関西の激渋銭湯
チープに極楽。生きててよかった!
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【名古屋市】の激渋銭湯
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神明湯 ★(名古屋市北区)(廃業)
桜湯 (名古屋市西区)
(廃業)
萬歳湯 (名古屋市西区)(廃業)
金時湯 ★(名古屋市中村区)
地蔵湯 (名古屋市中村区)
寿湯 (名古屋市中村区)(廃業)
廓湯 (名古屋市中村区)
(廃業)
出口湯 (名古屋市千種区) 
喜乃湯 ★(名古屋市昭和区)(廃業)
富士の湯 (名古屋市熱田区)
(廃業)
道徳温泉 (名古屋市南区)
共栄湯 ★(名古屋市南区)
(廃業)
愛知県下はこちら

神明湯 (廃業)

2006年11月ごろ廃業された模様。
レポートは営業当時のものです。
(HATOさん情報感謝)


名古屋市北区辻町4−71
電話  052−981−0275
【営業時間】16:00〜23:00
【定休日】日曜日

【料金】380円


 名古屋から名鉄小牧線に乗ろうと思ったら「上飯田」という中途半端な場所へ行かんならん。で、せっかくだからその近辺の銭湯へ。
 市バス「名駅13系統」で15分ほど、上飯田の少し手前の辻町で下車して東へ2分。派出所の隣で赤文字スクロール式の電飾看板が点滅している・・・と思ったら、バリバリ懐古系外観の神明湯登場。

 
(左)真正面の電光看板が堂々のミスマッチ  (右)正面の鬼瓦

 暖簾はかかっていない。正面破風の左右が空いており、その内側に男女別の入口がある。
 この空間にはベンチなどが置かれて、ちょっとした待ち合わせ場所になっている。

 
(左)この玄関ガラス戸、しっぶいわ〜  (右)風情満点の待ち合い所

 すりガラスの戸を開けると間口分の横長タタキがあり、古い番台におやじが座る。端に木の下駄箱、こいつも古い。
 広々した脱衣所の雰囲気が素晴らしい。天井は中央の照明部分だけ改装されているが、四周は立派な格天井になっている。
 木の柱や欄間の茶色と、しっくい壁の白色がなんともたまらん昔ながらのハーモニー。真ん中にすりガラスのはまった木製ロッカーもエエ味出しとるがや。

 脱衣所と浴室は別棟になっていて、連結通路に流しと水シャワー。横には中庭があり、大きな岩が配された池になっているようだが、上が閉じられていて暗い。

 浴室は明るく、なかなかの広さ。中央に楕円形の深風呂、少し離れて奥に薬湯と、浅いジェット&気泡&電気。適度に改装されていて、さほどの古さはない。
 正面の奥壁上部に、男女ブチ抜きで描かれたモザイクタイル絵がバーン。仕切り壁の中央に富士山がそびえ、横に湖、藁葺き家などが描かれている。なかなかノビノビとした風景やおまへんか。

 お湯に入ってみると・・・おや、なんや非常にやわらかいぞ。ふんわふわだ。そして深風呂、浅風呂、薬湯とだんだんぬるくなる温度傾斜も嬉しいねえ。
 薬風呂は「清涼温浴剤」と書かれているが、濃い黄土色、これはさらに徹底的に肌触りやわらか。浅風呂の気泡も気色ええど。
 極楽度、高し。あへへ〜。

 カランは赤押し1つの自動調温式。シャワーともども、温かくなるのにやや時間がかかったかな。
 でもカランまわりは壁が少し掘り込まれ、しかも下の溝がかなり深くなっていて使いやすい。ちょっとしたことだが、これは生活銭湯としてポイント高し。

 上がりは飲み物販売いろいろあり。くつろぐなあ、この脱衣所は。
 古い建物の良さがしっかり残ったこの雰囲気、湯のやわらかさ、極楽系薬湯、カランまわりのグッドデザインなどで、★つき当然の激渋銭湯だ。電光看板のヤル気も嬉しい。

