チープに極楽。生きててよかった!

関西の名銭湯 【河内】
河内<大阪府<名銭湯トップホーム
稲田湯 (東大阪市 徳庵)
極楽湯 ★(東大阪市 長瀬)(廃業)
三つ葉湯 (東大阪市 花園)(廃業)
末広湯 △ (八尾市 山本)(廃業)
末広湯 ★(八尾市 恩智)(廃業)
【大阪府】 大阪市北摂河内泉州

稲田湯

東大阪市稲田新町1‐6‐20
【営業時間】15:00〜24:00
【定休日】無休

 JR学研都市線の徳庵駅から南へ徒歩7〜8分。ユル〜イ昭和的な街並みの中に現れる、典型的な大阪伝統型の凸玄関。

  木彫りの屋号が埋め込まれている

 暖簾をくぐると、そっけなく合板で改装された下足室。
 脱衣場はけっこう広々。青緑がかった灰色できれいに塗られた折り上げ格天井が目立つ。古い木のベンチなどもあり、前栽には鉢植えがぎっしり置かれていて、なかなかにくつろげる雰囲気。でもその他の部分はやはり昭和的な合板で改装済。

 浴室もきれいに改装済みで古さはなし。中央に深浅2槽、奥に電気と生薬湯の2槽。ジェットつきの深い主浴槽には、生野区の生照温泉と同じ備長炭入りの箱が沈められている。入口すみに水鉢あり。

 湯船のヘリには1×2cmの細かい青タイルがびっちり張り込まれ、しかもこんもりと尾根状に丸みがつけられている。大手工務店のパターン化した内装にはない、見るからに古典的でめんどくさそうな、でも丁寧な仕事だ。
 他にも初めて見るセンスのいい小さめタイルが使われていて、好感を感じる。
 奥の壁には熱帯魚のモザイクタイル絵がある。

 上がりはカルピス英才系を飲みながら、扇風機の前でホヤヤ〜ンと。
 おかみさんによると築50年、天井は何度も塗りなおしているという。浴室は10年ほど前の改装だそうだ。
 「サウナもないしねぇ・・・」
 と謙遜しておられたが、この季節はサウナより冷水風呂がほしいなぁ。 (04.7.4)

極楽湯

廃業されたもようです。
(2008年)
レポートは営業当時のものです。

東大阪市吉松2‐10‐15
電話 06-6729-1033
【営業時間】16:30〜22:00
【定休日】日曜日

 銭湯の玄関で「よそへ行ってください」と言われたのは初めてだ。激渋ここに極まれり。

 先日、オータさんという方からメールをいただいた。
 「ここは絶対に★付き確実です。早く行かないと危ないかも」
 とな。しかも長瀬は死んだオカーチャンのお里じゃないか。さっそく近鉄大阪線で急行した。

 長瀬駅西口から南へ徒歩5分、長瀬神社の北向かい。すぐ近くに母上のお墓があるため、妙にしんみりとしてしまう。
 神社の裏手に、ひそやかに灯る風呂屋のあかり。外観は昭和20年代的モダン玄関のシブい平屋建て。もわーんと漂う古めかしいオーラ、こじんまりしたプチ銭湯だ。

 
(左)おっかさん、あそこだね  (右)石畳のスロープを上がる

 暖簾をくぐると狭い下足室。正面では年季入りまくりの上がりがまちに、こんなタイルがお出迎え。

  タイタイルルル〜タイルルル〜(タイル教信者の祝詞)

 靴を脱いで入ろうとするや、ガラッと戸が開いて出てきた推定60代のおかみさん、いきなり「うちはシャワーも設備もありませんねん」と言う。
 面食らいつつも「ええ、べつにシャワーはなくていいですよ」と言ったが、おかみさんはこの日同行した地元・東大阪市在住の湯友(24歳アイドル系♀)に向かって熱心に「シャワーもないし、よそへ行っとくんなはれ」と説いている。そのため彼女はなかなか中に入って来れなかった。

 どうやら、ここに一見の若い女性が来るのはありえないことらしい。

 もちろんおかみさんにはまったく悪気がない。「ここはアンタが期待するような風呂屋ではない」ことをなんとかわかってもらおうとしたのだろう。
 でも、こっちはそういうのを期待しとるんですわ。
 「じつは渋い銭湯があるからぜひ行けと薦められて来たんです」
 と言ってともかく脱衣所へ入る。と・・・。

 おおおおーーーオータさぁ〜ん! ここここれは、感動大爆発系のイニシエ空間じゃありませんか!
 ダメだよおかみさん、「よそへ行け」なんて言ってちゃあ〜。今はこういうのがウケるんだよ。

 
(左)ケヤキ一枚板、漢数字浮き彫りの最高級ロッカー  (右)格天井に神棚

 
(左)貫目表示の体重計   (右)神棚の下のオカメ

 
(左)近所の鉄工所製の特注扇風機が3台   (右)ん? 何あの写真は・・・

 隅々までよく磨かれ、整頓されたシンプルな美しさ。そこに激レトロな逸品たちが静かに息づく。銭湯ファンなら泣かずにはいられない。
 あわただしい世間のよしなしごとのすべてが一瞬にして無化される、惚れ惚れするようなタイムスリップ空間だ。

 何より気になるのは天井近くに掲げられた女性の写真。近所の酒屋さんにもらったそうだが・・・ウムー、美しい。
 しかしそういや俺も今、フルチンなんだけどな・・・。

  す、すごいプロポーショ〜〜ン!

