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【福岡県】 の激渋銭湯 | ||||||||||||
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大徳湯
地下鉄の千代県庁口駅から徒歩数分。九州大学の旧校舎群の正面に当たる場所に、レトロな銭湯がたたずんでいる。 かつては学生たちで賑わったであろう界隈も今は静かな裏通りとなり、この銭湯もどこか寂しげに見える。 でもよく見たら、じわっと味わいがにじみ出るような造形だ。玄関わきの松を従えて、歳月に裏打ちされたオーラをもわんもわんと漂わせている。 ![]() ![]() (左)この渋い玄関まわり、どうよ (右)入ってすぐタタキに番台と下駄箱 入ると番台におかみさんが座っている。おだやかでにこやかなお人柄がまたなんとも味わい深い。 脱衣場は余計なものがまったく置かれておらず、広々スッキリしている。玄関の戸と同じ肌色に塗られた脱衣箱や鏡の木枠がココロのニクイところをツーンと突いてきやがるぜまったくよぉ。 ![]() ![]() (左)脱衣箱上の常連桶はビニールで覆われている (右)男女隔壁の鏡が最高 浴室もなかなかの広さだ。シンプルながらもレトロなタイル張り。一目見て「おぉ、いぃ!」と母音バカ化してしまう。 湯船は男女壁に接して、電気(気泡つき)、浅(気泡つき)、深(ジェットつき)と並んでいる。 どれもお湯がなみなみと満たされている。深湯はけっこう熱め。 特筆すべきは電気風呂の底から噴出する気泡だ。電気+気泡だけでも珍しいが、これがひどく豪快なボッコボコの気泡で、電気ビリビリ攻撃とあいまってフルボッコにされる。 カランはすべてシャワーなし。全然許せる。 広い空間、レトロな雰囲気、たっぷりの熱いお湯、豪快な気泡。昔ながらの風呂屋に期待するベーシックなものたちがしっかりと歓迎してくれる。 古いけど長湯したくなる、味わい深い銭湯だ。フルボッコは絶対くせになる。 (2014.5.9) |
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大黒湯
博多の隣、吉塚駅から徒歩5分ほどの便利な場所にある。 幹線道路から1本入って、建て替えの進む住宅地に、ポツンとレトロな風呂屋。なんとも味わい深い風景だ。 上の写真は2011年のものだが、その後、突き出しの電照看板が新しいものに替えられたもよう。 ![]() ![]() (左)2011年の角張ったレトロな看板 (右)2014年、角が丸く、縦長になった どっちかというと俺は前のやつのほうが好きやけど、まあ看板を取り換えるということは今後ともがんばってくださるということやろから文句なし。 ![]() 中に入るとタタキに番台があり、おかみさんが座っている。 脱衣場は適度に改装されている。スチールロッカーがあるけど、あまり使われている様子がない。そのかわり洗濯物入れみたいな取っ手付きのプラ籠が積まれていて、常連客はそれを使う人が多いようだ。俺も脱いだ服をそれに放り込んだ。 浴室入口の近くに、もはや使われていなさそうな一人用サウナボックスがある。 浴室は壁画も何もないシンプル空間だ。床タイルやカランまわりなどはきれいに改装すみだが、全体の造りは昔ながら。 男女壁に接して湯船が並んでいる。手前にキンキンに冷えた水風呂、隣に浅いデンキ風呂(ただしこのときは通電せず)。そして奥に広くて深い主湯がある。 どれも湯船のヘリにはレトロな青いミニ長方形タイルがびっしり貼られているが、よく磨かれ、やや熱めの清い水が満々と湛えられている。 いやー、さほど特徴はない浴室やけど、気持ちええわー。旅人にはホンマありがたい。 上がりは、中が見えないフツーの冷蔵庫が脱衣場に置かれていて、何種類かの飲み物を買える。 レトロな外観、快適なお風呂。都心近くにしっかり残る貴重な銭湯だ。 (2014年12月) ※「レトロ銭湯へようこそ西日本版」に掲載されました。 ![]() |
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こがね湯