 帰りは上飯田駅までブラブラ歩いて10分ほど。
 定休日・営業時間が組合HPとは異なっているので注意。  
(2006.3.14)

 
夜になると窓の電飾がまたたく
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桜湯 (廃業)

2008年12月6日で廃業された模様。
レポートは営業当時のものです。
(HATOさん情報感謝)


名古屋市西区名駅2−18−3
電話  052-571-0047
【営業時間】16:00〜21:00
【定休日】木曜日


 名古屋駅から徒歩数分、便利な激渋銭湯だ。

 名古屋駅を正面に出て、ツインタワーと大名古屋ビルヂングの間の駅前大通りを北へ歩く。曲面の印象的なルーセントタワーを過ぎたら、1筋東の一方通行の道に移動してさらに北を向く。
 あれに見えるは風呂屋の暖簾だよおっかさん。斬新な巨大ビル林立の名古屋駅前にポッカリ空いたイニシエホール。まぎれもなく時空のズレが生じている。
 ルーセントタワーとの対照的風景がなんともおもしろい(上写真)。

 
(左)間口横断的改装だが、建物は古いぞ   (右)大きな木彫りの屋号

 暖簾をくぐると玄関スペースだが、ここには下駄箱はない。男女に分かれた二つ目の暖簾をくぐると、タタキに木の番台。おかみさんが座っている。
 その脇に金属製のフタのついた東海エリア独特の下駄箱があり、そしてなんといっても感動させられるのは、あがりがまちにびっしり張られた濃緑色の長方形豆タイル。こいつは素晴らしい。

 
(左)男女を分かつ第二暖簾   (右)下駄箱と、あがりがまちのタイル部分

 脱衣所は意外にひろびろしている。板張りの床に、ガラスの入った木製ロッカーがデンと置かれている。
 浴室との間に中庭がある。残念ながら池に水はなかった。

 
(左)脱衣所と木製ロッカー   (右)中庭。岩や石灯籠などが置かれている

 脱衣所と浴室の間、つまり中庭の横の通路部分は、かなり広い流しスペースになっている。このツナギ部分の広さは過去最高かもしれない。
 流しの隅に桶が積まれているので、それを一つ持って浴室への戸を開ける。

 浴室も広々。だけど・・・ありゃ〜、椅子なし銭湯なのね。
 中央に懐古的な小判型の深浅主浴槽がある。浴槽を取り巻く周囲の床に、細かい豆タイルが領海12カイリを宣言するがごとくにびっちり張られているのが素晴らしい。
 深と浅の境目に気泡を噴出している円盤状のものが・・・おっとぉ、ヘルスパーだ。激渋銭湯ファンにはおなじみの生きた化石ね。
 壁にはタイル絵などのビジュアルは何もなく、ひたすらシンプル空間だ。

 奥にも3槽が並んでいる。右からジェット2連(強い)、電気、入浴剤入り(乳緑色)。入浴剤入り浴槽だけ湯が少なめなのが残念だが、意外に深さがある。

 洗い場にはシャワーもあり。
 しかし腰痛持ちとしては、椅子なし、浴槽周囲の大阪式座り段もなしとなると、ゆっくり座ってボーッとでけへんねぇ。でもそのなんにもなしによって逆にストイックな光景になっているのがちょっとおもしろい。

 上がりは飲み物販売あり。ビールもある。
 広い空間とレトロなタイル類、そして古いわりに各種浴槽が揃っている。なにより変貌著しい名古屋駅近辺にこんな昔ながらの銭湯が現役で生きていること自体に大いなる価値がある。いつまでも残ってほしい。 
(2007.4.8)
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萬歳湯 (廃業)

2015〜16年ごろ?に廃業された模様。
レポートは営業当時のものです。
(ワ田さん情報感謝)