 そして小さな浴室へ。出ました、コレモンです。

 
(左)ああ石畳・・・   (右)ああ豆タイル・・・

 ここもしっかり隅まで磨き込まれている。床が石敷きでありながら、湯船がタイル張りなのはちょっと珍しいかも。
 お湯は熱めの43度くらい。きれいな湯が満ち満ちて、トプーンとつかるとザアアーッとあふれる。うほほ〜。静かに目を閉じると、おっ、この香りは・・・そうですか、薪沸かしですか。
 奥の浅風呂はややぬるめ。どちらも湯船のへりは薄い柿色(オレンジ色ではない、あくまで柿色)の細かな長方形タイルがびっしり。カラン上の段には濃緑の同型タイル。現代の銭湯では決して見られない色使いだ。

 ああもう、ここまでツボを突かれまくっちゃあおしまいだ。わしゃもうダメ。カーチャンの墓も近いし、ここで死ぬか。

 さらに、コレ。木の蓋で閉じられて今は使われていないが、かつての「上がり湯」の湯鉢が現存する。カランがなかった時代は浴槽の湯をかい出して体を洗い、最後にここの湯をひしゃくですくって上がり湯に使ったんですねえ。


手前は女湯とつながった水鉢、その隣のフタされた鉢が「上がり湯」


 古いけど清潔。天井は新しいものに替えられてるし、明るい雰囲気で、まだまだ現役でじゅうぶんがんばってもらえそうな気配だな。
 夢見ごこちなひとときをダラダラ過ごして上がる。

 お客は多くはないが、チラホラと途切れずにやってくる。年齢層も若者から老人まで幅広い(ただし男湯)。この近辺は銭湯が300メートルおきにある銭湯密集地帯だが、それなりにファンがついているようす。
 飲み物の冷蔵庫がカラッポだったので、おかみさんに「飲み物はないの?」と聞くと、女湯にだけ置いてるという。このパターンは時々あるので要注意だ。

 女湯の牛乳をもらって飲みながら、「京都が好き」と言うおかみさんといろんな話をして帰った。

 あったかい気分の帰り道、「宝物」という言葉がふっと浮かんだ。銭湯のある国に生まれた以上、ここを体験しなければ人生の損失ではないか。
 女湯の「ありえない」もわが湯友が突破したから、もう「よそへ行ってください」と言われる心配はないでしょう、たぶん。  (04.10.16)

 (追加情報)
 後日このレポートを見て入りに行かれた方(女性)によると、やっぱり玄関先で「よそへ行ってください」と言われたらしい。あはは〜、おかみさーん・・・。でも入ってしまえば温かい会話が弾んだそうな。
 強い意志をもって門前払いの関門をくぐり抜けた人だけが、この銭湯のイニシエを味わうことができる。ディープな銭湯世界の真骨頂なのである。
 (昼間の外観写真は2005年8月に撮影)

  (オータさん、情報をありがとうございました)

三葉湯

廃業との情報をいただきました。
(2006年)
レポートは営業当時のものです。


東大阪市稲葉3‐7‐26
tel : 0729-64-4812
【営業時間】15:00〜24:00
【定休日】第2、4木曜日

 かずみさんという方から情報が寄せられた。
 隠れ家的存在で、庭木を入って奥のほうに暖簾があるからわかりずらいが、足を入れるとタイムスリップした気分になれる。
 ほう、そりゃ行ってみなくちゃ。で、雨の中を電車乗り継いで花園へ。

 近鉄奈良線・河内花園駅から続く花園商店街はモロ昭和中期的な脱力系。でもさびれ切ってはおらず、そこそこ中途半端な現役臭がただよう庶民派アーケード街だ。

  ヒナビの花園商店街

 その商店街を駅から2〜3分歩いてちょっと左へ入ると煙突発見。でも正面へはなかなかたどりつけずにしばしウロウロする。
 やがて細い路地の奥で、チラリズム的に暖簾が揺れるのを目撃した。かずみさんの言うとおりの秘湯系ですな。