雑餉隈・・・「ざっしょのくま」と読むらしい。まあとにかく天神から西鉄に乗って数駅のソコへ行き、線路に沿って5分ほど歩いたら、古びた感じの銭湯が見えてくる。 正面に開いた2つの小窓に金属製の逆さクラゲがあしらわれているのがおもしろい。こんなもん見たことないぞ。 ![]() ![]() (左)誰が考えたんじゃ! (右)その裏に入口 逆さクラゲの裏側に男女別の入口がある。 開けて入るとタタキに番台があって、おばあさんが座っておられるが、お疲れなのかあまり元気がない。 脱衣場は小ぶりだが、郷愁を誘う木の脱衣箱がよい感じで、木製の大きなベンチもかなりよい。 壁のあちこちに、野球選手のサインやら相撲取りのサインやらワカタカの写真やら東京スカイツリーの写真やら、ごちゃごちゃ貼ってある。これもまた一昔前の古銭湯らしい姿だ。 裸になって浴室へと進むと、まず奥壁に大きく描かれた壁画が目に飛び込んでくる。まったく見たことのない絵だ。 川沿いの石畳の道に3本の石鳥居があり、自転車をこぐ男がいる。道は先のほうで折り返して2連の太鼓橋があり、長い回廊を有する怪しげな神社へとつながる。背後になだらかな山があり、空は昼と夜が半々。 力強さを感じる印象的な作品だが、キャンバスの一部が傷みつつある。 浴室自体はこぢんまりしていて、ほぼ中央に青タイルの小判型主湯。湯の底に貼られている濃色の玉石タイルがよいではないか。 その奥左側に接して、ぬるい水風呂がある。不定形な6辺で区切られた説明困難な形だ。 さらに奥壁左角はジオラマ風に岩が積まれ、小さなぬるめの副浴槽がある。 狭くて古い浴室ながら、壁画の勢いと湯船の複雑形状とで退屈しない。ていうか、なにやら特別なパワーを感じる。 しげしげと絵を眺めつつ湯に浸かっていると、けっこう長湯してしまった。 上がって脱衣場をよく見ると、なにやら研究発表のポスターパネルが壁に展示してある。 美術系大学に通ってると思われるこの銭湯のお孫さんが、祖母の銭湯のリニューアルを研究テーマに選んで発表したものらしい。 一日の客は約30人とある。脱衣場のベンチと浴室の壁画は彼が設置したようだ。興味深い。壁画は太宰府天満宮を描いたものだという。 リニューアル作戦の一環で、それまであったボロいソファーを撤去したと書かれている。そのときついでに、数多い掲示物もある程度撤去したほうがよかったかもしれん。 飲み物販売なし。 古い銭湯をどうすれば盛り上げられるのか・・・お孫さんの努力と愛情は一見に値する。 (2014年12月) |
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梅乃湯
JR箱崎駅から北東へ徒歩5分。飾り気のない白壁にナナメ掘り込み玄関の風呂屋が現れる。 暖簾もなく、「ゆ」の突き出し看板がなければ見逃してしまいそう。客商売にしてはチョイ地味すぎる。 でも一歩中に入れば、しっとりと落ち着いた和の風情が息づいている。 ![]() ![]() (左)造形はおもしろい (右)番台とタタキの様子もちょっとおもしろい ![]() ![]() (左)下駄箱の上は常連のタオル干場 (右)木の脱衣箱と丸籠 ![]() いや~、期待以上にあちこち味わい深いやおまへんか。調度品はみな古いけど、でも清潔に管理されててスッキリしている。 んでまた浴室がバーンとコレなわけや! ![]() 大都市でありながらも銭湯わずか十数軒と、風前のともしび状態になっている福岡市。 ところが2013年の10月、画期的な事件が起きた。 東京からペンキ絵師の中島盛夫さんを招いて、なんと3軒の銭湯に富士山の壁画が描かれるという「富士山上陸プロジェクト」が行われたのである。 ここ梅乃湯はそのうちの1軒なのね。 いやー富士山を眺めながらの入浴タイム、じつに素晴らしい。 それにこの風呂、小ぢんまりとシンプルだが、あなどれん。 手前に深、奥に浅ジェット。その熱めの湯加減、ジェットの具合、極楽である。 しかもその横に水風呂があり、ただでさえチベタイのに底から気泡が豪快に噴出してチベタイ水を全身にこすりつけてきやがるぜシヌ~~! こういうメリハリが快楽のツボなのであるね。 見た目的にも、3つの湯船の接点が十文字になっていたり、うまいこと設置された島カラン壁や、湯船ヘリの細かなタイル、給水部分の造形なども味がある。 なにより、これらすべてがピッカピカに磨きまくられていて、そりゃもう気持ちのエエこと。この風呂を大事に育んでいる店主の愛情を感じないわけにはいかない。 ![]() ![]() (左)この手の浴室では珍しい配置 (右)細かいとこまでピカピカ ![]() ![]() (左)この天井がまたよろし (右)そして湯上りのお楽しみ♪ 湯上りは、これまた味のある「みどり牛乳」の冷蔵庫、そしてミネラル水のサービス。嬉しいやんか。涙。 ステンレス流しには、小さな子ども用のジョーロのおもちゃが置かれていたりする。 じつをいうと、俺はここへ来るまでの旅路で、別府や山鹿の名温泉にさんざん揉まれてきた。 それでもこの浴室に入った瞬間、「あーやっぱり銭湯ってエエなー!」と喜びが込み上げてきた。 自然の恵みである温泉はたしかに素晴らしい。だが人の営みである銭湯も決して負けてはいない。人間って素晴らしい。そう感じさせてくれる風呂であった。 (2013.11.6) ※「レトロ銭湯へようこそ西日本版」に掲載されました。 ![]() |
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荒戸湯
地下鉄唐人町駅から東へ5分。 今まさに巨大マンション群に包囲され押しつぶされようとしている伝統的な日本の建物が二つある。 ひとつは「黒門飴」という古い飴屋。もう一つがこの荒戸湯だ。 ![]() ![]() (左)高層マンションとの狭間 (右)右の木造が荒戸湯の自宅母屋 黒門橋交差点あたりから見ると、ここに昔ながらの銭湯があるとは到底思えない。荒戸湯は大通りに背を向けているので、狭い路地を入らないと姿が見えない。 ![]() ![]() (左)この並びだけスペシャル (右)ナナメ掘り込み玄関 荒戸湯の右側には、ひときわ古めかしい木造建築がある。荒戸湯のおかみさんが暮らす母屋だ。 この街で、ここだけ血が通っているかのようだ。でもこれだけ圧倒的な無機質マンションに囲まれていると、木の温かみや和の風情が逆に一種異様なものに見えてしまったりもする。 ドアを開けて中へ入ると、なじみ深い落ち着いた風呂屋の風景が迎えてくれる。 木の番台には、気さくでざっくばらんなおかみさんが座っている。 ![]() ![]() (左)狭いタタキと番台、下駄箱 (右)丸籠 ![]() ![]() (左)ちょっと変わったランプ (右)組合行事の変わり湯 小ぢんまりとした脱衣場。特別に何がどうということはないかもしれない。 だが、元気な名物おかみが守るこの空間は、まぎれもなく昔々その昔から続いてきた伝統的な銭湯空間そのものだ。 裸になって浴室へ。 まず目に飛び込んでくるのは、奥壁に描かれた富士山のペンキ絵だ。 2013年の秋に東京のペンキ絵師・中島盛夫さんを福岡に招いて、3軒の銭湯に富士山を描くプロジェクトが行われた。その、もともとの言いだしっぺはこの荒戸湯のおかみさんだという。 壁一面の富士山を眺めながら風呂に入る。そんな贅沢が福岡でも実現したのだ。 雄大な富士山から我に返れば、浴室自体はかわいいミニ空間だ。 湯船は深浅のみ。お湯が八分目くらいなのがちょい残念ね。 カランは外壁側にシャワーつき、男女壁側はシャワーなしが並んでいる。 湯船端のライオン湯吐きの上に、お客が描いたライオン湯吐きのイラストがパッチされて飾られている。 風呂から上がると、脱衣場にもお客絵やお客写真が飾られている。 小さいけど、おかみさんの魅力で常連客に愛されているんやね。 林立するコンクリートビルの狭間で暮らす人々にとっての小さなオアシス。 そんな銭湯に巨大な富士山がやってきた。とても愉快な出来事だ。(2014.5.9) ※「レトロ銭湯へようこそ西日本版」に掲載されました。 ![]() |
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柳湯
楽しい九州の旅が終わるとき・・・それは門司駅前でフェリー乗り場行きの送迎バスを待つ時間。 そんなアナタに少々の余裕があったなら、この風呂でしみじみと旅路を思い返すひとときを過ごすんもよかろうて。 門司駅から国道沿いに徒歩5分ほど。路地をクイッと入ったところに煙突が見えている。 ![]() ![]() (左)大きな交差点を渡った次の狭い路地 (右)瓦屋根の平屋建て、煙突は途中まで 造りは古いが、玄関まわりだけ無表情な肌色パネル状の壁で覆われている。でも窪んで斜めについた戸口からは田舎銭湯情緒が溢れ出ている。 入ったらお約束的にタタキに番台、番台にお約束的にバアサン、バアサンはお約束的に人柄よさげ。 