西区浅間2−12−26 →地図
電話 052−521−2529
【営業時間】16:00〜22:00
【定休日】水曜日


 地下鉄浅間駅から5分もかからない裏通り1筋目、こんな都会の真ん中にこんなイニシエ銭湯あり。
 まことにもって古めかしい町家づくり、3階建ての高さがあるが銭湯は1階天井が高いからこれで2階建てなのよね。

 玄関部分は引き戸が間口ラインからわずかに斜めに角度をつけて取り付けられている。が、それにしても正面足元部分のガムテ補修が痛々しい。

 
(左)風情万点の面持ちだが   (右)ガムテ強烈

 
歴史を物語る看板

 中へ入ると狭いタタキに番台があって、おかみさんが座っている。タタキは名古屋式に細かい緑色タイルで縁どられ、脇にはやはり名古屋式の金属フタ下駄箱。

 脱衣場はうなぎの寝床的に奥に細長く、外観同様いにしえ構造そのままだ。
 しかしもっとも目に付くのは、狹い脱衣場の4分の1を占領して積み上げられているダンボール箱の山。販売用の飲み物の箱みたいだけど、これをのけたらスッキリするのに残念!(番台背後に無造作に詰め込まれている古い石鹸箱類も)。

 脱衣場と浴室の間は名古屋銭湯らしく接続空間になっていて流しがあるが、この上部に山と湖のモザイクタイル画がある。

 浴室も細長く奥へと伸びている。
 まず目に飛び込んでくるのは奥壁一面に描かれたモザイク画だ。山と湖の絵柄は多いが、ここは平原に湖が広がる風景で、珍しくも素晴らしい。湖には白鳥が浮いている。大昔の濃尾平野はこんなのびやかな風景だったのかもなー。

 湯船は男女隔壁に沿って深・浅・デンキと並んでいる。
 デンキの半分は岩場的に飾られ、そこに焼き物の鯉が置かれている。が、この鯉でけー! 80cmはある大物だ。しかもリアル。いまだかつて銭湯でこれほど大物の鯉と遭遇したことはない。日本一の鯉銭湯かもしれん。

 お湯はややぬる目だが、たっぷりナミナミ。
 鯉の下の方からジェットが1本出ており、それを腰に当てながら鯉の頭をよしよししてやろう。
 窓側のカラン列と湯船の間の床に排水溝が1本掘られ、真鍮の蓋がされているのも名古屋ならではの味わいだ。

 上がっておやじさんに聞くと、空襲を生き延びた戦前の建物らしい。あちこちガタがきてガムテも大忙しだが、めげずに営業を続けておられる。
 名古屋も古い銭湯が激減しており、こういった銭湯の貴重性は増すばかり。末永く存続されることを願わずにはおれないが、とりあえずはダンボール箱と石鹸箱をなんとか…。 
(2011年7月)
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金時湯

中村区竹橋町39−10 →地図
電話  052−451−6639
【営業時間】15:45〜22:40
【定休日】木曜日


 名古屋駅の新幹線口から西へまっすぐ徒歩6〜7分。
 かように便利でわかりやすいところに、かくのごとく渋ひ銭湯があつてよゐものだらうか。

 
(左)金文字シビレル〜!   (右)玄関まわりトロケル〜!

 
(左)番台ばあさんナケル〜!   (右)ガラス蓋の脱衣箱ナゴヤッテル〜!

 
(左)天井ササエテル〜!   (右)山脈ソビエテル〜!

