チープに極楽、生きててよかった!

関西の名銭湯 【阪神間】
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三十六温泉 (尼崎市)★ (2006年廃業)
第一敷島湯 (尼崎市)★
武庫川湯 (尼崎市)
新町温泉 (川西市)
新地湯 (三田市)

光中湯 (尼崎市)★ (2004年9月末廃業)
【兵庫県】 神戸市阪神間東播磨西播磨淡路但馬

三十六温泉

2006年、廃業された模様です。
レポートは営業当時のものです。


尼崎市道意町4丁目46
【営業時間】16:00〜23:00
【定休日】水曜日

 写真だけ見るとどこか山峡のいで湯の風情だが、じつは阪神電車「尼崎センタープール」駅で下車、徒歩約3分。ホームから南を眺めると煙突が見えている。
 ちなみにセンタープールで人間が泳ぐことは禁じられている。モーターボートのためのプール・・・競艇場です。したがってこの街も駅前の焼き鳥屋の名前が「マクール」だったりする、まあソレ風の場所柄。

 町工場の混在する下町の住宅街を、煙突目指して歩いていくと・・・ナ、ナンダ〜!?
 公害道路として有名な国道43号線のすぐ近くなのだが、庭から生えた樹齢50年の桜の巨木やマツが生い茂り、壁にはツタ類がびっしり。銭湯が完全に植物に飲み込まれ、一体化している。す、すごい。屋号(みそろく、と読むらしい)もなんも見えない。暖簾がなければオバケ屋敷だよこりゃ。

  
 (左)北側から見たところ   (右)南側から見たところ。やはり日当たりのいいほうが激しい

 暖簾をくぐり、ゲタ箱に靴を入れて戸を開けると、年季の入った低い番台。入浴料は300円と安い。
 こじんまりとした脱衣場は、人々を一気に郷愁の彼方へといざなう。年季の入った木のロッカーには、漢数字の番号。戦後に作り直したものだそうだが、ケヤキの一枚板で、「今なら1個何万円もする」と番台のオヤジは語る。
 それにしても外も木、中も木だ。脱衣場からは庭の桜の木が見えているので、春にはここから花見ができそうだ。天井にはちょっとホコリがくっついていたりもするが。

  重厚なるたたずまい

 浴室は地味でこじんまりとしているが、深浅のメイン浴槽は石造り。深いほうではジェット2基が順調に吹き出ている。湯舟のへり外側の腰かけ段は低め。
 ほかに気泡風呂と、2〜3人用の小さなサウナがある。気泡風呂の豆タイルの色がまた渋い。ウグイスの糞色とか黄土色とか茶褐色とか・・・現代の銭湯では決して採用されない色使いだろう。
 水風呂はないが、勢いのいい立ちシャワーがある。

 客はこの地域の場所柄を表して、よく日焼けして肩口にちょっと刺青のあったりする高齢者が多かったが、感心したのは、みんな上がるときに椅子と洗面器を元通りに片づけていくことだ。
 僕はふだんはあまり片づけないのだが、ここで反省し、みなさんに見習ってきちんと片づけて上がった。

 番台のおやじは、「ここへ初めて来た人は、みんな『なっつかしい銭湯やなー』と驚くよ」と言う。外観といい木のロッカーといい地味な浴室といい客のマナーといい、「古き良き」という言葉がピッタリと当てはまる銭湯といえるだろう。
 震災で屋根が崩れたそうだが、みごとに復活した三十六温泉。もしかしたらこのボーボーと繁る木々の根が地震から建物を守ったのかもしれない。

 さて、桜の季節が楽しみだ。

第一敷島湯

尼崎市杭瀬本町1-25-5
06-6481-7120
【営業時間】15:00〜24:00 
【定休日】火曜日

 唐破風の小屋根です。京都にはあるが大阪以西では珍しい。
 阪神杭瀬駅から東北へ徒歩5分ほど。国道2号線を大阪方面に歩いていると、北側に煙突がちゅどーんとそびえているからすぐわかる(明るいうちは)。
 でも玄関は、その裏手にちょっと入った狭〜い路地に面している。

