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三重県の激渋銭湯 | ||||||||||||
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廃業した三重県の激渋銭湯 | ||||||||||||
さくら湯 △
伊勢湾沿いの鄙びた漁村、白塚。その静かな迷路状路地を、巨大戦車のごとき原野ラリー車ランクルが地響きを立てて駆けまわる。 「いこに! 三重県の銭湯」の桶太郎さんが、白塚の小さな銭湯へ俺を案内してくださった。あたかも出刃包丁で髭を剃るがごとき風呂通いと言わざるを得ない。 やがて古い街道沿いの空き地にバカデカ車がジャリっと停まり、タオルと石鹸を持って、屈曲した路地を少し歩いた。 電車の場合は近鉄の高田本山という駅が近そうだが、1.3kmほどある。 ![]() ![]() (左)クランク状の曲がり角に (右)正面にシカのモザイク画 密集集落に忽然と現れる1軒の古い銭湯。クリーム色の化粧板が貼られた正面および屋号看板は真新しいが、瓦屋根の本体は相当古そうだ。 玄関部分はナナメに掘り込まれている。九州あたりで見かけるスタイルだ。暖簾はないが、ナナメの男女入口の間にあるシカのモザイク画が、銭湯であることを示している。 入るとタタキに番台、そして小ぢんまりとした脱衣場。特別なものは何もなく、ついでに平成もクソもない。 ![]() ![]() (左)エエ味出してるおかみさん (右)脱衣場、無音 ![]() ![]() (左)ベニヤ補修の脱衣箱 (右)この籠は貴重! 見たことのない丸籠がある。しかも造りが見事だ。これは貴重品に違いない。 その籠に脱いだ服を放り込んで、風呂場へと進む。 じつはこの風呂場は、ニッポン銭湯王国展に出品された松原豊氏の写真で知っていた。 だが桃太郎モザイク画をはじめとする実物のレトロっぷりをこの目で見ると、またなんともいえぬ深い感慨に包まれる。 ![]() ![]() (左)桃太郎のモザイクタイル画 (右)崩壊しかかっているカランまわり 奥壁には山と湖を描いたモザイク画もある。 それにしても相当な年季の入りようだ。小さな写真ではわかりにくいが、桃太郎の愉快なモザイクアートもさることながら、有り合わせタイルで強引に補修された床面や、変色した湯船タイルなどのインパクトに唸らされる。 特にカラン周辺はひび割れて崩壊の一歩手前という状態だ。 だが湯船にはアツアツの清澄なお湯がなみなみと沸かされており、その極楽感・贅沢感と、満身創痍の浴室とのギャップに目まいを覚えそうだ。 やっぱり風呂は実際にお湯に浸からないと、その価値はわからんのよね。 ![]() ちなみに白塚にはもう1軒、強烈な古銭湯がある。 全国的にこの手の超レトロ系は絶滅寸前だが、それが2軒残っているのは、松阪の「猟師の奇跡」と並ぶ「白塚の奇跡」であるといえるだろう。 (2013.10.27) ※「レトロ銭湯へようこそ関西版」に掲載されました。 ![]() |
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四日市温泉【廃業】
四日市駅には近鉄とJRがあって、近鉄駅前は栄えているがJR駅前は死んでいる。駅舎はデカイが、改札入って1番ホームが駐車場になってるのはどういうこっちゃ。JR東海は三重県に関しては捨てとるな。 駅を出て右へ進むと、激烈に昭和臭を漂わす一角となり、ものの5分かからずにこの茶色い四角銭湯が現れる。 ![]() ![]() (左)細かいタイルがびっしり (右)ボロさを演出する目隠しボード 楕円形の明かり窓がおもしろい。 でも玄関前の目隠しボードが…ムラのあるコゲ茶色で、しかも板のヘリがガタガタしてるんやけど、わざと? いや、朽ちてきてるんよね、たぶん…。 その割にかわいい三角形の営業案内が意表を突いてくる。 ナナメに掘り込まれた玄関を入ると、タタキに東海的な金属フタの下足箱がある。番台にはやさしげなおかみさんが座っている。 ![]() ![]() (左)ああ、とうかい (右)脱衣場 脱衣場はこぢんまりとした一般的レトロ脱力風景。開店時間まもなくのせいか常連さんたちで賑わっている。 外観のディープさの割に、内部は小奇麗でよい。 ![]() 浴室へ入ってオッと気づくのは、床にはタイルではなく切石が全面にきっちりと張り込まれていることだ。大阪の石畳ほど大判ではないが、まだ新しい感じで、落ち着きと清潔感がある。東海地方ではかなり珍しいのではないだろうか。 タイル張りの湯船は奥壁に並んでいる。左に深い主湯(ラドン鉱石入り)があり、ジェットとデンキ。お湯はかなりのアッチッチ。 出入り口近くに水風呂もあるのが嬉しいねぇ。 左右の壁のカランは、名古屋流の適温カラン1本式。島カランも1列ある。 ふーむ。激ディープな周辺のまちなみやこの銭湯の外観から、かなりのくたびれ系を予想したんやけど、全然そんなことはないぞ。壁タイルや天井もきれいやし、気持ちよくスッキリできる、ええ風呂やないの。 ゆっくり長風呂を楽しんだ。 上がって牛乳を飲みながらおかみさんに聞くと、石張りの床はご主人の好みで選んだとのことだ。じつによい趣味をされている。 あとは玄関前の目隠しボード、もうちょい明るい感じにされてもよいのではないかと俺は思いマス。 ちなみに、この銭湯の裏手には、言葉では表現しがたい激渋の呑み屋路地がある。必見だ。(2014.2.5) |