 この脱衣場にわが身が存在して服を脱ぐ、その光景はさながら映画ロケ本番中だハイカーーット、オッケェェェーイ!
 貴重な場面に採用された光栄のあまり、全裸の俺は無用なポーズを取って監督にこっぴどく叱られたいという強い衝動を抑えきれない。

 普通に言うと、レトロな雰囲気に興奮を覚える。

 
(左)このあたりの段差がサイコー   (右)流しの造形もサイコー

 脱衣場の広さ、古さは、かつてこの銭湯がこの地域のセンターポジションであった栄光を物語る。
 脱衣場から浴室へ向かう途中、意味不明ぎみな段差があるが、その接続面も丁寧なカーブ仕上げの細かいタイル張り。花形店舗として優良な職人を入れたに違いない。
 名古屋の古い銭湯はこのように、なんでもない場所が美しい曲面で仕上げられていることが多い。じつによい。

 黙って雰囲気にひたるだけでも満足度の高い脱衣場だが、中でも目を見張ってしまうのは、この籠だ。

 
見たことない籠、要国宝指定

 これは他に類を見ない貴重なもので、作品として素晴らしい。大切に扱うべきだろう。

 浴室がまたこれがまた!
 惚れ惚れするような渋い空間だ。広々として、壁画はなく白タイル基調のシンプルな見た目ながら、とにかく床から湯船へと徹底的に細かい豆タイルを使っての涙ぐましい造形が銭湯ファンを唸らせるわ痺れさすわでそりゃもう大騒ぎさ。

 真ん中に主湯ドーン。
 湯船の前後がカーブを描いているが、そのフチもまたカマボコ状にカーブを描いてのカーブ攻め。
 それらがことごとく1cm角くらいの細かなタイルびっしりさんで形づくられ、そこにアツアツのお湯がなみなみと沸かされて、体を沈めたらタイルのやさしいカーブを超えてお湯がザァーっ。

 そこへ後頭部を乗せ、溢れるお湯の浮力に身を委ねるバチあたり。今すぐここで成仏なさいとのささやきが聞こえてきそうだ。んなこたーない。
 奥には豪快な気泡風呂や電気風呂が並んでいて、肩や腰のコリほぐしも万全だ。

 上がっておかみさんに聞くと、昭和2年だったか4年だったか、とにかく昭和初期の建物らしい。空襲にも焼けずに残った歴史の生き証人銭湯でもある。
 名古屋からの帰りは、どなた様もここで茹ってから電車に乗るべきだろう。
 
(2013.2.3)
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地蔵湯

中村区太閤5丁目18-19 →地図
電話  052-451-8870
【営業時間】15:00〜23:30
【定休日】金曜日


 名古屋駅からも歩いて行けるけど、最寄り駅は近鉄米野駅。落ち着いた住宅地の中、ふいに現れる煙突・・・暖簾がかかってないけど営業中みたい。

 
(左)玄関増設なのね   (右)背後の古い建物が本体。手前にお地蔵さんアリ

 
正面から見るとさほどレトロではない

 玄関を入って靴を脱ぎ、名古屋式の金属フタ下駄箱に入れる。そして中に入ると・・・おんやぁ〜?
 番台にはやさしげなおかみさんが座っておられるが、脱衣場が・・・いきなり正面にテーブルがあって観葉植物なんかが茂ってる。昔の喫茶店みたいだぞ。

 床は板張り、上は格天井、奥に欄間とレトロムードが濃厚ぎみに漂うが、なにより目を見張らされるのは男女仕切りの板壁だ。なにこれこの丸いやつ!

 
(左)すばらしすぎる!   (右)浴室方面

 本やら水槽に隠れてるけど、楕円形の鏡がステキじゃありやせんか。己の裸体を映したくなるね。

 浴室手前には名古屋式の広い流しスペース、このへんのオールディーズなタイル野郎どももヨイではないか。
 浴室へ進むと、湯気のまにまに名古屋式の中央深風呂アツアツだ。内側の段が一部2段式になっていて、下の段に座るとちょうど首から上が水面に出るという愉快式設計。

 奥に気泡とデンキ風呂があるが、この気泡がもう勢いよくて極楽ですわい。
 んでその男女壁のところが、こども人形劇の舞台みたいなギャラリーになっていて、タヌキだの何だのが楽しげに飾られてるやおまへんか。

 出入口近くには脱衣場に突出するかたちで水風呂もある。でも水が半分くらいしか溜まってないな。カランひねってじゃんじゃん入れてやれ!
 しかし名古屋の人は冬場は水風呂に入らないのか? 日本人なら冬こそ水風呂だろう!