脱衣場はこぢんまりとしているが、ソファー、本棚、テレビ、ここは居間かっ! と小声で突っ込みたくなる地元密着な小空間だ。 ![]() 裸になって浴室へ入るとここも小ぢんまりで、男女壁沿いに浅・深・気泡・ジェットと並んでいる。 湯船のふちは0.5cm×2.0cmくらいのサイズの細かな長方形タイルがびっしり貼られていて、なかなかレトロな光景だ。 湯に浸かって周囲を見ると、浴室壁の鏡位置より上部はすべて真新しい合板フローリング壁で覆われているのが目を引く。脱衣場ではちょくちょく見るが浴室では珍しい。 脱衣場方面に目を向けると、表の路地向かいの家の植え込みの緑が脱衣場の窓ごしに青々と見えている。みな開けっ放しの脱力フィーリングがじつによい。 湯船の向かい壁にはカランが並び、シャワーも出るし、高齢者用の高椅子もいくつか準備されて、古い小銭湯だがそれなりの現役っぷりを感じさせる。 嬉しいことに水風呂あり。冷却されていないが水道ホースの自己加水式で、浸かるとドバーッと溢れて大洪水の幸福生活。 水風呂から出るときは蛇口をひねって再び満水にしておくのがここのルールらしい、たぶん。俺とイレズミ客はそうやって交互にドバーを何度か繰り返し合った。 湯あがりは、脱衣場の隅に家庭用の冷蔵庫があり、そこに販売ドリンクが入っている。 よく見たら本棚には「万葉の歌人と短歌」とか「ちくま哲学の森シリーズ」など、およそ銭湯の脱衣場らしからぬラインナップではないか。ソファーテーブルの上には週刊新潮と週刊文春がそれぞれ2ヶ月分くらい積まれてある。 バス待ちの時間、ちょっとひとっぷろの贅沢っちゃ。 温冷交互浴を繰り返すもよか、湯上りに本や雑誌を読むもよか。ゆったりするんが九州にふさわしか。 (2012年9月) |
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大黒湯
いつもながら神戸への帰りの船に乗る前に、北九州の銭湯でひとっぷろだ。 雨ふりだからアーケードをつないで、小倉駅から魚町の商店街と旦過市場を抜けて市立医療センターの裏手へ。 そっけなく現れる小さな灰色ビル。低い煙突、小さな看板に暖簾もなしのアルミドア。 外観の風情も重視する当サイトとしては、この手のビル銭湯はあまり紹介していない。でも中に入ればナカナカの味わいやおまへんかー。 ![]() ![]() (左)北九州銭湯らしいそっけなさ (右)脱いだ服は丸籠ごと入れる式 中に入るとタタキに番台があり、番台にはにこやかなおかみさんが座り、脱衣場とは衝立一枚で仕切られているだけという田舎風トラッドスタイルだ。 脱衣場はコンパクトサイズ。戸畑区の中将湯もそうだったが、丸籠ごとロッカーに入れるという、空間の無駄が多いゆったりさ加減が逆に心身の疲れを癒してくれる。 浴室も縦長コンパクト。だがこのミニ空間はあなどれん。 中央に深・浅・電気・ジェット・気泡がうまいこと組み合わされた多機能な主湯がある。その深風呂の角に設置されている給湯給水部がオモロイ。装置が石ころとセメントでスッポリ固められて、物体としての存在感を強く主張している。 ![]() ![]() (左)小ぢんまりだが見どころ凝縮 (右)こいつだけ生きているかのようだ 奥壁では岩場とそこに生える樹木がジオラマ風に再現され、そこに白樺湖のようなイメージのモザイクアートが競演している。 カラン前には海岸風景などのモザイク画もあって、狭い空間なのにビジュアル度が高いんよね。 ![]() ![]() (左)けっこう芸が細かい (右)灯台もとで洗髪 お湯は熱めでナイス。ブクブク関係やカラン関係も快調だ。 入口横には無料サウナと水風呂もあり、全身ときほぐしまくり。 そして、それらすべての清潔度がきわめて高い。風呂屋としてきっちりとした姿勢で管理運営されていることが感じられる。 「きのうはウクライナの人が入りに来て、写真を撮って帰られましたよ」 おかみさんもたいへんヨイ。フェリー送迎バスの時刻が迫ってなければ、あと30分はゆっくりしたかった。ええ風呂やわ~。 (2014.1.8) |
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月乃湯