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三鈴温泉
近鉄の伊勢若松駅から平田町行きの支線に乗って鈴鹿市駅下車。 およそ銭湯がなければ乗ることもない列車、降りることもない駅。アホらしくも楽しい旅だ。 5〜6分も歩けば幹線道路の向こうに、鈴鹿市最後の1軒となった風呂屋の煙突が見えてくる。 「いこに! 三重県の銭湯」の桶太郎さんによると、去年あたりまで店主の体調不良かなにかで休業していたのが、今年になって週休3日ながらも復活したのだという。 はやる気持ちを抑えつつ信号を渡ると、道はいきなり狭くなり、お寺の鐘に連なって古式蒼然たる家並みが並んでいる。 三鈴温泉はその連なりの中にあった。 ![]() ![]() (左)額の真ん中に気合の「ゆ」 (右)どっちから見ても ![]() ![]() (左)向かいの文具屋かなんかも渋すぎ (右)暖簾をくぐっても下駄箱なし 暖簾は男女別だが、くぐると中は共通の玄関スペースになっている。 関西では普通ここで靴を脱いでから脱衣場へ侵入するものだが、ここは靴のまま次のステージへと進む。名古屋あたりで出会うパターンね。 男女別の戸を開けるとタタキに番台&下駄箱、ここでようやく靴を脱ぐことが許される。下駄箱も名古屋式の金属フタだ。 脱衣場は真ん中のベンチで、裸の濡れオヤジが全身から湯気を立てて座っている。サウナが脱衣場にあるパターンか。しかしこんなとこで体をさますなよ邪魔やがな! ・・・とここでフト張り紙を見たら、え? サウナ別料金500円やと! 驚いた。東京以外でこんなに高いサウナ料金は初めて見たぞ。 ふーむ、500円も余計に払ってるとデカイ態度をとりたくなるんか? 番台のおばちゃんも注意しずらい上客ということか? アルミロッカーに脱いだ服を投げ込んで浴室へ。 おお、広々! 脱衣場は窮屈やったけど、浴室は広くて、湯船以外の余白スペースがたっぷりあるぞ。 湯船は深浅の主湯と奥の副浴槽、そして手前に水風呂。どれも大きめサイズで、しかもお湯がなみなみ、入ったらザバーと溢れる極楽風呂ぢゃわいな〜。 主湯はけっこう熱くて俺好み。こいつと水風呂があれば無限に入っていられるもんね。 しかしこの広さならサウナを浴室に作れまっせ! その他、カラン・シャワー類は快調で使い勝手はよい。じっくりあったまれる、よき風呂だ。 復活した三鈴温泉、ここがなくなると鈴鹿市から銭湯の灯が消えてしまう。 サウナ500円の強気がええのか悪いのか知らんけど、とにかくがんばって続けてもらえることを祈る。 (2013.10.27) |
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都湯 △ 【廃業】
もはやナンピトたりともここを平成日本とは思うまい。 ディープさにおいて最強。ひとことで言うならば「サッパリわからん」だろうか。「目まい」かもしれん。 まず、どうやってたどり着いたらいいのかわからん。 住所は「松阪市町平尾町88」ということだが、どこで切ってどう読むのかもわからん。 「いこに! 三重県の銭湯」には「猟師町88」とある。旧町名のようだ。どうやら海辺の漁村らしいが、漁師ではなく猟師とは・・・何を狩ってるんだ。カワウソか? 松阪駅前のバス案内所で聞いた。 「猟師というところへ行きたいのですが」 「猟師ですか・・・バスはありません」 「歩いて行けますか?」 「遠いです」 「では猟犬にでもまたがって行けと?」 「愛知県のセントレア空港へ行くアクセス船が松阪港から出ています。そこへの連絡バスが比較的近くを通るのですが・・・」 バスも通わぬ猟師の村。恐ろしい。 ケータイのヤフーマップで見たら、その連絡バスの「セントラルグラスファイバー前」という停留所で降りるのが近そうだ。なんじゃそれ。 連絡バスの本数は少ない。2時間待って5時すぎのバスにやっと乗り、「セントラルグラスファイバー前」到着。そこから阪内川の河口近くにかかる橋を渡り、猟師村内に入る。 猟師は完璧に毛細血管状の迷路集落だ。テキトーに歩いても絶対にたどり着けないので、ケータイ地図と首っ引きの探索となる。もう日が暮れてワケわからん。 バスを降りてから右へ左へ折れ曲がりつつ歩くこと20分。歩いているうちに宮沢賢治の不気味な小説が頭の中を右往左往する。 やがて狭苦しい路地の向こうにようやく目指す都湯がその姿を現した。 ![]() ![]() (左)入口の路地上に波板のヒサシがある (右)お風呂屋さんのようです たとえば別府の梅園温泉なんかも狭い路地のスキマにある。だがその手前までは賑やかな商店街だ。 しかしここは20分間も真っ暗な迷路を手探りで歩き続けないとたどり着けない。現代の秘境と言わざるを得ないだろう。 ともかく、たどり着けてホッと安堵した。 暖簾をくぐるとタタキに番台がある。座っていたおかみさんは俺の顔を見るなり、どぎまぎしながらこうおっしゃった。 「うちはサウナもないし温泉でもない、ただのお風呂しかないんですけど・・・」 ヨソ者が来ることなど金輪際ありえない場所にヨソ者が突如現れたときに見られる典型的な反応だ。 「はい。お風呂に入りに来たんですよ」 と言って金を払い、服を脱いで丸籠にほうり込む。 武骨なコンクリ造りの脱衣場は、壁や天井が一部ハゲ落ち、相当な年季が感じられる。 ![]() ![]() (左)入口付近 (右)味わい深い階段下ロッカー、誰も使わず ![]() ![]() (左)男女壁付近 (右)浴室 湯気いっぱいのコンパクトな浴室には先客が2〜3人いた。 天井は老築化が進み、中央部分は青いネットで内側から覆われている。塗装やコンクリが剥げ落ちてくるのだろうか。 中央奥に2槽の湯船がある。奥の浅いほうは気泡が豪快に噴出中。 たっぷりのお湯はやや熱めで、なんともいえず心地よい。 カランは男女壁に沿って5つくらい並んでいる。 他客がみな帰ってからも、お湯の心地よさに身を任せて長風呂した。 日も落ちて真っ暗な、海の近くの猟師の村。迷路の奥の奥にある、ヨソ者は誰も来ない古びたボロ銭湯で、なんの因果で俺は素っ裸で湯船に浮かんでいるんだろう。 人生は愉快なり。笑えるぜまったく。 上がって脱衣場でケータイぴこぴこしていたら、「いこに!三重県の銭湯」の桶太郎さんからメッセージが入った。 「そのすぐ近くにもう1軒ありますよ。30メートルほどしか離れていません」 30メートル!? ほんまかいな。 服を着ておかみさんに挨拶し、外へ出て右方向へ30メートルほど歩いたら、ほんまにもう1軒現れた! ![]() 中から風呂場の音が漏れてくる。盛業中らしい。 帰りは道に迷って、来るとき以上に時間がかかったが、どうやら猟師にはもう一度来ることになりそうだ。 (2013.10.28) |
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花岡温泉 △
「松阪へ来たら花岡温泉にもぜひ」と桶太郎さんが言っていた。 彼が薦めるならきっと激渋系に違いない。そして三重県の激渋系はシャレならんということを俺はすでに学んでいる。 でもこの日の俺は迷岳というキツイ山に登っての帰り道、どっちかちゅーと設備系のジェットでもみほぐしたりデンキびりびりしたりしたり水風呂ドバーっといきたい気分なのよね。 花岡もたしかに気にはなるが・・・といちおう松阪駅へ戻るバス車中でガラケー検索してみたら、なんと、このバス沿線かいな! 仕方がない。これは行けということだろう。ジェットよデンキよさようなら。 ガラケーのヤフー地図と車窓の景色をにらめっこして、近くっぽい停留所で下車。「小黒田」で降りたかな? もひとつ先でもよかったかも。ちなみに松阪駅へはまだ2.5kmほどある。 国道から東へ入って少し探すと、出ました、写真で見たことのあるアーチ! この瞬間、自分が疲労困憊していることは忘却の彼方へと消し飛んだ。 アーチをくぐって進むと、燃料らしき廃材が山積みされている。 ちなみに屋号は温泉だが湯は温泉でないことは言うまでもない。 ![]() ![]() (左)いきなりこれかい! (右)煙突瀕死 その廃材山の向こうにあるのが風呂らしい。質素な玄関が横っちょにあり、金属製の看板が掲げられている。 その玄関付近のゴチャゴチャした感じがいかにもディープ。 ![]() ![]() (左)玄関 (右)金看板 ![]() ![]() (左)下駄箱&段ボール (右)番台周辺の風情よし 脱衣場は古い銭湯特有のなんともいえん脱力ムードに満ちている。ていうか番台にもどこにも人がおらん。そのへんにテキトーに小銭を置いとこか。 エアコンなどあるわけもなく、むし暑い。やる気なさげなベンチがある。丸椅子もポツン。 なんだか立っているのもアホらしくなってベンチに座る。 でも座ってても仕方ない。のろのろ立ち上がり、服を脱いで浴室へ。 ![]() ![]() (左)脱力空間 (右)一目見て、究極系の浴室 きました、これもんです。 中央に四角い湯船ドン。細かいタイルはげはげ。湯はぬるい。非循環。シャワーなし。奥の副浴槽にはお湯がチョビットしかない。 ザ・老築化。説明はもうそれでいいだろう。 重油の高騰で設備系銭湯もバタバタ倒れる中、こういう弩級ディープな薪沸かし銭湯が意外に残ってたりするんよね。とくに三重県。 とりあえず、かかり湯して汗を流してみる。湯に浸かってみる。カランひねって体洗ってみる。水もかぶってみる。 そこらじゅうのタイル剥げや傷みが、そこはかとなく情けない感じを誘う。 