 いやー、いいね。いいよココ。
 名古屋駅前での飲み会まで時間がなかったからゆっくりできんかったけど、アツアツ主湯、豪快気泡、水風呂の3点セットは1時間入浴を余裕で保証しよるわい。
 今度はもっとゆっくり来ようっと。
 (2013.2.2)
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寿湯(廃業)

2018年8月に廃業されました。
レポートは営業当時のものです。
(渋井さん情報感謝!)


中村区道下町4-5 →地図
電話  052-471−8609
【営業時間】15:00〜22:30
【定休日】月曜日


 地下鉄の中村日赤駅から南東に徒歩5分ほど。病院裏手の住宅地の中に煙突がそびえている。
 近寄ると瓦屋根の年季の入った建物だが、正面にまわるとタダならぬケハイが漂う。木造玄関と外側のコンクリアーチがなんとも言えぬゲージツ状態で調和しているではないか。ふいに中央アジアのシルクロードを想起させられた。

 
角の小さな赤い看板が目印

 しかしこの前の道といい横の道といい、狭いのに交通量が多いなぁ。抜け道になってるみたいだが、落ち着いて鑑賞してられん。
 ともかくアーチをくぐると左右にナナメ入口、そこを開けるとタタキに番台がある。
 下駄箱は東海地方特有の穴あき金属フタ、あがりがまちは桜湯に似た感じで濃緑の豆タイルがびっしり貼られている。

 脱衣所は新建材で改装済みだが、浴室との間の流しスペースがかなり広い。そしてここにも豆タイルが貼られている。

 浴室はさほど広くはない。コンクリ天井にはなぜか湯気抜きが存在しない。床にはピンク色の小さなタイルが貼られている。
 湯舟は手前に広めの浅風呂、その奥に一人サイズの気泡とデンキが並び、最奥の隅に2人サイズくらいの深風呂がある。

 そして最大の見所は、奥壁に男女ぶち抜きで一面に描かれた雄大なモザイクタイル画だ。雪をかぶったどっしりとした山の絵だが、どういうわけか山頂部分だけ白タイルで消されている。一番いいところなのに・・・!

 カランまわりにも曲面に豆タイルがびっしり貼られており、タイル教信者には嬉しいところ。
 夕方6時前後、他客はお年寄りが5〜6人。湯舟が小さいのがちょい残念だが、使い勝手はよく、活気を感じた。
(2007.10.2)
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廓湯(廃業)

2007年に廃業されました。
レポートは営業当時のものです。

名古屋市中村区名楽2−10
電話  052-471-8666
【営業時間】15:30〜23:00
【定休日】月曜日


 スーパー銭湯全盛の名古屋で、レトロ系として有名なのがここ。
 名古屋駅太閤口から始まる「駅西銀座」を終点まで歩き、さらにまっすぐ行くと、昔の赤線だったディープなエリアに出る。その南北のメインストリート「大門(おおもん)通り」を南下して、大門ゲートの1本手前の細い路地を入ると、目指す「廓(くるわ)湯」が現れる。

  
(左)大門通り    (右)廓湯玄関

 さすがは「廓湯」を名乗るだけあって、威風堂々たる立派な門構え。なにせ「廓」です。男と女のアレコレが渦巻く怒涛の歴史を刻んできたに違いない。

 暖簾をくぐると狭いスペースで左右に男女別れ、戸を開けるとタタキにすぐ番台がある古いスタイル。
 広めの脱衣場はイニシエ色の濃い格天井が高〜いところにあり、これぞ銭湯ともいうべき空間が広がっている。ロッカーは木で、中央にすりガラスがはまっているタイプ。
 伝統的な銭湯だけが持つ、温かいようなひんやりしたような独特の空気にじわーっとひたることができる。