白壁城の郷愁空間。ザバーっと溢れる水風呂最高! (本文作成中スビバセン! 下記書籍に掲載しておりますので詳細はそちらをぜひ) ※「レトロ銭湯へようこそ西日本版」に掲載されました。番台で本書販売中。 ![]() |
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泉湯 ★
西小倉駅から日豊本線の跨線橋を西へ越えた、静かな住宅地。その中にポツネンと古びた銭湯が1軒残っている。 油断した。その玄関まわりの端正なたたずまいに思わず目を見張った瞬間、コンマ1秒を置かずしてきつい金縛りに襲われた。 ああそうさこんなページを見ているキミなら覚えがあるだろう、並外れた激渋銭湯に直面した風呂バカを窒息死寸前にまで追い込む亀甲八の字アナフィラキシーショックだ。 ![]() ![]() (左)遠目にはクタビレた銭湯だが (右)こここれは・・・ ![]() ![]() (左)助けて・・・天国のオカーチャン (右)二重三重に容赦なく襲う金縛り 渋すぎる外観から目をそらすのが惜しくて、なかなか中へ入れない。 ようやっと震える手で戸を開け、硬直した体ごと崩れ落ちるように侵入した。 ![]() ![]() (左)黒光りの番台におやじさん (右)引き上げ式の古い鍵がついた下駄箱 ![]() ![]() (左)板張りさわやかな脱衣場 (右)小さな鏡がまた渋い! ここでもまた郷愁度数がK点を越えてくる。 俺は時空のゆがみに翻弄されながらフラフラと裸になり、浴室へ。 ![]() ![]() (左)どっしり中央主湯、細かい渋タイルと縁石ノセ (右)オランダらしきモザイク画 ![]() ![]() (左)ザ・昭和の造形、左側は水風呂 (右)スチームサウナよい! オレンジ色タイルの床中央から立ち上がる主湯に、たっぷり熱めのお湯が沸いている。仕切られた浅い部分は普通はぬる湯だが、なんとここがかけ流し式の水風呂になっている。非常に珍しいパターンだ。 奥にジェット(2本)とデンキ、どちらも主湯と似た渋い造り。 その横にスチームサウナ室があるが、内部は古びた感じがなく、床に石が仕込まれていたりとセンスがよい。 全体に苦み走ったシブシブな浴室だが、カラン・シャワーも快調だし、なによりナイスなスチームと水風呂の存在が入浴の満足度をグレードアップさせている。 上がっておやじさんといろいろ話したけど、過度の感動と興奮のためか全部忘れてもうた。 (2014.5.14) |
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大黒湯
しょぼ降る雨の中、八幡駅から東へ10分ほど歩いたところに1軒の銭湯あり。 暖簾は出てないけど明かりがついてるし、たぶん営業中な様子。もう寒いし冷たいし、やっててくれてありがとうっと叫びたい心境だ。 ![]() ![]() (左)建物側面、有福温泉みたいな浴室窓が! (右)このナナメ板がええやん! 小さなアルミ戸を開けて入るとタタキに番台があって、おしとやかな感じのおかみさんが座っている。 脱衣場はこぢんまりしていて、天井も低い。でも木造のよさを残しながら改装されていて、清潔で落ち着く空間だ。 ![]() ![]() (左)ウッディーできれいな脱衣場 (右)古い下駄箱、長靴用もあるぞ はよ入ってあったまろ。服を全部重ね脱ぎしてロッカーに放り込み、浴室へ急行だ。 おっとぉー、このお風呂、キレイっ! ![]() ![]() (左)チレイな浴室 (右)ダイオン湯吐きと細かなタイル群 ![]() ![]() (左)アーチ窓 (右)湯気抜き、壁上部のガラスブロック、すべてが芸術の域 よく見たら建物自体は年季が入っている。それを丁寧にメンテし、磨き、色を塗りなおして、ピカピカに仕上げてある。タイルの剥がれの1枚もないぞ。 真ん中に小判型主湯、奥に濃厚な薬湯。それだけなのだが、その艶々っぷり、お湯の清澄っぷり、湯温のベストっぷりに唸らされる。 これ以上望むものは何もない。快適の一語。雨がやむまでずっとここでグズグズと過ごしたい。 ![]() ゆっくりと浸かり、ゆっくりと洗い、またゆっくりと浸かる。ものすごいエエ風呂。 なのに客は俺一人。いったい日本人は、どこを見て生きているのか。 心ゆくまで貸切湯を楽しみながらも、愛するがあまりついつい腹を立ててしまう風呂バカなのであった。 (2014年12月) ※「レトロ銭湯へようこそ西日本版」に掲載されました。 ![]() |
