう。

 緑の庭を眺めながら、細かなタイルに縁取られた丸い湯船に浸かり、湯上りに牛乳を飲み、表に出て夕照の円柱アールをなでなで。
 なんかもー心がとろけてきよる。
 おかみさんのお人柄も含めて、とにかくよい風呂。道後もいいけど祇園湯もね。坊っちゃん忘れるべからず。  
(2012.5.5)
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だるま湯 

松山市神田町5-10 →地図
TEL:089-951-2040
【営業時間】14:00〜20:00(札止め)
【定休日】3のつく日


 松山には瀬戸内海の島や対岸の中国地方へ渡るための港がいくつかあるけど、その中でいちばん古いのが三津浜港。正岡子規や夏目漱石、日露戦争の秋山兄弟らも、旅はいつもここからだった。
 三津浜には1軒だけ銭湯がある。船に乗る前にひとっぷろね。

 伊予鉄の三津駅から南西へ徒歩5〜6分。お寺の角を曲がると、むむっ! 小さいながらもきれいな肌色に塗られた銭湯がシズシズと登場だ。
 このごろ地方の小銭湯の荒廃・絶滅が猛烈な勢いで進行中だけど、ここは明らかに違うぞ。玄関まわりのハイセンスに、店主の確信ちゅーか腹のくくりっぷりが感じられる。

 
(左)男女の扉の間に暖簾   (右)かわいい照明とロゴ

 
(左)この玄関扉!   (右)日替わり薬湯、今日はたんぽぽの湯だ〜

 中へ入ると、タタキに番台のクラシカルスタイル。正面の衝立も凝っている。
 脱衣場はすっきり美しく改装。

 
(左)衝立のガラスにも統一デザイン   (右)こじんまり&すっきり

 浴室との間のガラスも曇りなき美品であり、浴室がすべて見通せる。真ん中に角の丸まった浴槽が一つ、奥の隅に小さな副浴槽ひとつ。ちっちゃな風呂場なんだけど。
 う、美しい・・・ぞなもし。

 
(左)出入り口付近は旅館の風呂テイスト   (右)清潔感バリバリの浴室

 
モザイクタイル画

 なんつーか、とにかくやたらと美しいんぞなもし。

 床タイルも浴槽もカラン周りもあらかた改装されているため、古いものを探す性癖のある変態銭湯ファンには少しもの足りない・・・と思われそうなもんだが、さにあらず。その改装テイストがことごとく保守本流といおうか、地方の小さな古銭湯ならではの味わい、雰囲気を活かす方向でまとめあげられている。
 工務店が定番の資材で仕上げたようなお仕着せっぽい部分が感じられない。わかってらっしゃるね!

 しかもそれらがことごとく徹底的に磨きマクラレているというマクラレ系銭湯だ。気持ちエエったらありゃしない。
 副浴槽のたんぽぽ風呂はまあ普通の入浴剤だが、湯船フチのこまかな古タイルのワンポイントが泣かしよる。
 すっかり感銘を受けてノビノビ入浴。上がるのがもったいないぞな。
 数人の常連客も、「ゆっくり入るには道後温泉よりこっちがええな」と言っている。

 ようやく上がって番台の主人に聞いたら、この銭湯は昭和28年築。それを先代が少しずつ改装していったのだという。奥壁の細かいタイルとモザイク画は当初のままだそうだが、新品みたいにピカピカでんがな。

 あまりに気持ちよかったので、2日後に忽那諸島から戻ってきたときにもまた入りに行った。

 その日は最後の客となったので、写真を撮らせてもらい、おだやかで知的な50代くらいのご主人にさらに話を聞いたら、なんと去年の暮れにこの銭湯を継いだばかりだという。
 「先代が去年7月に亡くなりまして、12月まで半年近く店を閉めてたんです。それを私が会社をやめて再開させました」
 なんと! この銭湯絶滅期にあって、会社をやめてまで復活させたとは・・・!

 ご主人に決断させたのは、亡き父君が手塩にかけていた銭湯への愛情であり、亡き母君の「風呂たのむで」の言葉であり、会社帰りに父君を介護しながら深夜の風呂掃除をし続けた自らの経験であり、そして再開を願う常連客らの声だったという。

 「銭湯を継ぐにあたり、収入のことは考えると悲しくなるので、考えないことにしました」
 まったく銭湯ってやつぁあ…チキショー涙が止まらねぇ。だるま湯に栄光あれ!

 ゴールデンウィークということで、この日、道後温泉は1時間待ちだったらしい。
 松山に行ったら道後に行くのもいいだろう。だが俺は「朝は道後、夕はだるま湯」を推奨したい。 (2012.5.2)

 
「日の出」の三津浜焼きも推奨します
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あまのや温泉
松山市北条辻1407-1 →地図
TEL:089-992-1507
【営業時間】13:30〜22:00
【定休日】元日のみ


 これは意表をつかれたぞ。逆転改装だ!