 浴室も広々していて、奥行きより横幅が広いのが珍しい。だが適度に改装されていて外観ほどの古さはなく、清潔感がある。
 まず目に入るのは奥の壁の巨大モザイクタイル絵。木陰で憩う裸婦2人の図だが、これがちょっと……情緒イマイチか……。

 中央に主浴槽と電気風呂、それにつながるかたちで隅に岩をあしらった気泡風呂があり、のんびりできる。でも3つの浴槽の湯温は同じで、しかもちょっとぬるかったのが惜しい。
 気泡風呂の一角を除く4周にカランがたっぷりあって、使い勝手はいい感じ。
(2003.11.28)
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出口湯

千種区今池3丁目36−10 →地図
電話 052−731−2754
【営業時間】15:00〜21:00
【定休日】火曜日と第2日曜


 地下鉄桜通線の吹上駅から北西へ徒歩5〜6分。名古屋市文化小劇場の角を左折してまっすぐ行くと、突き当りに家庭的な銭湯がこぢんまりと現れる。

 
(左)出口だけど入口  (右)京都式2枚のれん

 見た目、いわゆるひとつのバーチャンただいま系モロ出しね。庭木のボーボーっぷりがまたよろしい。
 中に入ると狭いタタキに番台の古典主義、下駄箱はもちろん金属フタの名古屋主義。だが番台には予想に反して、銭湯業界的には珍しくも若い女性が座っているではないか。うむ〜先々安泰のヨロコビを感じさせられるぞ!

 脱衣場もこぢんまりとしてチープ&素朴。脱衣箱は木枠にすりガラス。名古屋の都心に近いのにこの田舎風情はナニよ。

 浴室もこぢんまりしている。が意外にも新しいタイルに張り替えられてピカピカだ。床の白タイルまぶしく、奥壁には花柄のプリントタイルもあったりする。
 湯船は深、浅気泡、デンキと男女壁沿いに並んでいる。やや熱めのお湯とブクブクが肩から腰をほぐしてくれやがるぜ。

 湯に浸かりながらフト見上げると、壁の中央付近から上は改装されずに古いコンクリが苔むした状態で豪快にむき出しになっている。
 その上部に並ぶ小窓の近くに、なにかわからんがローマ的な装飾が点々とあるではないか。これはまぎれもなくカエサル直系、、いにしえの由緒正しいものに違いない。

 まあそんなんで、名古屋の都心に近いのに田舎風情&快適浴室でほっとできる穴場的銭湯ね。 
(2013.4.24)
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喜乃湯 
 (廃業)

2017年9月末で廃業されました。
レポートは営業当時のものです。


昭和区村雲町2-2 →地図
電話 052−881−1452
【営業時間】15:30〜23:00
【定休日】土曜日


 地下鉄鶴舞線の荒畑駅から10分くらい歩いたところ。幹線道路がV字型に交わる向こうにあるあれは、お風呂屋さんや〜おまへんか〜っと。
 近くへ寄ると、おおー、なかなかの風情ぢやございませんか。

 
(左)両横から入る   (右)かわいいモザイクタイル

 
玉石タイル、窓の木枠、模様ガラス・・・

 正面の暖簾はかかっているだけで、入口は両脇から回り込むかたち。
 外から脱衣場が見えないようにと工夫された玄関だが、ここに使われている素材のやつらが心の郷愁領域のこそばゆいところをツンツン突いてきよるがな。

 中に入ると番台におかみさんがおられるが、なんともじつに感じの良いお方だ。
 脱衣場は昔ながらの木造空間で、高い天井に3枚羽プロペラがある。
 古いまま使い込まれてなお日々手入れを怠らず、大事に清潔に管理されていることがすぐにわかる。良い。じつにひじょーにまったくもって良い。
 浴室入口周辺の淡い青緑パステル系のタイルも美しくて良い。