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黒田湯 【廃業】
黒崎駅の南側には扇状に商店街が広がるが、不規則に交差する道も多くややこしい。駅から東南東へ徒歩7~8分、春日神社から南へ伸びる道沿いに「ゆ」の看板が・・・ん? おおっ、この古めかしいオーラはまさに! ブロック塀と庭木に包まれた木造モルタルの建物で、道路から6~7段上がる。こういう構えの銭湯は関西では見られない。まったくもう、ゾクゾクッときちゃう。 ![]() ![]() (左)男女の入口が左右に分かれている (右)このへんはかつて黒田藩の領地だった ![]() 暖簾の背後には、Uターンするような向きで入口がある。ガラス戸にはトイレの男子用・女子用マーク、これはこの地方ではわりと見かける。 中に入るとタタキに古い木の番台、年季の入ったおかみさんが座っている。 こじんまりした脱衣所だが、天井はけっこう高くて大枠の格子状。 壁や男女仕切りは白壁だが、腰高までは板張りで薄いオレンジ色に塗られている。そこへさらに古い木枠の窓から夕陽が差し込んで、部屋全体が強烈なセピア色だ。こりゃかなりの郷愁空間だぞ。隅に木のベンチとアナログ体重計がある。 ロッカーに戸はなく、一番上にはホコリが積もってたりする。隅にプラ籠や籐の丸籠が積んであり、お客はたいていそれを使っている様子。 小さな浴室へ入ると、床には青色の丸い豆タイルがびっしりと張られている。 湯舟は、真ん中に楕円形のが一つあるだけ。フチは白黒の砂利をクリーム色の材料で固めた洗い出しになっている。 湯舟は2つに仕切られ、狭い浅風呂はぬる目のバスクリン湯。広い深風呂は43度強の白湯。湯舟の底には緑色の丸い豆タイルがびっしり。こういったタイルづかいはマジでもう貴重だ。 今日もよく歩いた。疲れた足腰を熱い湯が黙ってジワ~ッと癒してくれる。こういう古銭湯のよさがわからんやつは絶対損してるね。 見上げればフラットな天井だけ新しく、長方形の湯気抜きが広く開いている。 でも壁の窓枠などは相当キてる。浴室全体に苔むしたような古さが漂うが、湯舟はしっかり磨かれているようす。 カランにはシャワーなし。でも湯水の出はいいので問題ない。 夜7時前後、先客1人、あとから3人。 建物の老築ぶりや営業時間の短さからも、静かに余生を送っているかのような気配が漂う。 上がりは飲み物販売もなし。こういう場所でじんわり過ごす時間は何物にも代え難い。渋銭ファンは急げ。 (2006.5.26) →北九州旅行記 ![]() |
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鶴の湯 ★
若松の渡し場から西へ徒歩10分くらい、高塔山東麓の静かな住宅地に古い銭湯がポツンとある。 玄関先に燃料の薪が積まれている。 営業時間前に通りかかった時、ちょうどおかみさんが表におられたので、中を見せていただいた。 ![]() ![]() (左)いろは下駄箱 (右)番台の曲り階段がめずらしい ![]() 晩秋の昼下がり、ゆるやかに差し込む陽光。使い込まれた木製素材たちがひそやかに輝いている。かすかに漂う、薪を燃やす香り。 郷愁爆弾とでも呼びたくなるような衝撃が心になだれ込んでくる。 壁や天井、脱衣箱は白ペンキで塗られ、すがすがしい。 男湯にはゆったりしたマッサージ椅子、女湯にはくつろぎのソファと赤ちゃんベッドが置かれている。 シンプルな脱衣場ながら、玄関タタキの柱には小学生たちの体験入浴時の楽しげな写真が飾られ、男女仕切りには「前川清の生きがい、日曜日の人情旅」という見出しのスポーツ新聞の切り抜きが貼られている。 働き者で陽気なおかみさんが大事に作ってきた空間の温かみを感じさせられる。 浴室はすっきりと美しい。細かなタイルと色ガラスブロックの競演だ。 ![]() ![]() (左)浴室入口の玉石タイル (右)男女隔壁のガラスブロック ![]() 夕方、再び訪れて風呂に入った。旅の風呂はいつも格別だ。薪でじっくりと熱めに沸かされた湯が体の芯まで沁みわたってくる。 体を隅々まで洗い、湯船を出たり入ったりして、ぐずぐず過ごす。 風呂あがり、脱衣場にいた初老の先客が地元のタウン誌を見せてくれた。そこには鶴の湯の存在とその良さを情感込めて伝える記事が載っていた。 「私が書いたんですよ。この風呂屋が大好きでねぇ」 その男性の気持ち、めっちゃわかる。 ![]() (2014年11月) ※「レトロ銭湯へようこそ西日本版」に掲載されました。 ![]() |