 市町村合併で松山市の一部になった旧北条市に、1軒だけ銭湯が残っている。
 行ってみたら、どっしり堂々たる日本建築の伝統的な建物ではないか。これは素晴らしい。でも入り口がどうも閉鎖されているようなケハイなのよね・・・うぇーん、ここも廃業かいな〜マジかいな〜。

 
(左)このヒサシの部分が玄関のハズ…   (右)しかし看板は建物に似つかわしくない…

 それにしてはオレンジ色の看板には電飾つきで、レトロ銭湯な感じがしない。「P」とあるので、いちおう念のため駐車場に侵入してみよう。

 
(左)屋根付き、ずいぶん奥深い   (右)さらに奥は頑丈な屋根

 
(左)大カレマセン   (右)むむっ!

 なんと駐車場の奥の左手に電飾つきの入り口が隠れていた! 表の建物からすると完全に裏手。普通は釜場があるべき位置よりさらに奥だ。
 とすると、表の旧来の風呂はそのまま廃棄して、この奥に新しい風呂が作られているんかな?

 入ってみるとフロントがあり、ほがらかなおかみさんがおられる。

 
(左)美しいフロント。2階は家族風呂らしい  (右)張り紙のボロさがチグハグで泣ける

 左手にロビースペースがあり、男女の暖簾に分かれている。おや、この方向だと、Uターンして表の日本建築銭湯のほうへ戻っていく感じになるが・・・。
 脱衣場はスッキリした新築風。どう考えても旧来銭湯の釜場ポジションに当たる位置。そして浴室は・・・モロに旧来銭湯に戻って行っとるぞ!

 
(左)ロビー   (右)脱衣場の奥に浴室が

 裸になって浴室の戸を開けた瞬間、テレビの大音量に迎えられる。
 足元は不定形な石板張り。左に別料金サウナと広い水風呂、打たせ湯ブースが並び、右手にぬるめのバスクリン風呂がある。
 天井は簡易な透明板で、温室のように日光が降り注いでいる。通常の銭湯ではまずない展開であったため、ここが半露天スペースであることに気づくのに3秒くらいかかった。
 デカイ音でしょーむない番組を放映中のテレビは、この半露天スペース全体をカバーするポジションに君臨している。

 
いきなりの露天スペース

 その先の戸を開けて、ようやく主湯がある浴室へと到達した。
 もう間違いない。
 普通の銭湯浴室はまず主湯があって、その奥に露天やサウナ、色モノ浴槽があるものだが、ここではそれが完全に逆になっている。
 つまり玄関と脱衣場だけを浴室の奥へと逆さまに移動させたのだな。だから客は浴室奥の露天から入るかたちになる。

 
浴室、めっちゃトラディショナル!

 俺の他に客は誰もいない。ここも床は一面に不定形石板が敷き詰められている。
 そして玄関ロビーの改装っぷりとは対照的に、深浅の主湯は石造りだ。浅い部分は底までが石敷きで、どこか道後温泉を思わせる。そんな昔ながらの浴室だ。
 主湯の手前(改装前は奥側)に棺桶サイズのデンキ風呂がある。

 奥壁カラン列の左端に縦長のガラス戸がある。今は閉じられているが、改装前はこの向こうが脱衣場で、この小さな戸が浴室入口だったに違いない。

 お湯はややぬるめだったが、入っているうち徐々に沸いてきた。

 逆転風景に当初は落ち着かなかったが、主湯の浅い部分(通常は浴室のいちばん手前)に浸かりながら全体を眺めると、ごく普通の浴室風景で、なぜだか笑えてきた。それでいて、なかなかに立派な石造りの浴室だと感じ入る。

 上がってフロントのおかみさんに聞くと、平成10年にこのように改装したそうだ。ロビー部分にはかつて母屋があった。以前の脱衣場は物置になっているらしい。
 釜場はどこへ行ったのかと聞くと、ロビーの右側だという。ということは、浴室と釜場の間に、新しい脱衣場とロビーが挟まっていることになる。

 13時半からだが常連客がじわりじわり早く来るので13時から開けている。2階の家族ぶろは、今はほとんど使う人はいないとのこと。

 レトロな銭湯が好きな旅人としては、日本建築の正面から暖簾をくぐる風情にヨロコビを感じる。
 だがクルマ社会で市街地が空洞化し、ついに合併で自治体が消滅するような地域の住民にとっては、クルマで乗り付けた駐車場から入ってロビーで待ち合わせできる現スタイルのほうが理に適っているのかもしれない。

 いずれにせよ石造りの浴室がそのままなのは嬉しいねぇ。
(2013.12.28)
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五色浜温泉 (廃業)
2016年12月30日をもって廃業されました。
レポートは営業当時のものです。
(二宮さん情報感謝!)


伊予市灘町353 →地図
TEL:089-982-1540
【営業時間】15:00〜22:00
【定休日】土曜日


 予讃線の伊予市駅から海のほうへブラブラ〜っと5分ほど歩いたら、カラフルな看板が登場した。
 すぐ後ろは海だ。モロに海っぺりに建っとるがな!