ダラーっとしてみる。それなりに筋肉疲労が溶けていく。 ここどこやねん。わざわざ来て何やってんねん。 ほんで俺、なにがこんなにオモロイねん。 銭湯に快適設備や清潔さのみを求める人には、時代遅れのボロ銭湯でしかないだろう。 だが、歴史のハザマに落ち込んでみたい人、ちっぽけなオノレの存在と認識の不確かさを前後左右に揺さぶられたあげく忍び笑いからしまいにゃ単独爆笑ののち精神的な一皮ムケの感触を楽しめる人には、こういう銭湯とのめぐり合わせは奇跡的な体験となる。 ダラダラしてから上がると、人当たりのいいご主人がいた。 いつもなら何かとおしゃべりすることが多いけど、疲れていた俺は少し天気の話をしただけで、ダラダラと服を着て「ありがとう」と外へ出た。 廃材置き場まで戻ったところで、「スタンプはいいんですか?」とご主人が追いかけて来られた。 そう三重県の銭湯はいまスタンプラリー実施中だ。そのためスタンプ目的で常連以外の客がときどき来るのだろう。”この人もそうに違いない、でもうっかりスタンプを忘れて帰ろうとしている”と思われたようだ。 じつを言うと俺はとうにスタンプ台紙をどっかにやってしまい、ラリーとは無関係にあちこち入っている。 そう言うと、「ちょっと待って!」と言って、家から出てきたおかみさんに新しいスタンプ台紙を持ってくるよう依頼し、自分は脱衣場へ取って返して、「これどうぞ!」とよく冷えた缶コーヒーを持って走ってきてくださった。 激渋銭湯の旅では、こういうことがたまにある。 そのたびに俺は泣きそうになる。 ![]() |
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霊泉湯
あーキモチエ〜。湯上りに表に出て思わず口走った。 JR伊勢市駅から徒歩7〜8分、近鉄駅の北口からなら5分かからんかも。 遠くから見える煙突に近づいてゆくにつれ、周囲の昔ながらの風景を圧して、一つ目小僧のごとき看板建築の威容が迫ってくる。 ![]() ![]() (左)瓦屋根の体躯に異形の顔貌 (右)ネオンだ! 夜に見たい! この迫力。俺は湯屋だと強烈に主張する水色ペンキはメンテもよく、しみひとつない。しかし本体は瓦屋根の昔ながら系建物のようだ。 このとってつけた感こそが銭湯建築の醍醐味ね。 しばし眺めてから入ろうとしてビックラこいた自動ドアだ。しかも入って正面フロント&ロビー式に改装されている。 ここまでは大型のリニューアル銭湯を思わせたが、でもそれより奥は昔ながらサイズ。フロントは脱衣場を仕切っただけなのね。 脱衣場の隅にある扇形の手水鉢にイニシエな味わいがある。 浴室も玄関までの迫力に比べてこぢんまりしている。中央に深浅の楕円形主湯、奥に気泡とジェットの副浴槽という一般的な地方銭湯スタイルだ。 だが! このコンパクト空間は非常にスグレモノやおまへんか。 まず湯船を彩るピンクやレンガ色の細かいタイル群、床に敷き詰められた青ときどきピンクのくっきりしたタイル群がなかなかよろすい。 奥壁にはタイル6枚分の小ぶりなタイル絵が2点(金魚と鯉)ある。 男女壁はレンガ調で、上部はカマボコカーブ処理されて豆タイルが貼られ、さらにそこへ観葉植物の鉢がしっかり固定されているという凝った造りになっている。 派手さはないが、ワカル人にはワカルというセンスのいい浴室だ。 見た目だけではない。床全体が主湯を頂点としてカラン下の溝へ向けて傾斜があり、排水速度が小気味よい。 またカラン・シャワーともに水圧よろしく、鏡下の台まわりも余裕があって使い勝手がきわめてよい。 そして最も特筆すべきは、これらすべてが、これ以上は無理というほどに徹底的に磨き上げられている。清潔度の高さに経営者の愛情と執念を感じないわけにはいかない。 脱衣場の棕櫚マットも新品状態くすみゼロ。 ほんでまたお湯がエエんだわ。いきいき、やわらか。 上がって70手前くらいのおかみさんに聞くと、水は井戸水と水道水の混合で、それを薪とオガクズで沸かしているそうだ。 ひとことで言って、気持ちのいい風呂。やっぱりお風呂はこうでなくっちゃね。 今度はネオンの光る夜にぜひ来たい。 (2011.7.24) ※「レトロ銭湯へようこそ関西版」に掲載されました。 ![]() |
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伊勢湯 ≪廃業≫