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だるま湯 ★(廃業)
筑豊炭田が華やかなりし頃はさぞや栄えたであろう飯塚も今はレトロタウンとなり、銭湯もここ1軒のみとなった。 でその最後の1軒がアンタ。わしゃ泣いたね。 ちょっとさみしげなアーケード商店街の入口を通り過ぎて、狭い路地を覗いたらアンタ。 ![]() ![]() (左)古い建物に「だるま湯」との小さな看板あり (右)路地奥から、この渋さ! ![]() ああこれこの銭湯この立地この風情この奥ゆかしくも清楚にして純朴なるしっとり感が美しくもだがしかし堂々とゆるぎなき構えの銭湯銭湯これやこの。 フツーに言うならね、雰囲気がね、エエわけよ。 んでまた中に入ったらタタキに番台のおばちゃん品があって温かく、郷愁感に満ち満ちた由緒正しき風呂屋のすっきり空間心地よし。 古そうだがずいぶんしっかり磨かれていて、清潔度きわめて高し。 ![]() ![]() (左)木製脱衣箱シビレル~! (右)浴室方面 我慢できずマッハでマッパになって浴室へ。 と、、、、でたー、円形浴槽!! ![]() ![]() (左)完全無欠これひとつ (右)美・サイレント 清楚なタイル床の中央にしずしずと置かれた真ん丸い湯船。 フチや側面、内側底面の豆タイル。 美しい。まったくもって美しい。このまま背負って日本縦断の旅に出たい。 やや熱めのお湯もたまらなく気持ちがよい。なにこのお湯! カランまわりは新しく手を入れられ、シャワーも快調で使い勝手きわめてよい。 男女仕切りがスリガラスになっていて、そこはかとなくアチラの影が映ったりするのもまたよし。その突き当たりにある洋風タイルの謎な飛び出しもおもしろい。 天井が高く、のびのび感に包まれるのも最高。 さびれつつある町の最後の1軒だからもっとオンボロな感じを想像してたけど、その期待は裏切られた。もちろん完全によい意味で。 愛情をもって隅々まで磨き上げ、細心のメンテナンスを心がけておられることがひしひしと伝わってくる美しさ、快適さだ。 今はなき四国徳島の貞光温泉を思い出した。 惜しくてなかなか上がる気になれなかったが、きりがないので後ろ髪を引かれながら上がると、番台はおやじさんに代わっていた。 聞くと、昭和3年築だという。 水道水を重油で沸かしているが、天然石から作ったセラミック材で濾過しているから水質がいいんだよと教えてくれた。 このおやじさんもまた人当たりがよくて、ほっとするようなお人柄だ。 なんかもう万歳ね、だるま湯万歳! 水道水でこれだけ幸福な気分になれるんだから、もう温泉なんてどうでもいいや。 でもこのときは貸切状態の時間が長かったのでちょっと心配。 JR新飯塚駅から歩いたら15分くらいかかったけど、バスセンターからなら5~6分。福岡市内へはバスのほうがばんばん出てるので便利よさげ。 とにかく、だるま湯へ行かざるは損。 (2012.1.5) ※「レトロ銭湯へようこそ西日本版」に掲載されました。 ![]() |
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神明湯 △
西鉄新栄町駅のすぐ裏手に、大牟田ガーデンホテルという立派なホテルがある。その手前に、通りかかる人の誰もが見逃してしまうであろう小さな袋小路がある。 ![]() いくらヒマでも、この袋小路に入ってみようかなんて思う人はいまい。だってすぐそこで行き止まりやし、何かあるようには見えないし。 でもあるんです。銭湯が。商売気皆無のお風呂屋さんが。 袋小路の奥のほうに、アルミサッシの戸が二つ並んでいる。戸は営業中でもたいてい閉じられているが、よく見たら上に「男湯」「女湯」と書かれている。たまたま戸が開いていれば、暖簾が見えるだろう。 ここで風呂に入ろうと考えるのは、常連客を除けば変態的な風呂バカだけだ。断言できる。 入ると狭いタタキに番台があり、おかみさんが犬と一緒に入っておられる。 板張り床の脱衣場はスッキリしていて、右壁は木製の脱衣箱と並んで籠棚、左の男女仕切り側にはベンチ一つ。あとは体重計だけ。 外観のディープさのわりに内部はごく普通の銭湯風情があり、ほっと和める。 