 
(左)道路側。入り口は左側にまわりこむ   (右)水路に面した玄関、暖簾は出ない

 
(左)側面は海!   (右)港を挟んで五色浜公園から望む(茶色の瓦屋根)

 道路から見て裏側(玄関から見て左側面)は郡中(ぐんちゅう)内港だ。
 海べりに建っているのも楽しいが、海との間に柵の一つもないのがさらに愉快。船で乗り付けてどこからでも入れそうやん。
 右上写真のオレンジ色の長屋根は石材屋さんだ。

 玄関に暖簾は出ない。
 中に入るとタタキに番台があって、若おかみが座る普通の銭湯風景だ。

 脱衣場は白ペンキで小奇麗に改装されているが、中央にドン!と昔ながらの脱衣箱が鎮座している。
 鍵をよく見ると「女」と彫られている。おかみさんに聞くと、女湯にあった脱衣箱の半分を男湯に持ってきたそうだ。
 男湯は海に面しているから、元あった脱衣箱は潮風で傷んでしまったのかもしれない。

 
(左)脱衣箱   (右)女湯の鍵

 脱衣場の窓からエエ風が入ってくる。フト見ると、目の前の港が一望できるではないか。これは素晴らしい。
 港の景色はさっき外でさんざん見たが、風呂屋の脱衣場から眺めると一味違いますな。

 
(左)天井扇よいねー   (右)ええがな〜!

 浴室へ。こちらもきれいに改装されてピカピカだ。
 真ん中に白っぽいタイルの主湯がある。どんな湯船やったかな・・・忘れたわ、スマヌ。
 でもジェットやデンキもあったし、サウナもあった。設備は上々、文句なし。

 左奥に副浴槽があり、これが海水湯。中津の汐湯の海水湯はやや緑色がかっているけど、ここのはほぼ透明だ。
 そして浸かると・・・おぉ、これやコレコレ、まろやか〜。湯船の細部は忘れた、がお湯のスベスベの感覚は覚えてるぞ。
 そして、なんか海草か薬草みたいな袋も入っていたように記憶する。一緒に入ってた地元のおっちゃんに「これは何ですかね?」と尋ねたような記憶がウスラボンヤリと残っているぞ。
 ま、なんかしらんが非常にキショクエエ風呂やったということ。それでええやん。

 もひとつ良かったのが水風呂。浴室から飛び出た物置みたいな小部屋に、小さな一人用のステンレス浴槽が置かれている。それが水風呂だった。
 浸かるとドバーっと溢れて嬉しかった記憶があるが、それ以上に心地よかったのは、その小部屋の小窓から港の風景を一望できたことだ。
 脱衣場からの眺めと同じだが、それを水風呂に浸かりながら眺めるっちゅーのんはまた一段とよろしがな〜。

 上がって番台の若おかみに「海水は港からくみ上げてるんですか?」と聞いたら、意外な答えが返ってきた。
 「井戸なんです。このへんはどこを掘っても海水と同じ塩水が湧いてくるんですよ。でも砂でろ過された井戸水ですから、海の水をくみ上げるよりきれいなんです」
 なるほど、それで透明だったのか。

 建物や風呂自体は改装されて激渋という感じではないが、歴史はありそう。なによりこの漁港っぺりという立地が渋い。

 パンツだけはいて、窓から港の漁師たちの仕事を眺めつつ、しばし海風に吹かれて体をさます。
 そんな極楽風呂だった。また行きたい。
(2014年3月)
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大黒湯
今治市本町6-4-9 →地図
TEL:0898-23-0029
【営業時間】13:00〜21:00
【定休日】6のつく日


 今治港に並行して走る本町通。かつては繁華街だったみたいだが、今では車がブーブー通り過ぎるだけのさみしい道となっている。
 それをずんずん歩いて、まちなみもとぎれとぎれになりはじめた頃、右手にさりげなく現れる1軒の銭湯あり。

 
右側の黒い板状の建物が気になる

 見た目はそっけない・・・ように見えてこの半円塔の正面部分は、松山の祇園湯と同じく、ほぼ愛媛県でだけ見かける様式だ。

 
(左)誰が考案したものか  (右)円筒部分にはこのタイルがびっしり

 暖簾をくぐると、広いタタキに玉石張りの番台があって、おかみさんが座っている。玉石張り番台も祇園湯と同じやけど、屋外のタイルとは柄が共通しない点が違っている。
 脱衣場はこぢんまりしてて、何がどうっちゅーことはないけど早い話が田舎の脱力フレーバー。明るいうちはさらに脱力3割増ね。

 裸になって浴室へ。
 見上げると蒲鉾天井で中央に長方形の湯気抜きがあるんだが・・・その天井が一面全部びっしり細かなタイル張りだ! 
 これ、どっかでも見た記憶があるけど、とにかく壮観。一部に花柄ふうアクセントタイルがある。
 湯船は中央に深い主湯があり、お湯が溢れている。んでまたこれがちょうどええ温度で、えらくまろやかな湯やんけ!
 と喜んでたら湯船の内側段が狭くて、こけそうになった。

 奥には、ほり込んだようなスペースにサブ2槽、バスクリン風呂と電気風呂だが、電気はカラで、バスクリンも湯が半分しかない。なんでよ〜!