  後ろに見えてる煙突の向こうが2号線

 こじんまりした内部は、震災後に改装したと思われる。脱衣場は格子天井だが、ロッカーはピカピカ。中央にソファーがドン、とあって、隅にある水槽ではネオンテトラが泳いでいる。小さい庭も手入れされていてよい。浴室入口の壁は全面細かいタイルが貼られており、モザイクタイル絵がある。脱衣場のモザイクタイル絵は珍しいな。

 小さな浴室もきれいに改装済み。おっ、中央の主浴槽はほぼ円形だ。奥の薬湯(ジェットつき)と浅い副浴槽と接している部分だけ円が欠けているかたち。
 浴槽のフチには1×2cmの細かい長方形タイルが並んでいて、できるだけ元のとおりに改装した様子がうかがえる。給水部分にも豆タイルが復元されている。
 新品の豆タイルが貼られているのにはめったにお目にかかれない。よほど愛着があったのだろうか。他にも全般的に小さめのタイルが使われていて、タイル教信者としては嬉しい限り。

 湯温は42度くらい。奥の薬湯(この日は「ユッカ」で、ヌルヌルの白濁で気持ちよかった!)は40度くらいか。
 女湯との仕切り壁には滝のモザイクタイル絵がある。

 客は他に2人だけ(16時台)で、途中から僕一人になった。
 こだわりのピカピカタイルの3つの浴槽になみなみと満たされ、底から噴き上がって盛り上がるお湯。しばし見とれてしまった。ものすごく贅沢な光景だ。
 たった340円のこの極楽空間が、なぜこんなにすいているのだろう。なぜ銭湯が激減しなければならんのか。まったく不思議だ。(03.12.4)

武庫川湯

尼崎市大庄西町1丁目39−25
【営業時間】16:00〜22:00
【定休日】金曜日

 阪神電車武庫川駅の北東部500m四方ほどは、軽自動車がやっと通れるくらいの路地が無秩序にぐにゃぐにゃと錯綜する、古びた味わいの住宅密集地域。あの路地この路地どれもみんな、どこか懐かしさを感じさせるたたずまい。
 その最深部にあるこの銭湯への道順を説明するのは困難だ。てきとうに歩き回って「発見」するしかない。
 これぞまさしく、都市の中の秘湯。

  
 (左)車の入れない路地を入ってゆくと・・・  (右)煙突発見! このへんかな、と左を向くと・・・

   
 (左)(中)奥まったところにオチャメなUFO暖簾がかかっている  (右)屋号は普通の表札に

 暖簾をくぐると下足室で入口はその右側にあり、このへんの銭湯としては珍しい間取り。戸をあけると番台には60がらみのオヤジ。
 湯銭は320円と、兵庫県の協定料金より20円安い。

  下足室は格天井

 狭い外見のわりに、内部はそこそこの空間がある。
 脱衣場は昭和中期チックな新建材で安普請に改装され、それもだいぶくたびれた感じ。男女仕切り壁のみ、昔のしっかりした木のものが生きている。
 浴室の床は石畳でスキマにタイル、という強力レトロなパターン。石畳のカッティングがいくぶんアバウトにも見えるが、使い込まれて欠けてきたのかもしれない。
 湯船は黒光りのする御影石。仕切り壁側に、細長い棺桶タイプの浅い浴槽、深い主浴槽、ジェット2連浴槽が並んでいる。

 床と湯船はいにしえ度爆発だが、壁や天井はピカピカに改装されている。震災被害を受けたせいなのかも。おかげでまだまだがんばってくれそ〜な期待が持てる。
 いずれにせよ、今どき街の中にこんな秘湯が隠されていること自体がなんとも温かくてユニークで、じわぁ〜っと嬉しさがこみ上げてくる。がんばれ武庫川湯! (04.3.18)