脱いだ服を丸籠に放り込んで浴室へ入ると、中央に楕円形の主湯がポーンとある。 このフチ(またぎ)がなかなかよい。九州でよく見るジャリ固めで、表面はツルツルに磨かれているのだが、この上部が単なるカマボコ状ではなく、いったん傾斜が緩くなってからビミョー中央部が突出する形状となっている。断面でいうと山口県萩市にある笠山に似ている。世界中の人にとってまったくどうでもいいことだがあえて言う、この湯船のへりはトロイデ型火山的な断面を有するカーブであると。 湯船の内側は玉石タイルがびっしり貼り込まれている。 お湯はちょうどよい湯かげんだ。のんびり浸かって湯船へりのトロイデカーブをナデナデ、あーナデナデ。 奥隅に扇型の副浴槽があり、バスクリン湯が張られて、緩いジェットが噴出中。これもまたよし。 洗い場スペースがじつに田舎的だ。男女壁の奥のほうは鏡のみ。手前はカランのみ。反対側の壁はシャワーのみ。 むろん仕組まれたものではなかろう。時代の流れとともに可能な範囲で手を入れるうち次第にいつの間にかこうなったに違いない。 そこに計画性はない。あるのは場当たり、出たとこ勝負の人生観だ。 だがそんなことも世間一般の人にはまったくどうだっていいことだ。友よわかっているさ。 シャワーからカランへとウロウロしながら、このレアな銭湯を楽しもう。 (2015年3月) |
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吉陽温泉 ★
小倉から日豊本線に乗り、中津の一つ手前が吉富。福岡県最東端の町だ。そのまち外れ的な場所に1軒の銭湯が残っている。 吉富駅から歩いて5分ほどだが、実は中津の国宝的名銭湯、汐湯からも1kmほどしか離れていない。そのため、汐湯から県境の川を越えてここへハシゴしに来る銭湯ファンもいる。 外観はシンプル。ピンクのペンキを塗り替えられてきれいだが、建物は古そうだ。 暖簾はアルミ戸の内側にかかっている。 ![]() ![]() (左)左右に男女それぞれの入口 (右)「よしはる」と読む 中に入るとタタキに番台があっておかみさんが座っている古典的スタイルだが、まず驚かされるのは番台の立派なこと。次に驚くのは入浴料金200円! ![]() ![]() (左)机みたいに広い番台 (右)脱衣場の奥から玄関付近を見たところ 靴を脱いで上がると、古いながらもそれなりに手を加えられた脱衣場が迎えてくれる。真ん中に置かれた木の腰かけと、タオルの干された衝立になんともヒナビの味がある。 ![]() 浴室が非常に良い。 真ん中にどっしりとした主湯、なみなみと沸くお湯がブクブクでさらに盛り上がっている。湯船フチは九州らしい洗い出しで、年季の入りっぷりが貫禄だ。 左奥には副浴槽がある。右奥にも小さいのがあるが、これは使われておらずカラッポ。 ![]() ![]() (左)主湯最高 (右)洗い場前の排水溝 床の細かなタイルもじつにエエ。タイルは細かければ細かいほどエエな。管理は大変やろけど、ほんまにエエもんいうのは本来そういうものだろう。 熱い湯にどっぷり浸かって、体をのばしてしみじみとする。福岡県のはじっこの小さな町の銭湯で、ヌケサク顔でお湯に浮かんでいる。えたいのしれない解放感だ。 ところでこの銭湯の最大の見どころは、じつは女湯にある。 男湯の奥壁には鏡が並んでいるだけだが、女湯にはなんと、髪洗い場と思しき流し台が設置されている。こんなもん見たことないで! ![]() ![]() (左)女湯限定の髪洗い場 (右)外から暖簾越しのタタキ 興奮してあちこち写真に撮らせてもらっていると、おかみさんがしきりと「外からの暖簾を撮れ、さっきは戸を閉めてたから」とお薦めになる。右上はそのショット。 やはり風呂屋は暖簾、ということなのだろう。 日豊本線沿線では福岡県ではもうこの銭湯1軒しかない。飾り気はないが渋い味わいがある。おかみさんもフレンドリーで、来てよかった~と感じることができるだろう。 中津の汐湯から来る場合、途中で渡る県境の山国橋(国道橋)は明治時代のレンガ造り橋脚がそのまま使われていて趣がある。でも間違えて1本下流の橋を渡らないよう注意(中洲の小祝島に行ってしまう)。 (2014年11月) |
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