 その横に、ガラスで仕切られた、かつて庭とおぼしきスペースがある。そこに乾式サウナがポンと設置されている。これは珍しいパターンだ。
 けっこう広くてきれいだが、温度がイマイチ低い。
 その手前にかけながし式の水風呂がある。

 男女壁にはカランのみ、外側壁にはシャワーのみが設置されている。カラン族とシャワー族の争いを避ける配慮なのか?
 でもカランの出が豪快でシャワー不要なくらいだ。これはポイント高し。

 上がりは番台がおやっさんに交代していた。牛乳飲んだ。

 機能を十分に果たしていない設備が心配だが、主湯にあふれるお湯と豪快カランのおかげで気持ちよく使えて、地元客が楽しげに言葉を交わしている。
 こういう普通の、地方らしい銭湯が減ってるんよねぇ。 
(2014.4.2)
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敷島湯 
今治市共栄町1-4-9 →地図
TEL:0898-22-4587
【営業時間】14:00〜20:00
【定休日】日曜定休

※時間と定休日が変わりました。
(玉岡さん情報感謝! 2016.10)


 今治市街地のほぼ中心部。
 各地の銭湯に入りまくっている風呂バカの経験値をあざ笑い、一蹴する存在といわねばなるまい。

 
(左)側面  (右)暖簾かけに、何か小さな布的なものが付着している

 
(左)愛媛独特の番台背面円柱  (右)トイレだろうか

 とても現役とは思えないこの姿は、「銭湯・奥の細道」で写真を見ていた。しかし実際に訪れると、この建物周辺に漂う濃厚なオーラは想定を超えるレベルだった。
 モルタル壁のくすみは、ある種芸術的ですらある。
 暖簾はもちろん、営業中を示すものは何一つない。

 男女表記がないので、どちらかを覗くわけにもいかない。
 少し離れて思案していると、よそ見した隙に中から男が出て来たような気配! 男はすぐに商店街のほうへ消えてしまったが、どうも右からだったような気がする。
 確信が持てないが、意を決して右側の戸を開けてみた。

 誰もいない。呼んでも返事なし。
 タタキに番台があり、ついたてを挟んで脱衣場は広々している。 廃墟的な外観に比べて意外にも荒廃した感じはない。
 漢数字の書かれた古い木の脱衣箱があるが、対面には新しいロッカーもあり、フローリングの床もつやつやしている。天井には古い3枚羽プロペラがある。

 

 浴室の湯気の感じからして、どうやら風呂は沸いていて営業中のようだ。
 こういう場合、番台にお金を置いて勝手に入ればよいという場合が多いが、もしもこちらが男湯でなかったら大変なことになる。

 無理は禁物。時間をおいて出直そう。
 外へ出ると、横でチェーンソーの音がする! 向かって右手に釜場があり、そこで薪を切っているようだ。オヤジさんの姿が見えたので声をかけた。

 「すいません、お風呂入れますか?」
 「ん? あ、あぁ入れるよ」

 おやじさんは手を止め、電ノコを置いてわざわざ番台まで来てくれた。俺は入浴料を受け取ってくれたらそれでよかったのだが、意外と律儀な人のようだ。

 ようやく脱衣場で裸になり、浴室へとすすむ。
 浴室は手前に広いスペースがあり、床面を横に排水溝が1本走っている古いスタイルだ。

 中央に深浅の主湯があり、周囲に大阪的な腰かけ段がある。
 お湯はややぬるめだが、内側の青タイルも磨かれており、気持ちよく入れるぞ。
 湯船周囲はピンクの小さいタイルが味わい深い。床タイルも隅のほうは彩り豊かで華やかだ。
 奥に副浴槽があるが、湯は入っていない。

 奥壁に鯉の滝登りのモザイクタイル画がある・・・おや、これは尼崎の第一敷島湯の脱衣場にあるのと同じ、鯉ならぬ鯛の滝登りではないか! しかも屋号も同じ敷島湯とは。何か関係あるのだろうか?
 外側壁には灯台と船のモザイク画もある。

 外壁側のカラン部分には、桶受け棚が2〜3ヵ所で突出していておもしろい。
 カマボコ天井には雨漏り修理あとのようなセメン部分があちこちにあり、その他はくすんだミドリで、巨大なカビのコロニーみたいにも見える。

 古びた空間ではあるが、外観から想像したより風呂としては俺的に全然OKだ。タイルなども味わい深し。
 なにより、この秘密めいた静寂空間に裸でいることの不思議感がたまらん。

 出入り口のガラス戸に、新聞の折り込みチラシが貼ってある。何かなと思って見たら、裏面にマジックでここの営業時間などが書かれていて、脱衣場から見えるようになっていた。
 チラシ裏は自分用のメモに使うもの、というのは単なる固定観念だった。