 白タイルの浴室は、真ん中に主湯がデーンと鎮座している。熱めのお湯で心地良い。
 奥にデンキとジェット、これまた強力で良い。

 良いね! 良いぞ! 惜しげもなく「良い」ボタン連打!
 おかみさんのお人柄も含めて、非の打ちどころがない。
 古くて小さな銭湯だが、誰もが気持ちよく使えて心から和めるホンマ良き風呂、名古屋の宝物。
 
(2015年1月)
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富士の湯 (廃業)

2011年10月に廃業されました。
レポートは営業当時のものです。
(吉川さん情報感謝)


熱田区切戸町1-8 →地図
電話 052−671−5640
【営業時間】16:00〜23:00
【定休日】土曜日


 地下鉄日比野駅から歩いて7〜8分らしいが、俺は金山から歩いて15分くらい。地味なまちかどの雑草ばかりの植え込みの路地の奥に、横向きに暖簾が揺れている。
 地味というか質素。大都市名古屋にありながら、過疎に悩む地方都市に残った最後の1軒的たたずまいに思わず落涙だ。

 暖簾をくぐると広めのタタキに番台が置かれ、人のよさそうな70代後半とおぼしきおかみさんが座っている。
 ゴムゾーリを脱ぎ捨てて脱衣場へ上がると、これまた昔ながら主義貫徹空間だ。

 
(左)名古屋名物金属フタ下駄箱   (右)洞窟的浴室入口

 
(左)けっこう高い天井に3枚羽扇風機   (右)このあたりの造形がなんとも

 脱衣箱、天井、欄間、男女仕切り、流し台などのイニシエっぷりもさることながら、浴室入口の洞窟入口っぷりがもうタマラン。
 細かなクリーム色の豆タイルがこれでもかとびっしり貼り込まれた壁の中にポッカリと開いた、一人が通過できるだけの小さな入口。カーブを描くその角の具合はまさにケーブだ。江戸時代のざくろ口を髣髴とさせる。
 そしてその手前の床に張り込まれまくった細かなタイル群からは、地に堕ちた天の川を想起させられる。

 浴室はコンクリ造りだが年季が入っていて、天井の湯気抜きあたりの豪快な造形には一瞬たじろぐほどだ。一部で鉄筋が露出していたりするのも見もの。
 隅の立ちシャワーブースが垂れ壁で仕切られていて、これも小さな洞窟を思わせる。

 湯船は中央近くに深浅の主湯があり、奥にデンキ・気泡・ジェットの副浴槽が配置されている。主湯は深と浅の仕切り部分が左右から張り出してくる形で、ふと宗教的なゲートかなにかを連想してしまう。
 お湯はすべてぬるめで長湯できるが、残念ながら熱い湯が好きな俺にはやや物足りなかった。たぶん夏だからだろう。

 
(左)洞窟的シャワーブース   (右)主湯の造形美。奥が深い。手前の突起も謎

 上がりはこれまた年季の入った冷蔵庫からビックルを飲んだ。

 久しぶりの名古屋。時間逆流銭湯で、ふしぎな夜が幕を開けるのであった。
(2011.7.22)
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道徳温泉

南区道徳新町1-8 →地図
電話 052-691-1997
【営業時間】16:00〜22:30
【定休日】日・祝


 名鉄常滑線道徳駅から西へ徒歩10分ほど、交差点の角にイニシエ系銭湯あり。飾り気のない、寺院の宿坊を思わせるようなすっきりと潔い外観がじつにエエ。

 
(左)角に立地   (右)目隠しの板塀の後ろ、暖簾の裾が結ばれている

 暖簾をくぐって戸を開けると、タタキに番台があり、おやじが座っている。下駄箱は東海式(スケスケ金属ふた手前引き上げ)。
 そして脱衣所の高い天井もまたよし。と、ここまではまぎれもなく正調古典派の銭湯空間だ。
 でもその他の内装は意外にも綺麗に改装されていて、古いものはあまり残っていない。ロッカーもアルミ製。
 浴室手前の流しスペースに、立ちシャワーがあるのが珍しい。

