チープに極楽。生きててよかった!
| 四国の激渋銭湯 【愛媛県】 |
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| 道後温泉本館(松山市)★ だるま湯(松山市)★ 2012.5.14 神の木湯(今治市)△(廃業) 大正湯(八幡浜市)△ |
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道後温泉本館 ★
まあ俺が今さらこんな超有名温泉をレポートしたって仕方ないような気もするけど、「偉大なる銭湯」に敬意を表して。なんせ国の重要文化財です。 路面電車の道後温泉駅から商店街を抜けて真正面、あたかも横綱土俵入りのごとき威厳と迫力でこの建物が現われる。 真夏の平日、夜10時すぎだが、前には浴衣姿の老若男女がたむろしていて、まさしく温泉観光地だ。 ![]() どっちから見ても貫禄の日本建築 一般的な神の湯のほかに、1ランク上の霊の湯というのがあって、料金が違う(くわしくはこちら)。俺は道後に来るのは3度目だが、毎度神の湯ばっかりで霊の湯には未だ入ったことない。 で、今日も神の湯。入口で券を買って中で渡す。 脱衣所は広いが、エアコンがないので夏はけっこう蒸している。天井でいくつか扇風機がまわっており、その下に腰掛けた外国人が裸のままうつむいてじっとしている。 浴室は、ほぼ同じデザインのが二つある。ロッカーに近い西浴室へ。 木の引き戸を開けて浴室に入ると、ガイドブックやパンフレットでおなじみの風景が現われる。すべて御影石で造られたゴージャスな空間。しかも時間が遅いため他客は1人か2人しかおらず、広々ノンビリだよ万歳! 湯舟の中央には円筒形の巨大壺のようなものがあり、漢詩が書かれてある。そこから無色透明な湯が出ていて、湯船のヘリからあふれている。贅沢な光景だ。 道後の湯は去年、塩素投入で話題になった。衛生管理のために塩素投入を決めた当局と、伝統ある名湯に塩素投入などケシカランとする温泉マニアの論争だ。 入ってみると塩素臭は感じられず、温泉ならではのなんともいい香りがする。43度弱くらい、湯は透き通るように澄んでいて、肌触りもいたって上品。さすがは名高い温泉じゃのう。 奥の壁には素晴らしいタイル絵、たぶんオオナムチとスクナヒコナだな。一般的なタイル絵よりもぐっと抑えられた色合いと繊細なタッチが高級感を醸し出す。 それに、すいてたのもさらによし。「坊っちゃん泳ぐべからず」という札がかけてあるが、俺以外に入ってる人がいないんだから泳いでやった。ははは、あ〜気持ちエエ。 塩素投入の必要性については俺にはよくわからんが、これなら塩素が入ってても十分許せる。★つけときましょう。 俺は、温泉の効能はほとんど気にしていない。だって別に病気を治そうと思って温泉へ行くわけじゃないからね、今のところ。湯治を考えるなら、こんな観光地よりもっとふさわしいところがたくさんある。 温泉で重視するのは、香りと浴感。あとは銭湯と同じく建物や空間の雰囲気・風情だ。それとバカみたいに混んでるのも嫌だな。 ま、そんなわけで湯舟の湯に問題は感じなかったが、気になったのはカラン。自動調温シャワーつきの新しいものだが、こっちの水にはべとつくほどの塩素を感知した。ふだん神戸ウォーターの銭湯でもまれてる俺としては看過できないレベルだ。 湯舟の湯で茹っては、カランの水をかぶって身体を冷やし、また浸かる。この繰り返しが温泉極楽道の真髄なわけだが、これだけ湯舟の湯とカランの水との落差が大きいと違和感を感じざるをえない。この施設の問題点はそこではないか。 って、徹底的に水かぶりを繰り返して長湯した俺が言うてもな。 (06.8.1) |
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だるま湯 ★
松山には瀬戸内海の島や対岸の中国地方へ渡るための港がいくつかあるけど、その中でいちばん古いのが三津浜港。正岡子規や夏目漱石、日露戦争の秋山兄弟らも、旅はいつもここからだった。 三津浜には1軒だけ銭湯がある。船に乗る前にひとっぷろね。 伊予鉄の三津駅から南西へ徒歩5〜6分。お寺の角を曲がると、むむっ! 小さいながらもきれいな肌色に塗られた銭湯がシズシズと登場だ。 このごろ地方の小銭湯の荒廃・絶滅が猛烈な勢いで進行中だけど、ここは明らかに違うぞ。玄関まわりのハイセンスに、店主の確信ちゅーか腹のくくりっぷりが感じられる。 ![]() (左)男女の扉の間に暖簾 (右)かわいい照明とロゴ ![]() (左)この玄関扉! (右)日替わり薬湯、今日はたんぽぽの湯だ〜 中へ入ると、タタキに番台のクラシカルスタイル。