 はじめ貸切だったけど、上がりしなに常連客が入ってきた。

 上がると、おやじさんが衝立の向こうの番台付近で高齢女性としゃべっている声が聞こえる。
 俺は二人の語らいを邪魔しないよう、黙って服を着た。
 帰りがけに近くへ行くと、玄関タタキにストーブが置かれ、おやじさんは番台前のフローリングに寝そべっている。男女仕切りのカーテン部分にバーサン(客か家族か不明)が半身を出してへたりこみ、二人でボソリボソリと語り合っていた。
 冬山の木こり小屋のような、味わい深い光景だった。

 俺を見て、寝そべっていたおやじさんは上半身を起こした。
 「昔ながらのええ雰囲気ですね〜。のんびりできました」と声をかけると、
 「いやー、お客さんがだんだん減ってね…」てそらそやろ!

 おやじさんは俺が入っている間ずっと番台にいてくれたのかもしれん。薪割りに戻ってくれてもよかったのだが、誰もいないのは一見客に悪いと思ったのか、あるいはヨソ者を警戒したのか。意外と気ぃつかいーのおやじさんだ。

 
閉店後はロープが1本張られていた

 聞いた話だが、俺より後にこの銭湯を訪れた某若者が、「常連さん用の風呂じゃから」とおやじさんに入浴を断られたという。
 俺は決してヘマはしていない・・・(と思う)。でも、おやじさんはもう新たな客を迎えるのが面倒になってしまったのかもしれない。
 かつて東大阪にあった極楽湯もそうだった。これもまた日本の銭湯の一局面(かなり極端ではあるが)でもあるだろう。

 だがここにこそ、ディープな銭湯世界の真骨頂があるとのとらえ方も可能だ。
 どうしても入りたい人は、高度なコミュニケーション力と、おやじさんの心を解きほぐすそれなりの配慮、出会い方を考える必要がありそうだ。 
(2014.4.2)
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神ノ木湯 △ 《廃業》
2010年8月に廃業されました。
レポートは営業当時のものです。


今治市蔵敷町1丁目7−2
TEL:0898-22-5418
【営業時間】15:00〜22:00
【定休日】8のつく日
【入浴料金】大人330円


 暑い暑い日。今治郊外での仕事を終えて、駅へ向かう途中に濃厚激渋銭湯あり。
 今治駅からなら線路沿いに南東へ徒歩10分ほどで、銭湯背後の白い煙突に至る。

 裏の道にまわると、左側のよく茂った樹木と、右側の歯科医院に挟まれて、奥ゆかしい面持ちのイニシエ銭湯が顔を覗かせる。
 こ、このイニシエっぷりは・・・これはただごとじゃないぞ。

 
(左)古い旅館のような味わい   (右)番台の背中部分が突出している

 
この暖簾のやさしさ!

 とにかくすべてが木でできている。穏やかに揺れる涼しげな暖簾と、外から脱衣所まで素通しの開放感がたまらない。
 大脳の奥がツーンときて、操られるように暖簾をくぐる。

 ザ・開放感、とでも言うしかない開けっぴろげのタタキ。古い木の番台に、穏やかで人のよさそうなおかみさんが座っている。
 ああ、これこの郷愁、もうどうしようもなく銭湯。

 そして目の前には広々と板張りの床が広がり、右手には木の脱衣箱がどっしりと据わる。

 
(左)ここで寝転んで昼寝したいよ   (右)俺の白いタオル

 脱衣所の傍らにある体重計、これがすごい。これまでいろんな銭湯でいろんな体重計を見てきたが、これ、レトロチャンピオンではないか。

 
(左)第一級の骨董品   (右)中央のガラス窓から中の分銅が左右に動く様子が見える

 浴室の入口は、太い2本の円柱の左右に2つある。こういうのも初めてかも。

 
豆タイルびっしり

 裸になって浴室へ。ここも広々とした空間だが・・・おっと、硫黄の香りだぞ!
 真ん中にタイル張りの楕円形の主浴槽があり、奥に小さな電気湯と薬湯、ここに入れられたハップが香っているんだな、うれしいねえ。

 驚いたのは天井だ。大きなカマボコ型に四角い湯気抜きが開いているが、全体がすべて豆タイルでびっちりと覆い尽くされている。これは壮観。

 主浴槽は一部から元気よく気泡が出ていて、じつに気持ちよろしい。こんな暑い日は何度でも水をかぶって、何度でも湯に浸かる。これが最高ね。
 奥の電気湯と薬湯はぬる湯だが、湯量が少な目なのがちょっと残念。その向かいにはサウナ室があるが、機能していない。タイルの目地もくすんでいて、かなりディープな気配が漂う。
 でもカランはシャワーつきの自動調温式と、昔ながらの赤と青のとが対面に並んでいる。古いけど、そこそこ手が加えられている。