伊勢市駅から外宮内宮スルーして銭湯直行するのがホンマもん。 大通りからちょっと入ると、空き地も目立つ静かな住宅地。その中でポツリンコと地味にたたずむその名も伊勢湯。われこそ伊勢の風呂屋なり。 暖簾くぐればタタキに番台、気さくなおやじさんナイス。 ![]() ![]() (左)前ガバ開き番台 (右)タタキ脇の壁の傘さし、このパターン珍しい 脱衣場は正統派のスッキリさん。心が落ち着くクラシカル空間。 アルミロッカー清潔美麗、天井ファンの回転優し。古い建物のエエ雰囲気を維持しながらのほどよい手入れセンスよし。 ![]() ![]() (左)男女仕切りの鏡が渋い (右)この小テーブルが最高。居座ってモヒート飲みたい ![]() ![]() (左)流し台のウロコタイル! (右)浴室もスッキリさん 浴室は新しいタイルに改装されてレトロ風情は少ないが、石亀やモザイク画などもあって楽しめる。 手前の主湯の気泡がなかなか豪快だ。 ![]() ![]() (左)なんで亀…? (右)ドイツかどっかの絵柄 手前の主浴槽に「あつ湯」、奥の副浴槽に「ぬる湯」と表示があるが、温度差は1度くらいかなー。ぬる湯でも42度くらいだから近頃の若者には熱いんかも。 副浴槽は隅の檻に麦飯石らしきものが入っていて、快適なジェット付で心地よし。 古いけどメンテは上々、清潔でじつによい。とくに脱衣場の空気感がよい。ご主人のお人柄によるものだろう。 ここで天井ファンの風に吹かれながらのんびりとカクテルでも飲みたいね…あ、さっきも書いたか。 そんな伊勢の伊勢湯、オーソドックス真っ向勝負なナイス銭湯だ。(2014.5.29) ![]() ![]() (左)看板の文字がイイ! (右)暮れゆく伊勢湯 |
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大師湯 ≪廃業≫
伊勢市駅からバスに乗って「黒瀬町」で下り、ナナメ左45度の方角を見れば、煙突から煙が上がっているやないの。 それを目指してテキトーに歩けば、ものの3分で旧街道沿いに地味な銭湯が現れる。 ![]() ![]() (左)あれに見えるは風呂屋ぢゃないか〜 (右)よき街なみ 玄関は少し掘り込まれたように引っ込んでいるが、その滑らかなカーブ具合がたまらんやないの。 ![]() ![]() (左)この感じ (右)シューッと女湯へ吸い込まれ・・・アカンアカン! ![]() ![]() (左)こっちに吸い込まれとこ (右)タタキに脱ぎっぱなし 玄関を開けると誰もおらん。渋い木の番台にとりあえず風呂銭を置いて服を脱ぎにかかる。ええ感じの木製脱衣箱が鎮座しとるやないの。 ![]() これぞ日本の銭湯、ともいうべき風情に満ちた脱衣場。ヨイではないか。 スッポンポンになったころに、女湯方面からおかみさんらしき人が「ごめんごめん〜」と笑顔でご登場。このお方も感じええやないの。 浴室へ進むと、男女仕切り壁に接して長方形の湯船がポンとあるだけのシンプル体勢。壁画などもとくになし。 湯船は大小2つに仕切られている。広いほうはジェットつきの深風呂で、狭いほうは棺桶サイズだが・・・なんやものすごい勢いで気泡がボッコンボッコンに盛り上がっていて、浅いんか深いんかわからん。へたすると湯面から10センチくらい湯玉が盛り上がっとるぞ。いずれにせよハヨ入りたいぞハヨハヨ! あせるな、まずは深いほうへ。おぉ、びしっと熱いけどやわらかくてエエ具合、お湯の熱が冷え切った体の奥まで一気に染み込んできやがるぞ。 そして次に棺桶のボッコンボッコンへ移動してボデーを沈める。ウッヒャーこいつは最高、背中といわずケツといわずボッコンボッコンが無数のパンチを浴びせかけてきよるわい。 すぐにメタメタぬくもった。でもここには水風呂がないので、カランの水を桶に溜めて頭から何度もかぶる。少し休んで、またボッコンボッコンとアツアツ深風呂、そして再び水かぶり・・・この無限ループ。 やがて骨髄の最深部までが完璧にホテリ倒した状態を完成させて上がった。上がったけど汗ひかん。ぜんぜん汗がひかんがな。しやから服きれん。服が着られへんがな! 半裸のままおかみさんとしばらく談笑しつつ、ゆっくり服を着る。いやもー真冬の寒波の最中とは思えん。暑い。セーターなんか冗談やない。 レトロな風情よし、お湯よし、気泡よし、おかみさんよし。なにもかもよくて帰り道も意味なくニコニコ。銭湯、ホンマ最高。 (2015年1月) |
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一乃湯 ★
クソ暑い日に長い距離を歩き、バテ気味の子らを連れてやっとたどり着いた1軒の古い銭湯。子どもらが渋銭ファンのはずもない。これは賭けだ。不評を買うと帰路が思いやられる。 だが、ここ一乃湯はそんな不安を吹き飛ばしてくれた。 近鉄伊賀線上野市駅から銀座通りを南へ10分ほど歩き、シェル石油の手前路地を右へ。田舎丸出しののんびりした路地をゆくと、お寺の向こうに煙突が見えてくる。 正面には自販機に挟まれて石門があるが、その上に何やら・・・なんと、ネオン! 温泉マークの中に屋号が書かれている。これは珍しい。 そしてぐぐっと奥に貫禄の日本建築。小学生も思わず「おおーっ」と声を出す渋さだ。 ![]() ![]() (左)銭湯に興味のない人でも思わず立ち止まる (右)夜にも来ないといけません ![]() ![]() (左)門からのアプローチ右には石塔も (右)堂々の唐破風、上にちょこんと雑草萌え 暖簾をめくると、まだ屋外なのにいきなり下駄箱が並んでいる。