 
(左)正面からは半分も見えない奥ゆかしさ  (右)横の路地から

 ディープな立地のわりに、近寄ると外観は最近塗り直されたふうのスッキリした面持ち。住居が乗っかっていない平屋建てだ。
 暖簾をくぐると、そこもスッキリとしたプチなる下足室空間。柱や玄関戸は古い木のままだが、きれいに維持されている。

 
(左)下足室正面には鏡がはめられている  (右)内側から外を見る

 戸を開けると、年季の入った上等な木の番台がお出迎え。
 湯銭は360円と書かれているが、400円出すとオヤジはなぜか釣りを50円くれた。

 こじんまりした脱衣所は、造りは古いものの、ロッカーはじめ壁も天井も新建材で改装されており、ごくフツーな感じ。
 だが小さな前栽にはアオキやランなどの葉が雨につやつや濡れて輝き、ガラス戸は古い木枠のものが残っている。その傍らに外便所、この木戸なんかも懐古なる逸品。いずれも丁寧に管理されている感じが好印象だ。
 浴室入口周囲の壁には、不揃いな豆タイルがびっしり張られている。これはちょっと珍しい。

 浴室は、中央に昔ながらの石造りの深浅主浴槽。白御影石が使われている。
 でも壁・床・カランまわりなどは一般的に改装されていて、古さはない。
 奥にジェット&気泡の横たえ風呂が2人前、これは勢いが強くて極楽じゃわ。

 上がりは飲み物いろいろあり。
 イニシエ度はさほどではないものの、下町の秘湯ふう立地がナイス。隅々までよく磨かれている感じも心地よい、清潔感あふれるプチ銭湯だ。  (05.3.22)

 (かずみさん、情報をありがとうございました)

末広湯

2006年、廃業されました。
建物はすでに撤去されたもよう。
レポートは営業当時のものです。
(ヤマナさん、情報感謝です)

八尾市山本町1-3-20
【営業時間】16:00〜23:00
【定休日】毎週水曜日

 うーん、すごい。もしかしたら大阪最強レトロかも。
 近鉄・河内山本駅から徒歩1分。駅前の八幡神社のすぐ北側の通りにある。
 外観は、銭湯ファンなら胸がキュンとなるような入母屋造りの伝統建築。しばらくほれぼれと眺めてしまう。

  植木もいい感じ

 内部はこじんまりしている。
 木の下駄箱は相当使い込まれてガタが来ており、カギのない箱のほうが多い。

  
 (左)下駄箱は箕面の百楽湯にあったのと同タイプ

 木の戸も磨り減って丸みを帯びている。入ると番台があるが、番台の上には板が渡されてテレビが置かれており、無愛想な、というより覇気のないおじさんが番台の向かいに椅子を置いてそのテレビを見ている。なるほど。改装しなくてもこうすればフロント風と言えなくもないな。

 狭い脱衣場は超クラシックな空間。
 黒光りする板張りの床はほとんどお寺の風情。折り上げ格天井には木製の2枚羽プロペラがぶら下がる。木の番台、木の仕切り壁、そして漢数字の打たれた木のロッカー。
 古式ゆかしい造りと諸々グッズが現存しているのは素晴らしいが、それぞれ相当キてる感じで、全体的にくたびれ感が濃厚に漂う。

  

 浴室は、うむむむむ・・・駅前でこれが生き残っているのを奇跡と言わずして何と言おう。脱衣場をさらに上回る激レトロな石だらけの世界が展開されている。 

 天井は男女それぞれが四角錐になっていて、中央に湯気抜き。
 男女仕切り壁側に深浅2槽の石の湯船がある。
 驚かされるのは湯船のへり外側の段の高さ。ちょうど膝くらいまである。こんなに高いのは初めて見た。
 湯船内側の段も石。浅い浴槽はなぜか湯が少なく、しかも内側の半分くらいは石底でさらに浅くなっており、その部分は10cmほどの深さしかない。
 ゴールドに輝く真鍮の給水カランは、取っ手のバーに「ツルカメ」と掘られている。

 浴室の床も石畳。スキマはたいていタイルがはめ込まれていることが多いが、ここは無骨にセメントで埋められている。
 そして中央付近にこれまた石造りの排水溝があるが、普通とは逆に湯船に向かって排水が流れ、湯船のきわに沿って半周してから男女仕切り壁の下にある排水口へと流れてゆく。湯船に沿った部分は溝の幅が狭く、4cmくらいしかないため排水スピードがイマイチ遅い。
 カラン付近は四角いタイルが貼られているが、これも年季入りまくり。

 さらにもう一つ驚くのは、男女仕切り壁。腰高までは石組み、その上から胸あたりまでは砂利のコンクリ固めだが、その上はなんとの壁だ。ペンキで青緑色に塗ってある。
 普通はタイル貼りなわけだが。浴室に木の壁って・・・これも初めて見たよ。