 上がって扇風機に当たりながらおかみさんに聞くと、昭和8年の建物だとのこと。「戦後やり直したけど、戦前はもっときれいだった」そうだ。
 しまなみ海道の開通で今治は本州と直結した。だが、おかみさんは「今治もさびれてしもて」とおっしゃる。
 いろいろ話すうち、「遠くから来てくれたから」と冷蔵庫のポカリスエットをくださった。お金を払おうとしたが固辞され、恐縮しつつありがたく頂戴する。

 ちなみに便所は外の、建物左側の植え込みの脇にある。これがまた渋い小屋だが、中は意外にもきれいな水洗トイレだ。
 少し前までは建物の真正面にも大きな木があったらしい。

 浴室はあちこちくたびれているが、ともかくおかみさんの人柄も含めて、強烈な郷愁感に満ち満ちた銭湯。泣けてきます。
(2006.8.1)

 
この飾らない風情をなんとしょう
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鯉池温泉

今治市鯉池2-1−7 →地図
TEL:089-822-4819
【営業時間】15:30〜23:00
【定休日】8のつく日


 今治駅から夜道を15分くらい歩いただろうか。
 もうほとんど町外れを思わせる住宅地やけど・・・今治南高のグランドの向かいに、突如として堂々たる銭湯が現れた。

 
(左)やってる!   (右)ゴツイ!

 こんなところにこんな大規模な銭湯があるとは。
 中に入ると番台におかみさんがいるが、脱衣場との間に仕切りがあって現代風に配慮されている。
 脱衣場も広々だ。そして美しく改装され、ボックス式のサウナも設置されている。

 
ピッカピカ

 ここまでは、当サイトで追い求めてきた激渋系とは言い難いのだが、浴室に入ってたまげたね!
 こんなに素晴らしい風呂にはそうそう出会わない。

 
瓢箪と富士山

 広い空間に、贅沢に無駄スペースを生み出しながら配置された円形の主湯、それにつながる浅湯。
 その浅い底にはタイルの鯉が数匹泳いでいる。あたかも深い部分から浅い部分へと登ってきたかのように……そしてその突き当りには岩があしらわれている。
 その岩は奥のタイル絵へと連続している。壁一面に、美保の松原から望む秀麗なる富士山が描かれている。

 タイル絵の砂浜は、主湯と同じく砂色の細かなタイルで縁どられた薬湯と電気風呂へとつながっている。薬湯は濃厚、手前には水風呂もある。
 そしてそれら湯船群を、こまかな玉石タイルが敷き詰められた踏み込みが取り巻いている。

 浴室全体が一幅の絵画となっている。
 これほどトータルに作り込まれた完全ビジュアルの浴室にはお目にかかったことがない。設備的にも申し分ない。しかもきわめて状態よく管理されてピカピカだ。

 途中で先客がいなくなって貸切状態となった。
 もったいなくて上がれない。

 夢心地でさんざん楽しんだら、もう閉店前の時刻になっていた。
 お客が誰もいなくなったので女湯も見せていただいたら・・・それは男湯以上にパーフェクトにエクセレントな浴室だった。

 
たまらん・・・

 奥壁に描かれたアルプスと川のタイル絵。その川がそのまま浅湯から円形主湯へと流れ込んできている、ように形づくられている。
 そしてこちらでももちろん、湯船の底のタイル鯉が上流へと川を登っていく…。

 おかみさんに聞くと、女子ボート部の奮闘を描いた映画「がんばっていきまっしょい」のテレビドラマ版のロケがこの女湯浴室で行われたそうだ。
 部員たちがみんなでこの風呂に入ってボート漕ぎの練習をするシーンだという。

 なんだか胸いっぱいになった。
 新しいパンツをはき、深夜の道を元気よく歩いて宿に向かう俺であった。
(2015年3月)
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鉱泉湯 

今治市桜井5-4-25 →地図
TEL:0898-48-0295
【営業時間】16:30〜19:30
【定休日】月に1日だけ休み


 伊予桜井駅から直行して10分ほど。途中の志島ヶ原海岸にある綱敷八幡宮に寄ったら、境内に風呂神社というのがあった。安産子育の「風呂明神」が祀られている。

 風呂神社

 鉱泉湯はそれとは何の関係もないと思うが、桜井漁港のすぐ近く、漁協正面の狭い道にある。
 暖簾はかかっておらず営業中を示すものは何もないが、自転車や手押し車が停まっているので、やってるなとわかる。
 番台背部の突出部にびっしり張られた玉石が異様な雰囲気だ。石がボコッと外れているところもある。
 その突出部につながる上部のヒサシが、まるで仁王様が怒っているかのように左右に湾曲しながら吊り上がっている。なにやら異界への入口を感じさせる。

 
(左)側面から  (右)こんなん初めて見た

 中に入るとタタキに番台、70代後半とおぼしき気さくなばあさまが座っている。靴はみな脱ぎ捨て。組合サイトでは16時からになっているが、16:30からで、そのちょっと前に開けるとのこと。
 「小さい石鹸ありますか」と聞くと、「家のを貸してあげる」とわざわざ取りに行って貸してくださった。ええばあさんやな〜。