正面の衝立も凝っている。 脱衣場はすっきり美しく改装。 ![]() (左)衝立のガラスにも統一デザイン (右)こじんまり&すっきり 浴室との間のガラスも曇りなき美品であり、浴室がすべて見通せる。真ん中に角の丸まった浴槽が一つ、奥の隅に小さな副浴槽ひとつ。ちっちゃな風呂場なんだけど。 う、美しい・・・ぞなもし。 ![]() (左)出入り口付近は旅館の風呂テイスト (右)清潔感バリバリの浴室 モザイクタイル画なんつーか、とにかくやたらと美しいんぞなもし。 床タイルも浴槽もカラン周りもあらかた改装されているため、古いものを探す性癖のある変態銭湯ファンには少しもの足りない・・・と思われそうなもんだが、さにあらず。その改装テイストがことごとく保守本流といおうか、地方の小さな古銭湯ならではの味わい、雰囲気を活かす方向でまとめあげられている。 工務店が定番の資材で仕上げたようなお仕着せっぽい部分が感じられない。わかってらっしゃるね! しかもそれらがことごとく徹底的に磨きマクラレているというマクラレ系銭湯だ。気持ちエエったらありゃしない。 副浴槽のたんぽぽ風呂はまあ普通の入浴剤だが、湯船フチのこまかな古タイルのワンポイントが泣かしよる。 すっかり感銘を受けてノビノビ入浴。上がるのがもったいないぞな。 数人の常連客も、「ゆっくり入るには道後温泉よりこっちがええな」と言っている。 ようやく上がって番台の主人に聞いたら、この銭湯は昭和28年築。それを先代が少しずつ改装していったのだという。奥壁の細かいタイルとモザイク画は当初のままだそうだが、新品みたいにピカピカでんがな。 あまりに気持ちよかったので、2日後に忽那諸島から戻ってきたときにもまた入りに行った。 その日は最後の客となったので、写真を撮らせてもらい、おだやかで知的な50代くらいのご主人にさらに話を聞いたら、なんと去年の暮れにこの銭湯を継いだばかりだという。 「先代が去年7月に亡くなりまして、12月まで半年近く店を閉めてたんです。それを私が会社をやめて再開させました」 なんと! この銭湯絶滅期にあって、会社をやめてまで復活させたとは・・・! ご主人に決断させたのは、亡き父君が手塩にかけていた銭湯への愛情であり、亡き母君の「風呂たのむで」の言葉であり、会社帰りに父君を介護しながら深夜の風呂掃除をし続けた自らの経験であり、そして再開を願う常連客らの声だったという。 「銭湯を継ぐにあたり、収入のことは考えると悲しくなるので、考えないことにしました」 まったく銭湯ってやつぁあ…チキショー涙が止まらねぇ。だるま湯に栄光あれ! ゴールデンウィークということで、この日、道後温泉は1時間待ちだったらしい。 松山に行ったら道後に行くのもいいだろう。だが俺は「朝は道後、夕はだるま湯」を推奨したい。 (2012.5.2) 「日の出」の三津浜焼きも推奨します |
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神ノ木湯 △
暑い暑い日。今治郊外での仕事を終えて、駅へ向かう途中に濃厚激渋銭湯あり。 今治駅からなら線路沿いに南東へ徒歩10分ほどで、銭湯背後の白い煙突に至る。 裏の道にまわると、左側のよく茂った樹木と、右側の歯科医院に挟まれて、奥ゆかしい面持ちのイニシエ銭湯が顔を覗かせる。 こ、このイニシエっぷりは・・・これはただごとじゃないぞ。 ![]() (左)古い旅館のような味わい (右)番台の背中部分が突出している この暖簾のやさしさ!とにかくすべてが木でできている。穏やかに揺れる涼しげな暖簾と、外から脱衣所まで素通しの開放感がたまらない。 大脳の奥がツーンときて、操られるように暖簾をくぐる。 ザ・開放感、とでも言うしかない開けっぴろげのタタキ。古い木の番台に、穏やかで人のよさそうなおかみさんが座っている。 ああ、これこの郷愁、もうどうしようもなく銭湯。 そして目の前には広々と板張りの床が広がり、右手には木の脱衣箱がどっしりと据わる。 ![]() (左)ここで寝転んで昼寝したいよ (右)俺の白いタオル 脱衣所の傍らにある体重計、これがすごい。これまでいろんな銭湯でいろんな体重計を見てきたが、これ、レトロチャンピオンではないか。 ![]() (左)第一級の骨董品 (右)中央のガラス窓から中の分銅が左右に動く様子が見える 浴室の入口は、太い2本の円柱の左右に2つある。こういうのも初めてかも。 豆タイルびっしり裸になって浴室へ。ここも広々とした空間だが・・・おっと、硫黄の香りだぞ! 