  
 (左)路地が狭いため建物全体像の撮影は不可能   (右)外壁はレンガ造り

新町温泉

川西市小花2-15-19
(0727)59-7405
【営業時間】16:00〜22:30
【定休日】水曜日

 この松を見よ。京都・善峰寺の「遊龍の松」を彷彿とさせるのぉ。

 それにしても、なんか妙にたどりつきにくい銭湯だ。
 阪急川西能勢口から東へ徒歩数分だが、さほど路地が入り組んでいるわけでもないのに、北側にそびえる巨大マンションの南側にすっぽり隠れているし、その裏の細い道からさらにちょっと奥まっているし、煙突も低くて、フツーに歩いていて通りかかるなんていうことはまずないだろう。
 ここだけがエアポケットのように周囲とは異質な空気が流れている。ちょっと不思議な穴場系だ。

  
 (左)壁に直接の手書きがなんかかわいい   (右)パピコ型の短い煙突

 そして玄関前のこの松。ご主人に聞くと、これはわざとこのように這わせたのではなく、勝手にこんなふうに伸びたのだそうだ。40年前に植えた時には1mあまりの丈だったという。
 この松に白壁を上品に引き立てられて、秘密銭湯の神秘性が3倍増となっている。

 内部は下足室・脱衣場・浴室すべて新しく改装されており、立地・外観に似合わずレトロ度は低い。ちょい残念。
 浴室は、中央に広々したバスクリン入りの浅い浴槽が配置されているのがやや珍しい。その奥に深い主浴槽があり、他にジェットとスチームサウナ、立ちシャワー。
 タイルもピカピカ、隅々まで清潔に管理されている。

 ともあれ、「僕だけが知っている」的な秘密めいた立地と、このみごとな松が実に印象的な銭湯。友だちを連れて来て、「ほら」と見せたくなるような。 (04.5.7)

  かなり探さなければたどりつけない

新地湯

三田市三田町1-5
(0795)62-2516
【営業時間】16:00〜23:00
【定休日】水曜日

 三田駅から正面の商店街を歩き、武庫川の橋を渡って土手の次の辻を右へ折れると、とたんに胸がキュンとなるような風情の街並みが始まる。三田市の旧市街核心部・三田町の中でもこの通りは新地と呼ばれているようで、入口には赤い小橋がかかっている。
 新地湯はその橋を渡ってすぐのところ。

  
 道がぐっと細くなって、赤い橋を渡るとすぐ左手にある

 ノスタルジックな街並みに完璧に溶け込む小さな銭湯。暖簾が風に揺れているさま、いとおかし。
 暖簾をくぐると狭い土間スペース。普通は下駄箱がある場所だがここにはなく、渓流のタイル絵とその下の小さなベンチが出迎えてくれる。

  よろすい。じつによろすい

 戸をあけるとタタキに番台、お金を払って靴を脱ぐ。
 小さな部屋のような脱衣場は化粧合板のロッカーをはじめ安普請な造りで、庭にあるトイレは言わずもがなの汲み取り式。床もややユルい。
 そのわりに立派な神棚が番台の上にある。

 浴室もこじんまり空間で、珍しいダルマ型のタイル張り湯船が1つあるだけ。頭の部分が浅くなっている。
 壁の上部から天井はトタンに青ペンキ。奥の壁には、学生が作ったような不思議なオブジェが飾られている。

 ジェットも気泡もない、静かな空間である。チャプチャプ、しか聞こえない。
 湯あたりがなんとも柔らかい。かすかに湯を沸かすにおいが漂う。
 はぁ〜。落ち着く。

 兵庫の片田舎によくある感じのチープな小銭湯だが、周囲の風情ある街並みに溶け込む立地がたまらなくイイ。番台のおばさんの「ありがとう」も温かい。
 兵庫県浴場組合のホームページによると、三田市でたった1軒だけ残った銭湯のようだ。設備も何もない小銭湯だが、夕方から次々と地元の人たちが入りに来ていた。愛されているんだなぁ。
 
  三田最後の1軒、がんばれ!
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