このパターンは初めて。トイレも右手の庭先にある。 ![]() ![]() (左)わりと新しい下駄箱 (右)トイレ方面から暖簾の内側を見る ![]() 戸を開けて入るとタタキに番台があるが、愛想のいいおやじはそこには座らず男湯側で迎えてくれる。料金は値上げ前のまま300円、嬉しいねえ。 そして目の前には、広々としたイニシエ脱衣所が気持ちよく広がる。天井、床、壁、柱、すべてが人の心を和ませるために存在するかのごときくつろぎ空間。 おやじによると、「大正15年の建物」だそうだ。「この欄間は変わってますねー」と言うと、「これは値打ちもんでっせ。でもところどころフシが自然に抜け落ちてしもうて、あそことあそこと・・・」と顔をほころばせる。 おやじがこの銭湯を我が子のようにかわいがっていることをこの時点で確信した。そのことイコール激渋銭湯の証。 ![]() ![]() (左)ロッカーは新しい (右)木目の隙間を抜いて透かし彫りのように仕上げられた欄間 ![]() ![]() (左)堂々の折り上げ格天井 (右)浴室との間に中庭がある。この風情がたまらん 浴室への渡り廊下に流しがあり、横の中庭には池があって鯉が泳いでいる。まったくもってすばらしい。 ![]() 浴室は一転して改装済みでピッカピカ。 だが、湯舟ヘリや座り段、カランまわりなど要所には御影石や大理石が使われていて、安っぽくなくセンスがいい。タイルも小さめのものが多用され、21世紀もなんのその、丸い豆タイルも登場だ。じつに僕好み。 湯舟は手前から浅、深、電気と並び、42度くらいの湯がなみなみと満ちている。 電気風呂から湯が順に流れてくるパターンだが、大阪兵庫によくある大手工務店の「流れ風呂」とはやや異なって、最後は滝式にすべての湯を回収するのではなく、浴槽内側の喫水線に並んだ穴に吸い込まれる式。しかしその穴が小ぶりなため吸収には限度があり、人が浸かるとかなりな量がオーバーフローして排水溝に流れ去る。 素晴らしい贅沢感。しかもこのほうが滝式みたいに手鼻なんかを流されずにすむ。 さらに奥には気泡寝湯、ジェット2連、水風呂が並び、手前には立ちシャワー。サウナと露天以外はフルセット装備だ。この古銭湯にして、これは嬉しい誤算。子どもらは水風呂に入りっぱなしだ。 どこもよく磨かれていて気持ちがいい。いちばん気に入ったのは深風呂内の奥にある腰掛け部分。お尻が接するカーブと豆タイルの感触がたまらん。 窓は低い位置にあって明るく、外から網戸にツタがからんでいる。窓の外は野草ボーボーの庭、これまた田舎風情でよい。 上がりは牛乳などあり。 おやじいわく、「昔は湯舟は全部石だった」とのこと。 「それはそれで風情があったでしょうね」と言うと、おやじはうなづきながらも、しみじみとこう言う。 「でも掃除が大変やった。タワシでこすらんと、人の脂いうのんはなかなか落ちへんから」 子どもらは脱衣所のソファーで牛乳を飲んですっかりくつろぎ、僕が「そろそろ帰ろか」と言っても「もうちょっとのんびりしていきたい」と言ってなかなか立たなかった。 その気持ちはよくわかる。この建物は伊賀市の「まちかど博物館」にも選ばれているらしい。落ち着いた伝統空間に、各種揃った設備と清潔管理。店主の愛情がビンビン伝わる激渋銭湯だ。 すっかり元気を取り戻した子どもらと口笛ふきふき家路についた。 (2005.7.17) ※「レトロ銭湯へようこそ関西版」に掲載されました。 ![]() |
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池澤湯 ★
伊賀鉄道茅町駅から、迷わなければ5〜6分。でもぐねぐねした路地の奥にあるから、たぶん迷う。松尾芭蕉ゆかりの蓑虫庵からすぐ近くやから、まず蓑虫庵を目指しましょう。その角に看板あり。 でもこういうややこしい場所にある銭湯ほど味わい深いと相場が決まっている。 ![]() ![]() (左)路地奥だが駐車可能 (右)看板建築とコンパクトな全体 目をひかれるのは、外壁に描かれたファンシーな絵だ。エッジの効いた富士山に楽しげな野菜たち。これは三重県で銭湯を応援する「サルシカ隊」の人たちが描いたものらしい。 ![]() ![]() (左)角に富士山が! (右)野菜の絵が! 中に入るとタタキに番台の古いスタイル。おかみさんが座っておられる。 脱衣場はこぢんまりしていて、どこがどうという以前に心がポンワカしてしまう。日本の良き庶民文化を濃縮した不滅のくつろぎ空間だ。 ![]() ![]() (左)おかみさんと二代目ご主人 (右)昔ながらの小空間 まあとりあえず浴室へ。湯気いっぱいだが・・・むむっ! こちらもコンパクトながら、なんか見るべきもんがいっぱいあるぞ。こいつは楽しい! ![]() ![]() (左)カワイイ浴室! (右)誰が描いたのか富士山 ![]() ![]() (左)鯉のタイル絵 (右)男女壁にもタイル絵が! ![]() ![]() (左)薬湯ジェット横には金魚のタイル絵! (右)迫力の給水装置 真ん中の主湯の周囲は、大阪式のかまち(段)が取り巻いている。