 脱衣場は脱衣箱はさほど古いものではなく鍵もかかるが、天井パネルが茶ばんだり外れかけたりしている。据え置き式のサウナ室が置かれてやや手狭な感じ。サウナは機能していない。

 浴室には先客が2人いた。
 意外にも床のタイルが全面張り替えられて欠損なし、しかもレトロな柄で好ましい。壁絵などは何もない。
 手前に石を円形に積み上げたような島カランがあり、「ゆ」と掘られた金属蛇口が残っているが機能していない。

 湯船はふしぎな形をしている。奥角に接した前方後円墳の一部欠損型とでも言おうか、奥の前方部が浅くなっている。フチには細かな紺色タイルがびっしり。底はコンクリ。熱めの湯が張られている。
 奥に副浴槽があり、「水風呂」と書かれている。しかし蛇口が二つあり、湯も出る。サウナのために水風呂にしてあるのだろうが、サウナが動いてないため入る人はおらず、水も少な目。俺だけ何度も入り、水を足したが、出る量は多くないのでさほど溜まらなかった。

 カラン下の台は赤っぽいモザイクタイルが張られているが、剥げている部分が多く、なかなかのディープっぷり。カランの湯蛇口からは熱湯が出る。シャワーはない。
 あとからさらに客が二人来た。

 ばあさまによると、「私が嫁に来る前からあった、50年以上前」とのこと。桜井にはかつて4軒あったが今はここのみ。跡継ぎもおらんが、なくなると困る人がおる、とおっしゃる。
 風呂の写真を撮らしてもらいたいと言ってみたが、「恥ずかしいからそれだけは」と断られた。
 俺が帰った直後にもう一人帰り、誰もいなくなった。

 もうこういう感じの地方銭湯はほんま全国的に絶滅寸前。貴重な1軒だ。

 (2016年10月)
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よしの湯 

大洲市中村473 →地図
TEL:089-324-3441
【営業時間】14:00〜21:00
【定休日】3のつく日


 伊予大洲駅に着いたらもう真っ暗だった。
 見知らぬ街の見知らぬ夜道を歩いてゆくこと7〜8分、それらしき路地を覗きこむと、遠くに温泉マークが赤く光っているのが見えた。

 
遠くの、道の真ん中に

 それを頼りに近寄っていくと、どうやらそれは左右の家の2階に棒を渡して、その真ん中に設置されていることがわかってくる。
 道路の中空で、一ツ目の信号機のように頭上を照らしているのだ。

 
(左)写真では白いけど   (右)肉眼では赤です

 道路交通法的に問題はないのだろうか。しかしこの意表を突いた目印は、あたかも異界へのゲートのように感じられる。

 風呂屋はその右前方角にあった。
 暗くて判然としないが、外壁は板張りで、屋根は寄棟造りなのだろうか。その軒下にもう一段、瓦のヒサシ屋根が重なり、正面に入母屋ふうの破風が取り付けられている。
 なにこの重厚さ。ブルッときちゃう。

 
(左)温泉マークの渡し棒の下から   (右)正面

 静かに戸を開けると、非常に狭いタタキが下駄箱と番台とに挟まれている。タタキの正面は暖簾でほぼ完全に脱衣場が隠されているため、タタキの狭さが際立っている。
 隔離空間のような番台にはおかみさんが座っている。

 靴を脱いで風呂銭を払い、暖簾を分けて脱衣場へ。

 
(左)小さなロッカーはほぼ誰も使わない   (右)男女壁方面。暖簾の向こう側に番台がある

 
玄関横の部分はござ敷き

 完全なる静寂。しばし呆然とするほどの時間静止空間だ。古代の記憶の微粒子が充満して、この小宇宙を支配しているかのようにも感じられる。

 厳かに着衣を脱ぐ。風呂に入るんやからね。だがどこか儀式のようだ。
 靴下を脱いで黒光りの板張り床に足裏を下ろすや、ひんやりとした感触とともに、この地の湯霊のようなものが土踏まずから流れ込んで来る。

 あやつられるように浴室へ。
 湯気に包まれたそこは仙境の趣があった。気泡を吹きだすのは、熱く沸かされた主湯。その奥に白濁した薬湯がある。こちらはやや温め。いずれも細かなタイル張りの湯船だ。

 その湯にゆっくりと浸かる。説明不能な、深い深い吐息。
 しかしまあこんなところで俺はいったい何をやってるのかね。お湯の心地よさとともに、愉快な気持ちがこみ上げてくる。

 奥壁にモザイク画がある。山と小川と水車小屋のよくある絵柄だ。
 だが不思議なものに気がついた。絵の横に広告がある。そのこと自体レアだが、ホーローやブリキの板に書かれた広告が壁に貼り付けられているのは地方の古い銭湯でたまに見かけることがある。
 だが、ここではなんと、「ナントカ自転車のナントカ商会」とか「ナントカ建材」といった広告主の店名が、タイルに直接焼き付けられているではないか! いや、店名を焼き付けられたタイルが普通に壁の一部として貼り込まれているのだ。
 これはよそで見た記憶がない。最高級にレアなものであることは間違いない。

 湯気の向こうに、もう一つ奇妙なものを発見した。
 カランが並ぶ壁の隅が、長方形に掘り込まれている。まるで洞窟のようだ。そしてその中に棺桶サイズの湯船が隠れているではないか。
 近寄って見ると、それは電気風呂だった。入ってみると、やや温めのお湯にきちんと通電している。
 しかしなぜこんなふうに壁の中に棺桶風呂が隠れているんだ!