 浴室も全面改装で現役バリバリだ。中央に深い主浴槽、奥に浅風呂(気泡+ジェット)とデンキ風呂(薬湯)。
 カランは自動調温式の蛇口1個型。
 奥壁に熱帯魚のモザイク画がある。

 上がりは飲み物販売あり。
 パンツ一丁で体をさましながら見上げる、玄関上部の明かり窓あたりのイニシエ風情がじつによい。
 ひとつだけ、脱衣所や浴室に掛け時計が見当たらず、風呂に入りながら時間がわからないのはマイナス点だ。
 
 内部は改装されてイニシエ好きにはややもの足りない感じもするが、使い勝手の良い、清潔感のあるいい銭湯だ。よくはやっていた。  
(2008.7.4)
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共栄湯(廃業)

2019〜2020年頃に廃業されたようです。
(としちゃん情報感謝!)
レポートは営業当時のものです。


南区城下町3−37 →地図
電話 052−821−4126
【営業時間】15:30〜22:30
【定休日】月曜日
定休日を変更しました(2019.11.12)
(よいまつりさん情報感謝!)


 名鉄の本笠寺駅から北西に7〜8分歩いたあたり、なんの変哲もない住宅地の中に、なにやらオーラを感じる古風な銭湯あり。
 玄関先の南国チックな高木も印象的だが、左脇に植木のいっぱい置かれた通路があって、その奥のほうに燃料の材木が山積みになっているのもこの銭湯の存在感を際立たせている。

 
玄関先のベンチもナイス

 脱衣所の2階建て部分はトタン屋根だが、瓦屋根の浴場棟はじつに昔ながら。
 中へ入ると広いタタキに番台、金属フタ式下駄箱と、名古屋の正調イニシエスタイルだ。昭和14年築らしい。

 脱衣場も広々していて、高い格天井の下にゆったりとソファなどが置かれている。男女仕切りの中央で天井を支える柱が、まるで白い傘を広げて逆さにしたような形をしていて迫力だ。
 すりガラスのはまった木製脱衣箱や、ガラスブロックで区切られた豆タイル多用の流し台なども味わい深いが、アーチ型の浴室入口がこれまた泣かせる。

 
中央の小さなゲートをくぐりゃんせ

 浴室に入るや、その不思議な造形美に一瞬息を呑んでしもうたではないか。
 何この完成形!

 
完全無欠

 広いのである。白いのである。美しいのである。
 浴室のきっちり真ん中に、小判型に近い深浅の主湯。床から立ち上がるその細かくも白きタイル使いとへりのカーヴにしびれちゃう。

 奥には1列にデンキ・ジェットなどの浴槽が並び、さらにその奥壁はガラス張りになっていて、植物や池や灯篭のある外の庭がライトアップされている。昼間はおそらく緑のカーテンからさんさんと陽光が差し込むのだろう。

 お湯はみな43度くらいと高めで、俺的ベスト。
 デンキ風呂の内側の腰かけは、臀部の形に沿うような人間工学的カーブ、しかもそれらがすべて細かな白タイルびっしりなもんでどえりゃーええんだわ。
 両サイドにずらり並んだカラン列と主浴槽の間に切られた排水溝の真鍮ブタもまたこの景観のアクセントとなっていてナイスなんだわ。

 古いけど、よく磨かれて心地よし。
 薪焚きのお湯をじっくり堪能し、湯あがりは脱衣場で黒酢ドリンクをちゅーちゅーしながらしばし放心した。そらもう素敵な銭湯なもんでかんわ。 
(2011.7.23)
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