だが10cmちょいの高さしかない。神戸西部のようだ。 そしてそこに貼られている薄ピンク色の丸タイルがなんともよろしい。 お湯は熱めでポッカポカになるわいのー。薬湯ジェットやブクブクもあるし、カラン・シャワーも快調で、どこもよく磨かれていて言うことなし。 奥壁の富士山は、伊賀在住の絵描きさんが描いたそうだ。ゆったりしてて色が濃くて、なんかこれもかわいいぞ。定期的に書き換えているらしい。 そして風呂上がりにはなんと! コーヒーが無料で飲めるのぢゃ! ![]() ![]() (左)おかみさんに送られた絵手紙 (右)コーヒー無料サービス! ![]() 他にも小さな木彫り人形などの小物が飾られているが、ゴチャゴチャ感はなくて、何かどれもハートウォーミングなのよねー。 ご主人の池澤さんは銀行員から転身してここを守っている。銭湯業界では変わり種だ。 そして銭湯経営と同時に、上野の中心部近くで「うどん屋池澤湯」もやっておられる。これも珍しい。しかもうまい! そして、うどん屋のサービス券にハンコを集めたら1回無料で風呂に入れたり、逆に風呂カードにハンコを集めたら無料でうどんが食える、などのサービスもある。 忍者の町の路地裏深くに、こんな素敵な風呂屋が隠れていて、うまいうどん屋もやってるなんて・・・伊賀上野オモロイ! 行くべし。 (2013.11.19) ※「レトロ銭湯へようこそ関西版」に掲載されました。 ![]() |
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新町温泉
名張に唯一残った貴重な銭湯。 駅から徒歩10分ちょい、古いまちなみが濃厚に残る一角で、江戸川乱歩の生家そば。新町というくらいだから元遊郭があったんかな。 そんな中にひょこんと、玄関上部のつくりがモダンなお風呂屋さんが現れる。松の枝ぶりも印象的だ。 ![]() ![]() ![]() (左)これぞレトロ銭湯 (右)歴史を見つめてまいりました 暖簾をくぐって目の玉ひんむいたでワシャ。なにこの下駄箱! こいつは博物館収蔵レベルだろう。 あとで聞いたら「カワウが鮎を捕えた瞬間」だそうだ。その瞬間を下駄箱にしてみたのね・・・って、なぜだ! ![]() ![]() (左)下駄箱下の上がりがまちのタイルにも注目 (右)ここまで凝るか! こういうレアものが見られるのが地方銭湯の楽しいところだ。 中へ入ると、古い木の番台に、気のよさげなおやじさんが座っている。 ![]() ![]() (左)ええ感じや〜 (右)招かれました 脱衣場は板張り床が素足に心地よく、郷愁系ながらも清掃&整理整頓が行き届いたナイス空間。サウナ室が浴室方面から飛び出してきている。 創業は明治ヒトケタの1873年、建物自体も相当年季が入っているはずだが、ボロいケハイはまったく感じられない。 ![]() ![]() 浴室は深浅の主湯に気泡、デンキ、薬風呂、スチームサウナ、水風呂と設備が揃っており、しかもすべて磨きこまれていて快適そのもの。 浅風呂の底には鯉のタイルが泳いでいる。 腰かけは据え付け型で、カラン・シャワーともに快調。 いやーもうね、じつにヒジョーに心地よい。これぞ銭湯! なんぼでも居られるぞ。 風呂屋稼業に対する店主の愛情とポリシーをしっかりと感じさせられる、よき風呂だ。近所にあれば絶対に通う系。 おやじさんによると、台風による土砂崩れでダムに浮いた木を燃やしてくれと市に頼まれて使っているが、その扱いに生傷が絶えず、メッチャ大変とのこと。 ご苦労様です! 風呂もおやじさんも素敵です。 (2014.2.4) |
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新生湯
尾鷲駅から商店街を海へ向かってまっすぐ歩き、突き当りで1筋左へずれてさらに進む。そのまま行けば1分ちょいで尾鷲漁港に出るあたり、少し曲がった狭い道沿いに青塗りの木造小家屋あり。 この色と暖簾がなければ銭湯とは気づきにくいたたずまいだけど、玄関上の小屋根と正面タイルがタダ者でないな。 ![]() ![]() (左)浴室屋根まで青く塗られている (右)チープに灯る 暖簾をくぐって渋い木のガラス戸を開けると、狭いタタキに番台がある。誰もいないのでコゼニを置いて勝手に上がる。 狭い脱衣所は漢数字の書かれた木のロッカーとマッサージ椅子だけのシンプル空間だ。隅にある流し台の細かなタイルがかわいい。 ![]() ![]() (左)番台周辺 (右)脱衣箱周辺 浴室入り口の少し手前で天井が一段高くなっていて、そこから先は壁も天井も外観と同じ青色に塗られている。浴室も同様だ。 三重の銭湯マニア・桶太郎さんによると、これらはすべてここのおかみさんが一人で塗られたものらしい。天井や屋根も脚立やハシゴを立てて塗った苦心作。扇風機の裏まできれいに塗ってあるぞ。