 とにかく、このイニシエ保存度はすごい。素っ裸で古びた石の群れに囲まれて、思わず「ここはどこなんだぁーー!」と叫びたくなる。
 客は最初2人いたが、途中から僕一人になった。
 こういう銭湯をいつまで、どうやって残せるか。銭湯ファンとして問われているような気がした。 (04.4.3)

  失いたくない風景

末広湯

廃業していたとの情報をいただきました。
(2007年7月)
レポートは営業当時のものです。


八尾市恩智中町2−226
0729−43−7356

【営業時間】 15:50〜22:30

【定休日】 無休(正月休みあり)

 八尾市在住のめぐりんさんという方から、濃厚なる銭湯情報をお寄せいただいた。

 自転車で市内をウロウロしてたら、すごいよさげな銭湯見つけましたよ。
 煙突は縦半分側(たぶん日の当たる側?)につたがびっしりからまっていてイイお味です。玄関前には廃木。
 現地で店名は確認できませんでしたが、八尾市のゼンリンによると「末広湯」だそうです。山本の駅前にあるお風呂と同じですね! 建物も似た感じ。

 ぬぬっと思って調べてみると、銭湯組合リストにもインターネットタウンページにも載っていない。ハテ、と思っていると、数日後にこんなメール。

 末広湯の調査に踏み込みました。ちゃんと営業してました。年内は無休との張り紙がありました。
 脱衣場もそこそこレトロです。タイルの隙間をパテで埋めてあるところなどを見ると、まだまだ営業を続けていく意欲が伺えます。番台にはちゃきちゃきした可愛いおばあちゃんがおられました。
 一度、行ってみて損はないと思います。


 カカカカラダが、カラダが勝手に八尾方面へ向かう〜。
 で、アホみたいに来てしまった近鉄大阪線恩智駅。高安山が目の前に迫る。ここまで来ると大阪とはいえダラーンと田舎ムードに満ちております。
 駅を出て山に向かって3分ほど歩くと、一種異様な煙突が空に屹立しているのを発見。いやぁ、これまった初めてですがな、こんなもん。

  
 (左)ん?煙突になにやら・・・  (右)わっしゃわっしゃと這い登るツタ。鬼気迫る生命力

 そしてそこらじゅうに積まれた燃料用の薪がまたアンタ。

  
 (左)正面へ向かう路地  (右)なんぼでも沸かしたるでぃぃぃ〜と気合十分

  
 (左)路地は入浴者以外通行禁止、犬の散歩は罰金1万円!  (右)古〜い木戸と下駄箱

 暖簾をくぐると古い木の下駄箱がお出迎え。天井は細かな格天井。
 靴を脱ぎ、狭いサッシの戸を開けて中に入ると、番台には初老のおばちゃんがにこやかに座る。そして、こじんまりした脱衣所にはこれがデデーン。

 
(左)出ましたケヤキ一枚板、漢数字浮き彫り  (右)これを読めない人が急増しているとの噂

 
(左)番台も上等   (右)神棚は隅にある

 天井や壁は合板で覆われ、阪神優勝ポスターなどが賑々しく張られていて、伝統建築の風情はやや損なわれている。が、天井中央からはイニシエの巨大プロペラがぶら下がり、脱衣所の手前には小さな前栽もある。
 その脇の便所は汲み取り式、しかもトイレットペーパーではなく「ちり紙」が設置されている。こんなもん今どきどこで買うたんや。
 浴室手前には100円コイン式サウナ室が置かれているが、機能しているかどうかは不明。浴室との境壁にはガラスブロックが使われている。

 浴室は、幅は狭いが奥行きはけっこうある。床はやっぱり石畳、すきまに2cm角タイル埋め込みのクラシカルパターン。
 湯船は男女隔壁に沿って深浅2槽、フチは黒御影。浅風呂がけっこう広く、2連ジェットつき。しかも底には不揃いな小石型タイルがカラフルに張られている。湯船外側の座り段にも同じ不揃いタイル。
 出入り口の右側には女湯とつながった白御影の水鉢があり、反対側には立ちシャワーもある。

 夕方5時すぎ、年寄りから若いイレズミ者など、そこそこお客が入っていた。
 上がりは牛乳からビールまで飲み物あり。
 番台のおばちゃんに「渋いロッカーがありますね」と声をかけると、
 「100年くらい前の建物やから。建てた人はもう死なはったけども。ロッカーはそのときからおますねん。はげてきたからニスは塗りなおしてますけど」
 と言う。
 芸術的イニシエ空間という感じではないが、煙突のツタとおばちゃんの人柄も含めて星付きだ。  (04.12.7)

 (めぐりんさん、情報をありがとうございました)

 
 (左)前栽手前には古い一枚板の廊下   (右)日が暮れるとさらにディープな雰囲気
名銭湯トップホーム