真ん中にタイル張りの楕円形の主浴槽があり、奥に小さな電気湯と薬湯、ここに入れられたハップが香っているんだな、うれしいねえ。 驚いたのは天井だ。大きなカマボコ型に四角い湯気抜きが開いているが、全体がすべて豆タイルでびっちりと覆い尽くされている。これは壮観。 主浴槽は一部から元気よく気泡が出ていて、じつに気持ちよろしい。こんな暑い日は何度でも水をかぶって、何度でも湯に浸かる。これが最高ね。 奥の電気湯と薬湯はぬる湯だが、湯量が少な目なのがちょっと残念。その向かいにはサウナ室があるが、機能していない。タイルの目地もくすんでいて、かなりディープな気配が漂う。 でもカランはシャワーつきの自動調温式と、昔ながらの赤と青のとが対面に並んでいる。古いけど、そこそこ手が加えられている。 上がって扇風機に当たりながらおかみさんに聞くと、昭和8年の建物だとのこと。「戦後やり直したけど、戦前はもっときれいだった」そうだ。 しまなみ海道の開通で今治は本州と直結した。だが、おかみさんは「今治もさびれてしもて」とおっしゃる。 いろいろ話すうち、「遠くから来てくれたから」と冷蔵庫のポカリスエットをくださった。お金を払おうとしたが固辞され、恐縮しつつありがたく頂戴する。 ちなみに便所は外の、建物左側の植え込みの脇にある。これがまた渋い小屋だが、中は意外にもきれいな水洗トイレだ。 少し前までは建物の真正面にも大きな木があったらしい。 浴室はあちこちくたびれているが、ともかくおかみさんの人柄も含めて、強烈な郷愁感に満ち満ちた銭湯。泣けてきます。 (06.8.1) この飾らない風情をなんとしょう |
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大正湯 △
「映画のセットみたい」とはこの銭湯のためにある言葉だろう。 JR八幡浜駅から西へ徒歩10分弱、江戸岡交差点を過ぎて2本目の筋を右へ入る。正確な住所はわからない。電話帳にも載ってないし。 とにかく、このシブすぎる外観がスゴすぎて現実離れしすぎ。 ![]() 言葉なし蛇女ゴーゴンは見ただけで石になるというが、この大正湯は見ただけで俳優になる。否応なく俳優 in 銀幕。もちろん二枚目系ではない。セピア色の下町のおっちゃん系、腹巻に下駄でハナクソほじるシーン。もしくは裸の大将がよそ見して歩いて壁にぶつかるシーン。 リハーサルがすんだらいよいよ本番だ。戸を開けて入ると内側に暖簾がかかっている。 中も手の込んだセット状態。狭いタタキに番台があって、知的かつ上品なおかみさんが座っている。下駄箱が脱衣場に上がったところに置かれているのは大道具さんが寸法を間違えたのだろうか。 脱衣場では、板張り床と脱衣箱と天井が奏でるアメ色シンフォニーをバックに俺の脱衣シーン。ここから先はボカシが入る。 ![]() (左)ええ色してる番台 (右)脱衣場の奥から玄関方面 逆に玄関近くから浴室方面ここで映画はいきなりクライマックスを迎える。激レトロな浴室セットに主人公フルチンで立ち尽くして頬を伝う滂沱の涙。 ![]() (左)細かいタイル床の中央に楕円浴槽、非循環 (右)右隅に薬湯、左隅浴槽はカラ ![]() (左)激渋カラン列、シャワーなし (右)出ました!金属カランに「水」の刻印 ![]() (左)カラン下台、洗い出しのベテラン名脇役 (右)奥から脱衣場方面。天井が高い 無声映画を髣髴とさせるセリフなしの長回し。この空間映像がすべてを物語る。 なんといっても楕円浴槽の存在感、この年輪は貴重としかいいようがない。内側の段は幅が狭くて尻半分しか乗せられず、そこから底はコンクリ。その剥げ方がまた絵になる。 奥右側の薬湯はコラーゲンとバスクリンでまろまろ。湯船へりの布テープ補修が泣かせるぜまったく。 上がっておかみさんに聞くと、この建物は大正4年のものだという。修理に来た大工もしきりに感心しながら構造を見ていたらしい。 建物も設備も古くて相当くだびれているが、毎日のサラ湯を楽しみにしている常連からは「やめんといて」との声が多く、その声に押されて今日まで続いてきた。 銭湯に設備や快適さのみを求める人にはただのボロ銭湯かもしれない。だがこの大正湯の値打ちはそういう視点では測れない。 いまこの瞬間、現実のこととして、ここで風呂に入ることができる。スクリーンから飛び出た本物に直面する奇跡、それを実体験できることに大きな価値がある。 (2012.1.7) 忘れ得ぬ一湯 |
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