仕上がりは素人仕事には見えない。 むー、タダ者でないのはおかみさんであったか。 ![]() 浴室も小さくて、家庭風呂みたい。壁に接してタイル張りの湯船がひとつポンとあるだけで、気泡もジェットもなんもなし。 だが、かかり湯をした瞬間ちょっと驚いた。 湯はやや熱めだが、ひじょーにまろやかだ。そして新鮮さを感じる。これは名水ではないか。うほっ、心地よか〜。 いくつかあるカランにはシャワーもついていて、コンパクトながら風呂としては十分だ。いろいろ設備が揃った銭湯もいいが、こういう小さなシンプル銭湯もこれはこれで全然よい。 それにしても、いい湯だ。尾鷲は屋久島と並んで降水量が多い土地だから、地下水も森のミネラルをたっぷり含んで常に新鮮なのかもしれないな。 あがるとおかみさんがいた。ここを一人で切り盛りしているらしいが、小柄で細身ながらもめっちゃ元気。よく動きよくしゃべる、港町のざっくばらん系オカーチャンだ。 (2011.2.10) ※「レトロ銭湯へようこそ関西版」に掲載されました。 ![]() |
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五月湯 ≪廃業≫
駅から一つ目の信号を左(北)へ徒歩数分。突き当たりの右手に煙突が見える。でも建物は道路に面しているのに玄関はナナメ後ろを向いているぞ。ハニカミすぎではないか。 道路拡幅前は家々が建て込む狭い路地の中にあったのかな。 ![]() しかしまあここも尾鷲の他2軒に負けず劣らず渋い面構えだ。ただならぬオーラを感じる。 戸を開けると木の番台におかみさんがいて、「300万円」とおっしゃる。「はい、300億円」と言って300円を渡すと、たいそう喜んでくださった。 ![]() ![]() (左)番台周辺、男女を分かつカーテンを吊るじゃばらが素敵 (右)タタキと上がりがまち そこそこ広い脱衣場はクラシック一色。板張りが素足に心地よい。格天井の3枚羽プロペラはぶっ壊れたのか紙でくるまれている。 これくらいのレトロ加減は尾鷲標準だが、都会にあったらチャンピオンクラスよね。 ![]() ![]() (左)脱衣箱 (右)格天井 ![]() 裸になって浴室へ進むと、奥にタイル張りの2槽が並ぶスタイル。 どちらも深くて、左は43度くらいでジェット1本あり。右はかなり熱くて45〜46度くらいはありそう。横に湯もみ棒があって、それで混ぜたら底の湯はさほどでもなかったようで、1度は下がった感じだ。 この日は朝から尾鷲には珍しく雪が積もって、その中を歩き回ったから全身ヒエヒエ。だから熱い湯がうれしいねぇ。 アツアツに湯立って、カランの冷水をかぶる。この反復で寒さを感じないカダラになるんだよ。 上がって聞くと、おかみさんがここへ来た40年前には浴室中央に楕円形の湯船があり、シャワー設備もなかったそうだ。そのため湯船の周囲で頭を洗う人が多く、湯船にどうしても泡や髪の毛が入る。 「それが嫌で今みたいに改装したんよ」 大阪じゃ今でも湯船まわりで頭を洗うけど・・・そのための座り段までおます。 清く熱き尾鷲の湯に乾杯。(2011.2.11) ![]() ※「レトロ銭湯へようこそ関西版」に掲載されました。 ![]() |
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みはま湯
熊野市駅の正面に要害山という小高い丘がある。その丘に沿って左手へまわりこんでいくと、駅から徒歩7分ほどでこの銭湯が現れる。その名のとおり、浜辺がすぐそこだ。 無表情な白モルタル塗りだが、門柱のアーチや外塀の裾に残るタイルに昔ながらの銭湯らしい味わいあり。 ![]() ![]() (左)アーチくるくる (右)このタイル! この日はもー寒すぎて体がおかしくなりかけているんだよ〜。 さっそく中へ入るとタタキに木の番台があり、美人のおかみさんがいる。 ![]() コンパクトな脱衣所はそこそこ改装されて、あまり古いものはない。ロッカーは縦長のステンレス製だ。 男女壁の上にT字型の白い金属支柱が左右に伸び、その先に扇風機を取り付けてあるのがユニーク。支柱には造花が巻かれていてかわいらしい。 ![]() ![]() (左)扇風機の取り付け方に注目 (右)会社の更衣室的ロッカー 浴室も改装されてピカピカ。湯船は男女壁に沿って、手前から気泡・深・デンキ・水・スチーム(強力)と一列に並んでいる。気泡風呂も深風呂と同じ深さがある。 最近の改装は無表情な淡色の大判タイルでスッキリまとめられてしまうことが多いが、ここは湯船のヘリやカランまわりなどに珍しい濃色の細かなタイルが多用されていて、それが非常にヨイ。やっぱこういうアクセントは大事ね。 ![]() 寒い夜、真っ暗な中をたどりついた熊野の風呂はピチピチと清潔な快適風呂だった。銭湯よければ旅もよし。(2011.2.11) |
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