 俺は味わったことのない興奮を覚えながら、お湯に身を任せた。
 すべての答えは、この地で歴史を刻んできた湯霊だけが知っているに違いない。

 カランにはシャワーもあってきちんと機能しているが、鏡の下の棚部分に石鹸置き用の楕円形の窪みがある。これも初めて見た。墓石の線香立の手前にある意味不明な窪みに似ている。
 だがここにはすぐに水が溜まってしまうので、実際には使いづらい。こういった「使えない部分」があるのも、地方の古い銭湯のおもしろさだ。

 先客にオヤジ2名。彼らが帰ったあと、小さな子どもを連れた若い父親が来た。
 まだまだこの地域では愛用されているお風呂のようだ。

 日本の地方都市の銭湯は壊滅状態で、このままだと数年内にすべてが消えてなくなってしまう可能性が高い。
 それでもまだ、このように貴重な体験ができる風呂がわずかに残っている。
 今なら、まだギリギリ間に合う。風呂好きならこの幸運を逃すべきではないだろう。
 
(2013.12.28)
 
(左)翌日は雪になった   (右)大洲は四国には珍しく雪深い地域らしい
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大正湯 ★
1年間の休業を経て、
2016年9月23日にリニューアルして再開されました!
(左)ビフォー(右)アフター
(レポートは改装前のものです)


八幡浜市大正町
tel : 0894-21-2033
→地図

【営業時間】14:00〜22:00
【定休日】5のつく日


 「映画のセットみたい」とはこの銭湯のためにある言葉だろう。

 JR八幡浜駅から西へ徒歩10分弱、江戸岡交差点を過ぎて2本目の筋を右へ入る。
 とにかく、このシブすぎる外観がスゴすぎて現実離れしすぎ。

 

 
言葉なし

 蛇女ゴーゴンは見ただけで石になるというが、この大正湯は見ただけで俳優になる。否応なく俳優 in 銀幕。もちろん二枚目系ではない。セピア色の下町のおっちゃん系、腹巻に下駄でハナクソほじるシーン。もしくは裸の大将がよそ見して歩いて壁にぶつかるシーン。

 リハーサルがすんだらいよいよ本番だ。戸を開けて入ると内側に暖簾がかかっている。
 中も手の込んだセット状態。狭いタタキに番台があって、知的かつ上品なおかみさんが座っている。下駄箱が脱衣場に上がったところに置かれているのは大道具さんが寸法を間違えたのだろうか。
 脱衣場では、板張り床と脱衣箱と天井が奏でるアメ色シンフォニーをバックに俺の脱衣シーン。ここから先はボカシが入る。

 
(左)ええ色してる番台   (右)脱衣場の奥から玄関方面

 
逆に玄関近くから浴室方面

 ここで映画はいきなりクライマックスを迎える。激レトロな浴室セットに主人公フルチンで立ち尽くして頬を伝う滂沱の涙。

 
(左)細かいタイル床の中央に楕円浴槽、非循環   (右)右隅に薬湯、左隅浴槽はカラ

 
(左)激渋カラン列、シャワーなし   (右)出ました!金属カランに「水」の刻印

 
(左)カラン下台、洗い出しのベテラン名脇役   (右)奥から脱衣場方面。天井が高い

 無声映画を髣髴とさせるセリフなしの長回し。この空間映像がすべてを物語る。
 なんといっても楕円浴槽の存在感、この年輪は貴重としかいいようがない。内側の段は幅が狭くて尻半分しか乗せられず、そこから底はコンクリ。その剥げ方がまた絵になる。
 奥右側の薬湯はコラーゲンとバスクリンでまろまろ。湯船へりの布テープ補修が泣かせるぜまったく。

 上がっておかみさんに聞くと、この建物は大正4年のものだという。修理に来た大工もしきりに感心しながら構造を見ていたらしい。
 建物も設備も古くて相当くだびれているが、毎日のサラ湯を楽しみにしている常連からは「やめんといて」との声が多く、その声に押されて今日まで続いてきた。

 銭湯に設備や快適さのみを求める人にはただのボロ銭湯かもしれない。だがこの大正湯の値打ちはそういう視点では測れない。
 いまこの瞬間、現実のこととして、ここで風呂に入ることができる。スクリーンから飛び出た本物に直面する奇跡、それを実体験できることに大きな価値がある。
(2012.1.7)

 
忘れ得ぬ一湯

※2016年9月23日にリニューアルして再開されました! 内部もピッカピカです。番台と脱衣場の間に壁が作られ、お湯も循環式になりました。トイレも感動的。ぜひ体験してください。
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